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第45話 バーシ村での出来事

 コルカから6日目、今日はバーシに到着する予定。


 その間の道のりは順調そのもので、歩くのが苦手と言っていたパルフィも最初のうちは足の疲れや筋肉痛に悩まされていたみたいだけど、昨日あたりからは『もう平気だぜ』と言って、私たちに鍛冶のことを教えてくれる余裕すらあった。


 地球では、風花と話した翌日から、竹下は何やら護身術を教わるための算段をしているみたいで、学校が終わっても一緒には帰らずに1人で忙しそうだ。手伝うよって言うんだけど、大丈夫と言って何をやっているか教えてくれない。


 風花はあの日以来、朝の散歩に付き合ってくれるようになって、毎朝30分ほど一緒に過ごしている。

 元々は東京の方にいて、お父さんの仕事の都合でこちらに引っ越してきたみたい。

 本当ならお父さんだけ単身赴任の可能性もあったみたいだけど、お母さんの実家がこの町にあるらしくて、せっかくならと高校の寮で暮らしているお姉さんを除いた家族でこちらに来たということだ。

 ただ、お父さんの仕事の都合で、すぐにでも引っ越してしまうこともあるらしい。

『たとえ離れ離れになったとしても、ボクは寂しくないよ。だってソルとは会うことができるからね』


 風花の気持ちは嬉しいが、僕はまだその風花に対して返事をできないでいる。

 風花は『いつまでも待っているから気にしないで』と言ってくれているが、自分のこの気持ちが何なのかまだわからない。

 中途半端な返事は風花に対して失礼だ、僕は風花にちゃんとした気持ちを伝えたいと思っている。





 夕方近くになった頃、私たちはバーシ橋に到着した。


「リュザールの奴、来たがっていたのに悪かったな」


 ユーリルが耳打ちしてきた。


 風花には今日バーシに着くことは伝えているので、リュザールは橋まで迎えに来たいと言っていた。

 ただ、私たちが今日バーシに来るのを知っている人間は、本来バーシには存在しない。リュザールがそれを知っていて、迎えに来たとなると怪しむ人がいるかもしれない。第一、この旅の間ずっと一緒にいて、リュザールとのやり取りも知っているジュト兄に説明ができない。

 そういうわけで、風花には絶対迎えに来たらだめって言っている。


「仕方がないよ。その代わり村に着いたらすぐに連絡することにしてるから、それまで我慢してもらおう」


 相変わらずこの世界には似合わない立派な橋を通って、バーシ村へ入っていく。


 バズランさんの家に向かう途中、向こうから走って来る人影が見える。

 リュザールだ!


「あいつ待てなかったようだぜ」


「うん」


 まあ、でも村に入ってからだから、言い訳はいくらでもできるだろう。


「ソル、待ってたよ! 皆さんもようこそいらっしゃいました」


「リュザール君わざわざ済まないね。でもどうしてわかったんだい」


「向こうから皆さんが来るのが見えて、居ても立っても居られなくて」


「よかったねソル、リュザール君わざわざ迎えに来てくれたよ」


 ユティ姉ー。


 仕方がない、とりあえず打ち合わせ通りに行こう。


「ねえ、リュザール。その後は調子はどう」


「う、うん、大丈夫だよ。ソル……えっと元気だよ」


 まあ、リュザールの返事がたどたどしい気がするけどまあいいだろう。

 リュザールの様子は風花に聞いてわかっているけど、これを聞かないと他のみんなにおかしく思われるからね。それにしても打ち合わせ済みでもこれかー、リュザールは私以上に大根みたいだ。


「み、皆さん今日はバズランさんのところに泊まるのでしょう。ボクもついて行っていいですか?」


「構わないわよ。ねえジュト。ソルも喜ぶだろうし」


 ユティ姉の言い方にも慣れました。はいはい、私もリュザールと一緒の方が嬉しいです。……あれ?


「ああ、一緒に来てくれたら助かるよ」


 みんなでバズランさんの家に向かうことになった。




 一方、私とジュト兄、ユティ姉、リュザールが話しているその横では。


「おいおい、ユーリル。あれは隊商のリュザールだろ。なんであいつあんなに楽しそうにしてるんだい」


「あれ、パルフィ達には話してなかったかな。リュザールねソルに結婚を申し込んだんだよ」


「へえ、そいつはめでてえな。で、ソルの方はどうなんだい」


「まだ、返事してないみたいだけど、まんざらでもないんじゃないかな」


「だってよ。残念だったなアラルク」


「あれれ、アラルクもしかして……」


「ソルいいなって思っていたのに……」


「あっ、あのね、カインにもいい子はいっぱいいるから、元気出して!」


「ははは、ちんたらしてるから先越されるんだよ。前から言っていただろう」


「うぅー、それは言わないでよ」


 ユーリルからこんなやり取りがあっていたことを聞いたのは、かなり後、アラルクの結婚式の時だった。





 バズランさんの家では、急な大勢の来訪にもかかわらず歓迎してくれた。


「リュザールに、種籾持っていくように言ってくれたのはソルさんなんだってね、おかげでみんなに行き渡りそうだよ」


「ボクも運んだものが喜んでもらえてよかったです。あの後、行商仲間から米と種籾が集めにくくなっているって聞いたので、次回では無理だったかも」


 プロフを作ることが増えてきたのかな。穀物類はすぐにはできないから、需要に供給がすぐには追い付けないのかもしれない。


「おお、それはよかった。揃えきれなかったら、村の者から突き上げを食らうところだったよ」


 一種の名誉職なのに村長さんも大変だ。



 夕食のメニューは前回の時には劣るけど、連絡なしに来たにもかかわらずたくさん用意してくれた。ユティ姉だけでなくもちろん私も手伝った。お客さんばかりでは申し訳ないからね。



 ユティ姉は食事のあと、バズランさんに例の件を伝えるそうだ。


 もしバズランさんがこれを受け入れてしまったら、正式に私とリュザールの婚姻の話が進んでしまうことになる。まだ、父さんが断るという選択肢も残ってはいるけど、たぶん断らないだろうな。ずっと私の嫁ぎ先を心配していたから。


 そして両家の話し合いがついた場合、大体はそのまま結婚が決まる。一応当人が断ることもできるけど、やはりよほどのことが無いと難しいと思う。あまりに頼りないとか誰でもが納得する理由がいる。相手が嫌い程度では無理なのだ。


 でも、もし相手がユーリルだった場合は全力で断ったと思う。たぶんユーリルの方もそうするだろう。


 ただ、今回の場合は、リュザールは自分から望んでいるし、私の方から断るだけの理由をつけるのは……



 一応他家のことなので私たちが同席するわけにもいかず、内容は気になるけど、みんなで先に休ませてもらうことにした。


「それじゃあ、リュザールまた明日ね」


「うん、ソル。お疲れさまでした。明日もよろしくね。あーそれから、カスムさんもカインに行くらしいから一緒に来ると思うよ」


 そうなんだ。隊商が休みだからカスム兄さんも実家に帰ろうと思っているのかな。


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