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ノート:エーテル Side Persona  作者: 金欠のメセタン
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第十六話「ぶつかり合う葬刀と絶刀」

 互いに改めて名を名乗り、その後両者が示し合わせたようにして同時に魂装を納刀する。


 やはり、世の剣士が最後に辿り着くのは居合抜刀の型から放たれる必殺の剣技。


 そしてここでバートの纏う雰囲気が、突如としてガラリと変わる。先程までとは打って変わって、まるで押しつぶされるような圧迫感がヴォイドを包む。



 バートの目が据わり、肩幅程度に左足を後ろへ開き、そして魂装の柄に手を添えて静かに腰を落とす。


 その一連の動きだけで分かってしまう、互いの『技』に掛けた練度の差。まさに圧倒的と言わざるを得ない、途方も無い距離の差。


 しかしてバートの準備は未だ終わっておらず、そのまま自身の魂装に彼女に貰い受けた武器(・・・・・・・・・・)を重ね、その力を増幅。


 同時にありったけの『思力』をその刃へと込める。此度込める思いは、“絶対なる殺意”。



 対するヴォイドも腰を落とし、己の魂装に手を添える。使用するのはヴォイドの持ちうる抜刀技能に於いて最も速度に優れた『縮地抜刀術』。


 目的は相手の目測を超えて、速度の極みで真正面から斬り伏せること。故に、更に別の手段も用いて速さを高める。



『仙法 麒麟の型 “麒麟招雷(キリンショウライ)”』



 突如、眩い閃光と共に轟音を伴う御雷(みかづち)がヴォイドへ降り注ぐ。それは光り輝く黄金を纏う霊獣の(いかづち)


 その正体はヴォイドが使う『仙法』に於いて、「奥義」に位置する技の一つ。


 雷を司る霊獣の権能をその身に宿し、自身を「雷神の化身」とする存在強化の御技。しかし土煙が晴れるとそこには、黄金ではなく何故か赤黒く染まった電雷を纏うヴォイドが在った。



『反転技法 炎駒の型 “赫者(カクジャ)”』



 黄金の雷を用いて存在強度を多少高めたとて、話にならない。故にその肉体も限界を突破して強化する。例え時間経過で肉体が崩壊するリスクを抱えようが、今はそんなもの知った事ではない。


