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ノート:エーテル Side Persona  作者: 金欠のメセタン
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第十一話「昇格試験の誘い」


 ルシアがツワバと名乗る盗賊団の頭目を無事撃破した後、程なくして結界内に囚われていた残党全てを狩り尽くし、そのタイミングでバートとヴォイドの二人がルシアの前に姿を現す。


 どこか呆れるように、それでいてほんの少し哀しそうに、しかし目一杯彼女を褒めるように、ヴォイドは言葉を零す。



「流石としか言い様がないな、これは」



 その言葉に何故か鼻を高くして自慢げに続くバート。



「儂ら二人が鍛えたんじゃ、この程度は当然じゃろうて。それにこれからは、もっともっと強くなるであろうなぁ。この娘は何せ、天才じゃからな」



 そう言って無造作にわしゃわしゃとルシアの頭を撫でるバー爺に、少しだけ恥ずかしそうに頬を染めながら、褒められて嬉しそうに微笑むルシア。


 こうして見ると、やはり年相応の少女のような印象を受けるが、しかし一皮剥けばその中身は誰が見ても「怪物」と称する程に、末恐ろしい才能の塊が在る。


 とは言えその事を完全に理解しているものは、この場には居らず。故に深く追求されることもない。


 二人の師匠を持つこの少女が世界にとって、どれだけ喉から手が出るほどに欲しい人材なのかを知らぬが故に。



...


....


.....



 死体の後片付けなどをヴォイドが手早く終わらせ、三人で冒険者ギルドに戻りルシアが無事盗賊団討伐の依頼を完了した事を報告する。


 その際、盗賊団の全員を討伐したのがルシアだと報告すると、周囲で聞き耳を立てていた何人かと担当していた受付嬢が揃いも揃って「えっ」と呟いて一瞬固まっていたのは実に面白かった。


 何なら翌日には、期待の新人としてルシアは一部の情報に敏い冒険者の間で少々話題になっていた。



 そしてそれから既に数日が経っているが、今のところルシアに変わった所はない。


 理由は恐らく、先日の盗賊団討伐で自らの成長を感じたの為だろう。とは言えヴォイドはそんな事は些事だと特に気に留めず、思考を切り替える。


 そして今日も今日とていつも通り、日課(ルーティーン)である依頼を幾つか見繕って受注する。


 だが生憎と、自分以外はいつも通りとは行かないようで、依頼を受注する際に受付嬢がこんな事を話し始めた。



「そういえばギルド支部長からの伝言で、ヴォイドさん達のパーティーがこの短期間に安定した実績を残している為、特例としてDランクへの昇格と同時に、Cランクへの試験資格を与えるそうですよ?」


「ほう、Cランクに上がるために試験なんてあるのか。ギルド支部長から直々にってのが少し怖いところだが.....」


「そうですよねぇ。私も支部長から詳しくは聞かされてないので、今のところ何とも言えないですね。ちなみに昇格試験ですけど、試験は2日後の早朝から行われる予定なので受ける際はギルドにお越し下さい」


「ふむ、まぁ了解した」



 明らかに何か裏がありそうな件だが、昇格させてくれるなら目を瞑っておこうじゃないか。


(俺とバー爺の目がある状態で何が出来るとも思えないが)


 その後、ルシアとバー爺と共に行動はせずに三人で依頼を別々でこなし、それぞれが依頼を終えて宿に戻ってから、昇格した事と試験の事について話しておいた。


 ちなみにバー爺だが、こちらも特例でDランクに昇格になっていた。これに関しても恐らくこちらに対して早めに何かしら恩を売っておきたいのか、特別扱いが見受けられた。


 とは言え試験の事に関しては全員が満場一致で「受ける」との回答になったので、試験に備えて数日間は冒険者稼業は休みになった。



 ヴォイドとしては珍しく二日間の休みを取ったのだが、初日はルシアが出掛けたいと言うので荷物持ちとして付いて行ったり。スミスのところへ軽く挨拶に行ったりした。


 次の日の午前中は朝早くから全員で宿の敷地内で昼近くまでほぼ休憩なしに木刀を振り回して疲れ果てたり、その後の昼飯に宿の厨房を借りてスキルの試運転がてらに手料理を振舞って二人に驚かれたり、何故かバー爺が俺の得意料理を知っていたり。


