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第47話-2 父さんへの説明2

 私とコペルは、手際よく台所の外に貯めている水を使って野菜を洗っていく。二人で食事を作ることもあるから、いつもの慣れた作業だ。


「コペル。長い間留守していてごめんね。寂しくなかった」


「うん」


「今日からパルフィも一緒の部屋になるけど大丈夫?」


「平気。優しくしてくれそう」


 そっか、それならよかった。コペルが嫌なら、部屋割りを一から考えないといけないところだったよ。

 新しく作る鍛冶工房にパルフィの部屋を作ることもできるんだけど、パルフィの親父さんに頼まれているから、パルフィとは一緒の部屋の方がいろいろと都合がいいんだよね。


 野菜の下ごしらえを終えて台所に入ると、パルフィの姿が見えない。


「あれ、パルフィはどこに行ったの?」


「ジュトに連れられてお父さんところに行ったわよ」


 これは私も呼ばれるパターンだろうか。


「ソルいる?」


 あれ、ジュト兄。もう?


「パルフィの言っていることが要領得ないんだけど、ソルわかる?」


 ああ、そういうことか。たぶんこの中で一番私があの時の状況を知っている。


「うん、父さんに説明したらいいの」


「お願い」


 ジュト兄と一緒に父さんとパルフィの待つ部屋に向かう。


「父さん入ります」


「すまんね、ソル。どうしてユーリルとパルフィが結婚するようになったか、少し聞かせてもらえるかな。パルフィは1年で仕込んで、親父を叩きのめすって言っているんだけど、何のことかわからなくてね」


 父さん、パルフィの言っていることは間違ってないです。


「えっと、パルフィ。私が話していい?」


「おう、あたいは話すのが苦手で、うまく伝えられないからソル頼むぜ」


「わかった」


 私はあの時の状況を父さんたちに説明した……。


「ええと、パルフィは1年間の約束でここに来てるけど、1年で帰る気はなくて、嫁に出したいお父さんとの売り言葉に買い言葉で、1年以内にお父さんの目にかなう旦那を見つけると約束して、その旦那候補がユーリルというわけかい」


「そう、そしてそのお父さんの目にかなう相手の条件は、お父さんとの勝負に勝つこと。そしてその勝負の内容は……」


 ん、そういえば勝負の内容は勝手に喧嘩だと思っていたけど、もしかして鍛冶勝負とかだったのかな。


「ねえ、パルフィその勝負って」


「おう、殴り合いだな」


 やっぱりそうでした。


「そのパルフィのお父さんというのは、ユーリルがかないそうな相手なのかい。彼はあまりそういうのが、その、得意そうには見えないのだが……」


「正直かなわないと思う……」


 ファームさんの腕を見る限り、今のままじゃユーリルにチャンスはないように思う。


「このまま戦っても一発も当てることもできねえだろうな。まあ、1年かけりゃあ、何とかなるだろう」


「大丈夫なのかいソル」


「えっと、実はリュザールが護身術を知っていて、それを教えてもらうことになっています」


「リュザール君か、彼とは一度しっかり話さないといけないな……。おっと、そのリュザール君は隊商の隊長だろう、そんなに頻繁に教えてもらうことができるのかい」


 さて、どう言おう。


「確かに隊商に行っているときは、教えてもらうことはできないけど、その間は練習をして技を磨いていくんだと思います」


「それで大丈夫なのかね……。まあいい、パルフィはユーリルが相手でも構わないのかな」


「ユーリルはたぶんあたいに惚れているからな。あいつならきっと大事にしてくれるはずさ」


 おー、パルフィよくわかっている。ユーリルはパルフィのこと大事にするよ。


「うーん、とにかくパルフィの件は分かった。ユーリルがパルフィのお父さんに勝った後は、私がお父さんと話をしよう。パルフィありがとう。戻っていいから、それでリュザール君にここに来るように言ってもらえるかな」


 ついに来てしまった。


「失礼します」


 リュザールがパルフィに呼ばれこの部屋までやって来た。


「リュザール君悪いね。私も大事な娘をハイそうですかと渡すわけにはいかなくてね。話を聞かせてもらえるかな」


 リュザールは頷く。なんか、少し空気が重たくなった気がする。ジュト兄も緊張しているみたいだし、私はここにいてもいいのだろうか。


「君は確かカスムがいる隊商の隊長だったよね。どこでソルのことを知ったんだい」


「ボクは、カスムさんやセムトさんからソルという子がカインにいて、同い年なのに他の子に文字を教えたり、工房を作ったりしているということを聞いていました」


 そう言って話してくれた内容は、私が前に聞いたこととあまり変わらなかった。でも、結構昔から私のことを知っていたみたい。


「ということは、長年思っていた相手に会うことができて、その結果この人だと思って結婚を決めたということだね」


「はい」


「最初に会ってからしばらく経つと思うが、気持ちは変わらないかね」


「はい、むしろ最初の頃より思いは募っています」


「なるほど、それではソルの方はどうなんだい」


「私は……リュザールとのことは、まだはっきりとは決められないけど、ちゃんとした答えを出したいから少し待ってほしいです」


「リュザール君の方はそれでいいのかい」


「ボクはいつまででも待ちます」


「ふむ、それでリュザール君のご両親はどういっているのかな」


「あ、父さんそれは俺が説明するよ」


 ジュト兄は、バズランさんが後見人だということを話した。


「そうか、バズランが。……わかった。2人がいいとなったら私に言いに来なさい。バズランと話をしよう」


「ありがとうございます。タリュフさん」


「ところでリュザール君は、この話をするためにここまで来たのかな。ソルは私に診てもらいたいと言っていたようだけど……」


 あ、父さんにリュザールの体のことを話さなきゃ。


「そうか、熱をねえ……。今日はもう食事の時間になるから、明日診てみよう。なあに心配しなくても大丈夫だよ。うちの大事な婿殿だからねしっかりと診させてもらうよ」


 婿殿って……父さん。





 みんなで居間に向かうと食事の用意もできていた。


「さて、今日から新しく2名の家族が増えて、1人お客様も迎えている。ジュトにユティ、ソル、ユーリルも帰ってきた。久しぶりに賑やかな食卓だ。みんなも楽しんで食べてくれ。いただきます」


「「「いただきます」」」


 しばらくはこの賑やかな食卓が続きそうだ。


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