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ノート:エーテル Side Persona  作者: 金欠のメセタン
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プロローグ「惑星(ほし)が終わる時」



 俺はしがない学生をしていた(・・・・)


 学生とはいっても、その中身はほぼ人間としては死んでいるような状態。周囲の人間から見れば空気のような、居ても居なくても変わらない「無価値」という言葉が相応しい人間の一人だったろう。


 それでも少しだけ、他人に誇れる位には優れた能力はあったと思う。


 それは周囲を伺う『観察眼』と『危機管理能力』。この二つはこんな俺でもそれなりに誇れる特技の一つだったのだ。


 だが一度、たった一度だけ、それらが一切発揮されなかった。


 その原因は正直なところ、今でも「よくわからない」としか言いようがない。考えられる可能性としては、あくまで想像の範疇だがその時起こったのが「人智を超えた事象」だったから、俺如きではどうしようもなかったんだと思う。


 そして先に明言しておくと、後で分かった事ではあるがこの時起こったのはなんと“世界の意思による星の初期化”だったそうだ。理由は活動限界を間近に控えていた地球というこの惑星が、自身の死後もなお生き続けようとする俺たち「人類種」に恐怖した事が発端らしい。



 そして惑星は自身を初期化するために、ある二つの行動を取った。


 その一つが一時的な『休眠』。


 これは二つ目の行動を行うにあたっての準備というか、備えだ。


 そして二つ目の行動が、眠る前に自身の周囲に広がる「他天体」へとSOS信号を出した事。



 内容は大体『惑星上の残存生命を一つ残らず処理して欲しい』みたいな感じで。地球に宿る“世界の意思”は、他天体にそう助けを求めたらしい。



...


....


.....



 そしてそれは余りにも突然の出来事で、ほんの一瞬だった。


 遥か上空より、赤く輝く眩い光と圧倒的なまでの存在感を放ちながら飛来した、複数の地球外生命体。


 その固有種族名称は――――――



「“幻想生命体(ファンタズム・ワン)”.....。」



 その名は一体、この惑星の誰が呟いた言葉だったであろうか。


 異形の彼らがこの地に降り立ったのは、この惑星が助けを求めてから“たった数時間”という驚異的な速度である。これでは想像通り、現在の人類種が持ち得るあらゆる『叡智』と『技術』を結集したところで、到底間に合うものではない。


 それ故に、誰もがその事象に対して対処が出来なかった。


 それは一般人だけでなく、古の神秘を受け継いだ現代に隠れ潜む“魔術師”と呼ばれる存在なども同様であった。


 そして何より、彼ら人類の目の前に降り立ったこの存在を前に、人類種では対抗どころか抵抗も出来ないだろう。何故なら彼らはこの星の要請に応じて飛来した、“他天体の生態系の頂点に位置する存在”なのだから。


 そもそも、古代に彼らと遭遇し滅んだとされる文明の残した記述には、こう書かれている。



『星海より(きた)る異形の神々が振るう権能は、まさに“星の意思の代弁者”である』と。



 無数に広がる宇宙の天体、惑星と呼ばれるもの一つ一つに存在する、その惑星に宿った“世界の意思”が一から造り上げる、自らを守る為の安全装置の一種。


 地球の人類種は未だ急速な発展の途上ではあったが、この星はどこかで気付いてしまったのだろう。



人類(かれら)はいずれ、自分の下まで辿り着く」と。



 故に、その星にとって終末と成り得るだけの力を持った生命体を用意した。いや、せざるを得なかったと言うべきか。


 その為、現在地表に顕現している全ての幻想生命体(ファンタズム・ワン)の能力の平均基準値が、“その星の生命体を殲滅出来るだけの能力を有している”という鬼畜ぶりである。


 こちらには抵抗すらさせず、圧倒的な火力で最後のひと欠片すら残さず、残存生命を絶滅させてゆく。



 とある空には大きな“何か”が浮遊し、その真下を爆撃のような攻撃で血の色に染め上げる。


 またある地では大きな“何か”が地表に根付き、その枝葉(からだ)を以て周囲の生命体を殺戮する。


 そして俺の目の前には、人類では決して勝てない存在が一匹。


 その姿はどこか、ある虫を彷彿とさせる複数の四肢と複眼が存在し、虫特有の細長い身体の構造で成り立っていた。


 しかし“アレ”をそこまで認識したところで、俺の頭と体は唐突な別れを告げた。



...


....


.....