 そんなこんなで本当に珍しく、平和な日常というものを過ごした。




 そして平和な休日が終わり、遂に試験当日の早朝。


 既にヴォイド達三人は冒険者ギルドに来ている。それも二階にある会議などで使われる一室で、試験を受けるであろう他のメンバーが揃うのを待っているのだ。


 とは言え特に何かある訳でもなく、それから少しして無事揃ったメンバーがこちらとなる。



「俺はヴォイド。魔術師....みたいなモノだ。こっちは弟子のルシア、そこの剣士はバートだ。自分で言うのも何だが、全員それなりには強いと思う。まあそんな訳でよろしく」


「俺の名前はコワーナだ。見ての通り剣士をやってる、あんまり強くはないけどな。そんでこっちは俺の幼馴染のナパリ、魔法士だ。よろしく頼む」



 二つのグループのリーダー同士による各メンバーの紹介が終わり、自ずとその場の視線が最後に残った一人へと集まる。


 それは斥候などが好んで着る軽装の上に外皮を身に纏う、静かな雰囲気を醸し出す一人の男。年齢は二十代前半に見えるが、果たしてどうだろうか。


 視覚で得られる情報を元に思案していると、おもむろに男が手を空中に軽く差し出す様に動かし、直後に男の周囲の魔力(マナ)が空中に差し出された手の上へ何か形を象る様にして集う。


 そうして集った魔力(マナ)は空中でこの場の誰でも知っているような文字へと形を変え、それを成した男の意思を代弁する言葉となる。



『名はオスド。職業(ジョブ)は斥候。事情により喋ることが出来ない為、許して欲しい』



 簡潔で分かりやすい自己紹介に、ヴォイドは「ほう」と一人多少の驚きを零す。


 理由は彼が目の前で行った会話の技法。魔力を宙に集わせ、文字の形へと変えるあの一見何でもないような技術。


 それを見た瞬間、ヴォイドは閃きに近い形で「あれは使い方次第で化ける」と確信していた。故にいつもの様に思考を幾つかに分割し、その内の一つをあの技術にのみ注力する様にして、会話を続ける。


「オスドか、よろしく。ところで、まさかソロか?」


 ヴォイドの問いかけに、「コクコク」と小さく頷くことで肯定の意を示すオスド。それを見てとったヴォイドは心の中で「どこも人手が足りないのは世の常か」と零す。


 それも当然の考えだろう。何せこの場に居る全員が、漏れなく若者であるのだから(見た目だけの者も混じっているが)。


 そんなこんなで全員が軽く自己紹介も済ませ、今はそれぞれ仲良く雑談中だ。ルシアとバー爺がコワーナとナパリの少年少女組と楽しそうに雑談している中、ヴォイドはオスドとの会話に興じる。



「オスド、さっきのやっていた魔力を使って空中に文字を浮かべるアレ、俺にも教えてもらえないか?」


「....コク」



 少し間を置いて頷くオスド。何故彼は喋らないのか、喋れないのか。呪術的な意味で喋ることが出来ないのか、それとも肉体の構造的に喋ることが出来ないのか、とは言えそこはもういいのだ。


 彼自身が声を発さずとも俺たちと会話が成立している時点で、そこは重要じゃない。後なぜかこういう人達とも上手くやれるかどうかが、こういう試験の審査基準にあったりする。


 故に色々、気を付けねばならない。



「へぇ...なるほど、こんな感じか」



 オスドに何度か繰り返し工程を見せて貰いながら、僅か十数分程でその技術を及第点レベルまで習得するヴォイド。


 その様子をどこか嬉しそうな表情で見ていたオスドだが、二人揃ってルシア達のグループに話を振られ、やむなく作業を中断することに。



 二人が輪に入ると、ルシア達から今から話すことに関しての軽い説明をされる。


 それはこれから行われる昇格試験に関する内容であるということらしい。聞けば、この昇格試験と呼ばれる試験は冒険者ランク毎に設定されているらしく、Dランクから上のランクになる為に受けねばならないものらしい。


 だがその試験内容は様々であり、受ける冒険者毎に内容が違うため、試験内容の予測が難しいらしい。故に事前の対策が無駄になることが多く、現場での柔軟な対応が求められるとか。


 その為、今の内にこの場で各々が全員に対してある程度の手札を晒すことで、連携力を少しでも高めておこう、という魂胆らしい。



「それで、どうだろう?まあでも提案した身としては、乗ってくれると助かる。当人達からしたら、嫌な話だろうけど......」


「いや、そんなことはないと思うぞ?個人的にはその歳にしては随分と賢い選択だと思うが――――」



 この案を出したコワーナが本音をぶっちゃける中、それに対してヴォイドが「そんな事はない」と言う。


 実際、これは誰しもが一度は考えるだろう作戦だが、同時に冒険者というのは我が強く癖の強い連中が多いせいで、こういう案が実行に移せない、またはそもそも提案すら出来ない、という状況になることが多い。