 反転された赤い瘴気の御雷により、脳と筋肉だけでなく、脳から発せられる伝達信号の速度も無理やり高め、強化する。


 しかしこれでも剣速では恐らく、勝負にすらならない。ならばどうすればいいのか。その答えは、勝てない勝負はしないだ。


 だからこそ、更に「血」を使う。


 死闘の中で互いに流した、最早どちらのかも分からない血液で魂装の鞘内を濡らし、更に追加で血を貯める。


 鞘の内側をじっとりと血で湿らせる事で、鞘走りの速度を更に引き上げるのだ。


 刀と鞘の摩擦係数を血を用いることで格段に落とし、更に肉体へ電流を流して肉体の速度限界を超越する。そこまでしてようやく、ほんの僅かな勝機を得る。


 互いに準備は出来た。後は、両者が放つだけ。



「よもや、国の者(・・・)以外に使うことになるとは思わなんだ......」



 堪らずと言った様子で零れる、バートの本音。



「これより放つは、儂が全てを賭けて追い求めた、一つの究極じゃ。お主がこの技を止められぬとは思わぬが、心して受けよ」


「ククッ、そいつは光栄だ。......覚悟しろ?真正面からぶち抜く」



 言うが早いか、ヴォイドはたっぷりと予備動作をとって、今出せる最高の速度でその身を撃ち出す。その上で『縮地』により、一瞬で零距離に到達する二人の間合い。


 しかしヴォイドが動いた瞬間にはもう、二人の魂装の鯉口は既に切られている。


 互いの顔にはやはり、醜く歪む三日月型の口。両者の間に思考は最早、ない。あるのはすぐ傍に感じる肌がヒリつく様な死の気配と、脳を麻痺させる闘争の熱。



『“葬刀居合 漆之太刀”』


『“天蓋理心流 秘剣”』



 超速で迫ったヴォイドは「まだ足りない」と、更に零距離で自身へ加速を促す。「まだ速く」と肉体の限界を越えて、その身を風刃と化す。




 ――――音速を越え、より疾く。



 ――――――光速を越えて、その先へ。



 ――――――――辿り着くは、“神速の一刀”。




 「武器」で届かぬなら、『技能』も使え。それでも無理なら『己の全て』を賭してでも。


 修羅を超えて羅刹と成りて、まだ見ぬ高みへ駆け抜ける。


 「色」も「音」も「匂い」さえ、今は捨て置け。ついて来られない肉体の一部も放棄しろ。無限に続く加速の果てに、その刃を何としてでも届かせろ。







  怨刀 “-血屠人(チドリ)-”



  絶刀 “-■■■■■(ラストリゾート)-”







 両者が放つは、速度域の極地。片や「剣速」、片や「動速」。ヴォイドは先の戦闘で速すぎる剣速による『次元屈折』は何度も見た。しかし今回のはまさに、格が違う。


 今までのどの技よりも、はやすぎるのだ。


 次元が屈折して歪む事すら追いつけない程に、物理限界など容易く超越した剣技。


 しかしヴォイドは『魔眼』系のスキル全てを総動員して、その一挙手一投足の一切を見逃さず、記録する。


 同時に「予想」し「予測」し、全てを見切る。酷使された眼が充血して血涙を流そうが、脳の処理限界を超えそうになり激痛を訴えようが、知ったことではない。


 自らの体感時間を極限の極限まで圧縮し、超スローモーションの世界の中で、二人は互いに嗤い合う。



 バートが放つは九連撃(・・・)


 ヴォイドはそれに、真正面からたった一太刀で挑む。



 抜刀と同時に放たれるは「斬り下げ」「斬り上げ」「水平」「逆水平」「袈裟」「逆袈裟」。


 そして最後は「突き」で、そのすべてを繋げる。その剣技に隙などありはしない。躱す余地すら残されない。だが受けるのを前提であれば、抜けられる(・・・・・)


 あの前人未到の一撃を、御雷の一刀にて斬り伏せる。


 色も音も、匂いも無い。その視界の半分以上は赤く染まり、触覚は機能を失いつつある。そんな限界を超えた肉体を、バートが放つ無慈悲の斬撃が斬り刻む。


 痛覚は既になく、溢れる血液がヴォイドの視界を遮る。しかしそれでも、斬り刻まれるその瞬間、確かにその刃は届き得た。


 肉を、骨を断つのではなく、抉り、削り、消し飛ばす様な手応えがあった。しかしその感覚は刹那よりも短い時間であり、その直後には既にヴォイドの肉体は斬撃の壁を抜けていた。



 そして最果ての煉獄に、僅かばかりの静寂が訪れる。


 互いの刃は、確かに届いた。だが、両者致命傷。片やおおよそ人の形を留めておらず、片や肉体の一部が消滅している。


 故に勝敗はまたしても――――“引き分け”。


 その結果に、少なからず安堵する者。その結果に多少、不満を残す者。互いに疲れ果てながらも、溢れ出る笑いを堪えられなかった。



「ククッ...ハッハハハ、ハハハハハハ!」


「ガハハハハハ、ハッハッハ!」



 互いに肉体の一部を失い、夥しい程の出血をしながら、それでもお互いを褒め称える。しかし流石にこの状態では色々と不都合があるため、ヴォイドがスキルを用いて即座に肉体を回復させる。


 するとさっきまでの参上がまるで嘘だったように、肉体の七割以上を失っていたはずのヴォイドは平然といつもの様子に戻っており、続けてバートを治療する。


 戦闘時間およそ4時間。


 その全てが現実世界で換算すると、たったの5分にも満たない。その理由はこの体内世界の経過時間が、現実の何倍にも早くなっていたからだ。


 しかしようやくこうして、何の為に始めたのか分からない二人だけの死闘は、ここに終わりを告げた。


 誤字脱字が確認できたため、修正しました。


 内容を少し編集しました。 2022/05/13

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