 そしておはよう諸君。唐突だが、目覚めました。


 あのよく分からない虫の怪物に首を切断されて死んだのをこの眼で見ているのに、目が覚めた。と言うより、生き返った(・・・・・)


 とは言えだ。目覚めた理由は何となく分かる。


 簡単に説明するとどうやら、幻想生命体(ファンタズム・ワン)とやらに殺された俺は暫くの間、魂の状態で宇宙空間や別の次元を漂っていたようで、気付けばまさかの偶然にも漂う先に俺と同じ様に宇宙を漂う「(から)(うつわ)」なるものがあった。


 まあ要するに、都合よく「魂」だけが入っていない肉体が其処にあった訳だ。


 その肉人形に魂だけになっていた俺が、生き延びようとするあまり無意識に流れ着いて入ってしまった、ということらしい。


 なぜそんなことが分かるかだって?


 その答えは今現在、俺の魂が『アカシックレコード』と呼ばれる架空の概念だと思われていた場所と繋がっているからだ。


 まあ『アカシックレコード』なんて呼称しているが、どうやら銀河規模で見た時の呼び名は地球の言葉で訳すと『根源』やら『源流』やら『真理』やら『阿頼耶識』らしい。



 だが本来、普通の人間では魂の状態になれば時間が経過する毎に自身の存在が徐々に崩壊していくらしい。


 しかし俺は恐怖から、無意識に死んでも奴らから逃げ延びることを考えていた為か、なんかそのまま逃げ延びてその上で「存在の格」とやらが上がったらしい。


 説明するのは難しいが、生命にはそれぞれ「魂」という眼には見えない何かが宿っている。


 そしてその魂には「質」とでも表現すればいいのか、まぁそれぞれ大なり小なり違いがある。その質の高さを表すのが「存在の格」らしいのだが、俺は個人的にこれを「魂の重さ」と呼んでいる。



 そして俺の「魂の重さ」が増した理由は、『臨死体験』と言うある現象を元にするのが最も説明しやすい。


 そもそも「臨死体験」とは。「臨死(りんし)」、即ち「死に臨む」事を言う。とは言えこれだとまだ少し分かりにくい。もっと砕いて言えば、擬似的に「死と向かい合う」という事だ。


 そして古来から、スピリチュアル的な観点でその現象を体験した者は多かれ少なかれ、何かしらの「才能を開花する」と言われている。


 実際、歴史に名を残す偉人達の中にも、何人かそういう人達が居たりした覚えがある。


 しかし、一般人である俺が「擬似的な死」ではなく「本物の死」を経験した事で、宇宙の記録と呼ばれる『アカシックレコード』に接続出来るまでの存在へと至ってしまった。

 というのも実は、俺は死後に果て無き宇宙を漂い、次いで次元の狭間を漂い、更には並行世界を漂い、挙句には死後の世界との境目すら漂ったらしい(あまり覚えていないので実感がない)。


 本来であれば存在を維持することすら難しい環境を、魂だけの状態で逃げるためにひたすら漂い続けたものだから、文字通り魂の格がとんでもない事になったらしく、ある人曰く俺は魂だけなら「外宇宙の神」と同等以上の存在なのだと。


 そのせいなのか、魂だけの状態でとある『能力』なるものを獲得した。


 しかもそれがなんと『能力創造』と『根源接続』。



 でもまあ普通ならこんなゲームやアニメ、漫画や小説の世界のような出来事が起きれば、自分の頭がおかしくなったのか疑うだろう。


 当然俺自身そうだった。


 そして何より、「馬鹿らしい」と思うだろう。しかし残念ながら現に、俺はありえない事象を何度も何度も経験してここに辿り着いたわけで。


 地球で殺される前の記憶もちゃんとあるし、『アカシックレコード』で俺が体験した記憶と照らし合わせて記録も覗いた。


 あと因みに“アカシックレコード”とか言っているが、中身はただの“銀河規模のインターネット”だ。


 とはいえこれでも大部分を端折ってかなりわかりやすくしているが、細かく話せばもっと長くなる。



 例えば、俺が魂だけの状態で彷徨い続けている中で存在が崩壊しそうになった時が一度だけあった。


 だがその時、たまたま別の世界線の地球付近の宇宙を遊泳しており、そこで一人の謎のローブを着た髭面の渋いおっちゃんに助けてもらったことがある。因みに魂だけの時は意識も記憶も非常に曖昧な状態で、その出来事を思い出したのはこの(からだ)に宿ってからだ。


 何よりそのおっちゃんの正体がなんと、アカシックレコードで調べてみたら地球で【最古の魔術師】とかいう大層な二つ名みたいなの持ってて、何ならあの人「種族的な意味で人じゃなかった」。