 それをコワーナは俺達の人柄をある程度会話や自己紹介によって見抜いた後に提案してきた。ならばやはり、ヴォイドの言った通りこれは「賢い選択」である。


 しかしそれはそれとして、ヴォイドやルシア、バートの三人には確信があった。



「まぁ、あんまり意味はないだろうけどな」



 ルシアとバートの考えを代弁するように、そう零したヴォイド。しかしそんなことをいきなり言われれば、流石に作戦を提案したコワーナが疑問に思うのも当然であり、次に彼の口から放たれるであろう言葉も容易に想像がつく。


 発された言葉の意味が己では測れず、文字通り予想外な回答が飛び出した。更にその発言をした本人が目の前に居る。


 ならばやはり求めるは――――



「それは一体、どういう意味だ?」



 その真意であろう。


 それは単純な問いであり、殆ど反射で出た疑問の言葉。本来であればこの場で答えを得られたであろうが、しかしヴォイドが口を開けたその瞬間に、タイミング悪くそこへ試験官らしき男が部屋に入ってくる事になった。


 よってその場の視線は漏れなくその試験官へと注がれることになり、同時に僅か数秒ではあったが今までヴォイドへと集中していた興味や思考も霧散する。



「全員揃ってるな、直ぐに出発だ」


「おうよ!」


「了解」



 それぞれ短く答え、試験官に続いてぞろぞろと冒険者ギルドを後にする。


 歩きながら説明された内容では、今回の昇格試験は近辺の森の深部で行うらしく、馬車での移動となった。


 そして意外なことに、ここに来て人生初の馬車である。



 で、乗ってみた感想だが、遅いし揺れるしで個人的にはあまりいいものではなかったとだけ。


 なので今は荷馬車の屋根の上で仰向けに寝転がっている。スキルで擬似的な足場を作れば荷馬車の屋根の上も平坦に出来るので、同じようにスキルで体重も殆どなくして寛いでいる。


 馬車の周りには護衛として現在はコワーナ、バート、オスドの三人が歩いているが、索敵担当は俺とルシアになっている。護衛は一時間おき位に交代して担当しているので、全体的な負担は非常に少ない。


 そのまま3時間程移動したが、襲撃があったのはたった一度だけ。しかもただのゴブリン5体。


 感知系のスキルにより即座にこちらに向かってくる敵を補足したヴォイドが馬車から降りて風の魔力で即座に作った槍を投擲することで最前列を走っていた二匹を仕留め、それに反応して目にも留まらぬ速度で森の中へと消えていったバートが残っていた三匹の首を刎ねる事で、ゴブリンはこちらの面々が目視出来る距離に来る前に全滅した。


 そんなこんなで無事に一行が辿り着いたのは、まだどこか新しさが残る人工的な洞窟の入口だった。



 そしてそこで説明された試験の内容は、数日前に発生したばかりの迷宮(ダンジョン)を俺達だけで攻略して見せろ、という内容だった。



「攻略する為なら、どんな手を使ってもいい。説明は以上だ」



 そう締めくくった試験官。しかし冒険者ならば、こう言われたならその後の反応は目に見えている。



「なら、やっぱり誰が一番速く攻略出来るか競争じゃないか?俺らは道中で良いとこ見せられなかったし」


『賛成だ。迷宮内で獲得した物品は入手したその人の物という事でどうだろうか?』


「協力はあり、でも妨害はなし、って事でいいんでしょうか?」



 どんどんと話を進めていくコワーナ、オスド、ナパリの三人。やはり賢い選択を出来るだけの頭を持っていようと、やはり彼らは冒険者であり、同時に血気盛んな年頃なのだ。


 故に当然――――



「いいね、楽しそう!マスター僕もやりたいんだけど、いいかな?」


「まあ危険度はそんなに高くないから、いいんじゃないか?」



 という風に、ルシアもどこか目をキラキラさせてあの会話に飛び込んでいった。ヴォイドの後ろで年甲斐もなくやる気を出しているジジイに関しては無視を決め込み、ヴォイドは流れに身を任せる。


 とは言え自らも参加する以上、勿論勝ちに行く。

 内容を少し編集しました。 2022/04/23

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