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第51話 武研活動記録1

 週が明けた月曜日、武術研究会、通称武研の初めての活動が始まった。


 紗知さんと優紀さんの話を聞いて、テンション低めの竹下はとりあえずほっといて、由紀ちゃんもとい戸部先生と一緒に風花の話を聞く。


「ねえ風花。基礎トレーニングとかしなくていいの?」


 今僕たちは、とりあえず柔道の道着をきて座っているが、ランニングとかは全くしていない。


「私、そんなのしたことないけど、走りたいなら一緒に走ってもいいよ」


「別に走りたいわけではないんだけど。由紀ちゃ、戸部先生はどう思いますか」


「なあ、樹。これ何とかならんの?」


 由紀ちゃんの指は、隣で脱力しきっている竹下を指している。


「今日はほっといてあげてください。失恋したので」


「失恋? あー私の時と同じか」


 ん?


「戸部先生と同じ?」


「ああ、前な。付きまとわれてめんどくさくて振った時が、こんな感じになっていた」


 そういえば、由紀ちゃんにはアタックしないんだって思っていたら、すでに断られたのね。


「しょうがないか。まずはレベル差がわからないといけないから。樹、風花に掴みかかってみろ」


 掴みかかってって言われても、風花も道着を着ているって言ってもその下は体操服で、なんだか触ったらいけないような気がしている。


「樹君、大丈夫だから来て」


 何が大丈夫なのかわからないけど、えーいままよ!



 ……あれ? あれ? っと、えい…………あれ?


 なぜか掴めない。そこにいるはずなのに、そこに手を出しても触ることすらできない。


「なんで?」


「樹、分かったか。レベル差があると、こうなるんだ」


 なぜか由紀ちゃんが、誇らしげに答えている。


「次、俺やってもいい?」


 お、竹下が復帰した。失恋パワーでやれるのか!



 …………あー、僕と一緒だ。触ることすらできてない。


「ねえ、樹と二人がかりでしてみてもいい?」


「うん」


 うんって、風花さすがにそれは舐めすぎ。



 竹下と目と目で合図をし、風花にとびかかる。


 幼馴染パワーを見せてやる!



 結果は触ることすらできず、あまつさえ、2人して頭をぶつけるとか。間違って入れ替わったらどうするんだよ。訳わかんなくなるよ。

 一応入れ替わることは無かったけど、僕たちでは触ることすらできないのがはっきりとした。風花ごめん。舐めていたのは僕の方でした。


「風花。次は私と頼む」


 由紀ちゃんだ。前回は踵落としからの後ろ回し蹴りを掴まれて抑え込まれたけど、今回はどうだろう。


 お、今度は空手かな。突きの速さで勝負! って感じか。……あー、かすりもせずに引き倒された。でも、風花に触ってもらえただけ、僕たちよりも由紀ちゃんの方が上ってことなんだろうな。


 風花って何? 異星人か何かだろうか。



「えーとまあ、このように風花がすごいことは分かってもらったと思う。私たちもこの武術を教えてもらおうと思うわけだが、お前たちも知りたいよな、な、な!」


「「は、はい知りたいです!」」


 圧がすごい。由紀ちゃんよっぽど知りたいんだ。


「よし、それでは風花師範。よろしくご教授お願い致します」



「常に相手の目を見て。筋肉の動きをイメージして……それに合わせて……」


 ちょ、ちょっと。言っていることがほとんどわからないんですけど。

 一応相手の目を見るのは分かる。多分それで狙いを読むんだろう。でも筋肉の動きってどうイメージするの? 風花には相手の脳からの信号が見えているのだろうか。

 本当にこれで、1年の間にユーリルはファームさんに勝てるようになるのかな。



 とりあえず2人に別れて、相手を掴む練習から始めることになった。

 攻め手と守り手に別れ、手が届く範囲に立ち、それぞれが相手の目だけをじっと見て、行動を起こす。

 勝敗は簡単。攻め手はどこでもいいので相手を掴めたら勝ち。守り手は逃げ切ったら勝ち。でも、攻め手からしか動けないから、相手の様子をよく見ておかないとフライングしてしまうのだ。

 そして1動作が済んだら、もう一度戻って攻守を入れ替えて行う。これを何度も繰り返す。


 今日は教頭先生が会議で来れないので、由紀ちゃんを入れてちょうど4人。2人づつに別れる。


 まずは竹下と。


「ふふふ、お前とはいつか決着をつけないといけないと思っていたんだ」


「僕にだって負けられない戦いがあるんだ!」


 攻め手の竹下の目を見ながら、すぐにでも動けるような態勢を整える。


「よし!」


 あれ、いつの間にか手を掴まれていた。


「まずは1勝♪」


 おかしいな。次こそは!


 攻守を代えて、僕が攻める番だ。


 今度はこちらのペースで動けるからやれるはず!


 いまだ! えい!


「よし! これで2勝」


「なんでぇ、行けると思ったのに」


「なんか目を見てってわかる気がする。動こうとする瞬間目の色が変わるもん。それを見てどこが動くかを全体的に把握して回避したら行けた。まあ、樹が特別わかりやすいのかもしれないけど」


 そんなのわからなかったよー。いつか分かるようになるのかな。先は長そうだなぁ。


 その後は風花とも由紀ちゃんともやったけど、結局誰からも勝つことができなかった。竹下も2人には全敗だったから、レベル差があるのは間違いない。



 1時間後、由紀ちゃんが仕事をしないといけないというので解散となった。一応武術を習うことになっているので、顧問かコーチがいないと活動できないのだ。


「僕にもできるようになるかなあ」


 帰り道、風花に聞いてみた。


「樹は素直すぎるから目に出やすいのかも」


「俺もそう感じた。樹の場合は守っているときも、力が入っているところがわかるからそこを外したら簡単に掴めた」


 そうだったのか。どこに来てもいいように力抜いていたはずなのに、そうなって無かったんだ。


「ねえ、この練習いつまで続けるの?」


「できるようになるまで。これができないと始まらない」


 がーん! スタート地点にすら立ってなかった。


 こうなったら、テラでも誰かに手伝ってもらって練習するしかない。


 ん、テラと地球、知識と経験しか持ち運べないけど、もしかして、僕たちものすごく恵まれているんのではないだろうか。

 ユーリルとファームさんとの対決のタイムリミットは1年だけど、地球とテラで経験が共有できるということは、2年間の時間があるのと一緒かもしれない。

 もちろん、それぞれにやるべきことがあるから使える時間は限られているけど、うまく使うことが来たらもっと効率よくできるかも。

 でも、まずは竹下から1勝取ることを目標にしよう。


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