 そんなおっちゃんが魂だけの俺を見るなり「とんでもない世界線から来よったのぉ...」って一言呟いて、そのままなんか勝手に“変な魔術的なもの”かけられるわで、結局よく分からないまま、また俺はどこかにふよふよと泳いでいったらしい。


 まぁその時おっちゃんがかけてくれた“変な魔術的なもの”が、現在俺が獲得した『能力創造』と『根源接続』の二つの能力が発芽する為の「種」を埋め込む作業だったらしい。 


 だがその「種」が発芽するには「膨大な時間」と「莫大なエネルギー」が必要だったらしいのだが、まあ宇宙にはダークマターとかいうよく分からない物質が常に充満してるし、時間はそれこそ死ぬほどあった。


 それこそ今の俺の年齢を仮定すると、四捨五入しても軽く四桁は超えてるらしいので。



 それとあのおっちゃんがこの「種」をなぜ俺に与えてくれたのかは、未だに分からない。『アカシックレコード』で調べても、あるのはあくまで「全ての出来事の記録のみ」で、生物の思考や感情、そして前例がない事象などは分からない、というか前者は“記録する価値がない”と判断されてるのか、割と不便なものだった。


 とはいえ既に開花した二つの能力をフル稼働して、色々な『能力』を創り始めている。おっちゃんがくれた『根源接続』に関しては、俺が宿った肉体というか「(から)(うつわ)」にもなんかあったので、あんまり意味はなかったけど。



 ってことでまず『能力創造』の推定される効果だが、術やら技やら『能力』という概念が少しでも適応されれば、文字通りあらゆる“力”を創造できる。というモノっぽい。


 この時点で相当なバランスブレーカーではある。しかし、色々デメリットが怖い。恐らく肉体への負荷は勿論の事、何かしらの使用制限もあると見て間違いないだろう。


 そういう訳で、まず作るのは『能力作成制限&デメリット削除』と『能力即時作成』だ。作成できる上限や待ち時間、そしてリスクを排除することで、不安要素を確実になくしていく。


 とは言え、この時点では今のところ特に何もない。



 心配しすぎてもまあ仕方がないので次は『記憶能力系』や『コピー能力系』、『思考能力系』の能力なんかを複数束ねて創る。


 そこからは自分の潜在意識という名の記憶領域に深く潜って、今まで見たり聞いたり読んだりなどした、あらゆる『能力』をすべて創造してゆく。


 それも、能力毎のすべてのデメリットを取り除いて、尚且つ能力を底上げしてだ。



 そしてあまりにも全てが上手く行き過ぎたためだんだん楽しくなり、気が付いた時にはこの器に転生してから、どれだけ時間が経過したかわからない程だった。



(気が付かなきゃまたしばらく宇宙で漂う羽目になったな....危ない危ない。とはいえ多少の焦りはあったが、これで大まかな準備はほぼ整ったと言っても良いだろう)



 アカシックレコードから齎された情報で、現在地から一番近い地球に似た環境の惑星へと向かう。そこは地球ではないが、よくファンタジー作品などの物語で出てくるような世界そのものだ。


 因みに宇宙人とかみたいなUMA系のロマンはどうやらないっぽいが、その代わりに異世界転生や転移みたいなのはそれなりにあるっぽい。


 日本で言う“神隠し”の類とか。海外の“妖精”とか。



 とはいえ今はそんな事どうでもいいので、移動に専念する。


 そしてしばらく宇宙空間を未だ慣れない肉体で浮遊して辿り着いたのは、見た目は非常に地球に似た環境で文明が「科学」ではなく「魔法や魔術」に進歩した世界。


 そう、間違いなくファンタジーな世界だ。


 そしてその星の名は、「惑星エーテル」。



 少し時間はかかってしまったが、俺の新たな第二の人生を送る場所としては適当だろう。流石にずっと宇宙空間に居るのもアレなので、早速地上に降り立つことにする。


 幻想生命体(ファンタズム・ワン)とか言うよく分からんヤバイ存在からなんとか逃げ延びてこんな事になってしまったが、俺は絶対に奴らを許さない。


 あんな死に方なんぞ、二度とゴメンだ。


 そのために俺はこの第二の生において、文字通り「俺」という“人としての限界”に挑戦することになるだろう。


 次に奴らと相対した時、文字通り俺が奴らを“喰らってやる”為に。

 誤字脱字、と文章を少しだけ修正しました。


 誤字脱字、文章をある程度分かりやすく改変しました。 2022/03/05

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