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第31話 カイン村到着2

 家につくと家族と工房のみんなが出迎えてくれた。


 挨拶をし、荷物をほどき、今まで頑張ってくれたミルとリンの2頭を馬小屋に繋いで労をねぎらう。家の荷物は家へ、工房の荷物は工房へ運び入れ、ある程度落ち着いたところで工房のみんなを集め、今まで留守していたことを改めて詫びることにした。


「皆さん長い間留守にしていてごめんなさい。そしていない間も作業をしてくれて、村の人たちに糸車を配ってくれたとさっきユーリルから聞きました。本当にありがとうございます」


「ねえソル聞いて。ユーリルが途中からえらく頑張っちゃってさ、それにつられてニサンも張り切っちゃって、結局私たちもそれに付き合わされたのよ」


 ラーレがそういうと、ユーリルとニサンの二人はバツが悪そうにしている。


「そうそう、ユーリルから言われて作り方も変えたんだけど、そのおかげで早く作れるようになったから。私たちも楽しくなっちゃってね」


 おー、ユーリルはもう自分の記憶で作れるからね。私から聞いたものでないから効率的に出来たのだろう。


「ユーリルが織機を大きくすることができると言ってた。私はそれが楽しみ」


 コペルは機織り機(はたおりき)が欲しいようだ。綿花ができたら綿織物を作りたいから機織り機が1台あってもいいかもしれない。

 それにしてもユーリルも話はしているんだ。それはユーリル発案ということでしたらいいだろう。


「ねえユーリル、織機も作る余裕あるの?」


「うん、みんなにも手伝ってもらうから大丈夫」


 糸車に荷馬車に機織り機まで、出来るだけ無理はしてもらいたくない。テラで病気になったからといって地球で病気になることはないけど、なんだか調子は悪くなったような気がするから元気な方がいいに決まっている。


「それと、帰ってきた早々にごめんなさい。もしかしたらあと半月ぐらいでまた旅に出ないといけないかもしれません。その時はユーリルも一緒だと思います」


「そうなの、でも大丈夫よ。今回のでみんな慣れてきたし、ニサンもいるから何とかなるわよ」


 他のみんなも頷いてくれている。あとは、私が行けるかを含めて、誰がアラルク達を迎えに行くか父さんたちと話さないといけない。


 いつもの終了の時間までまだしばらくあるが、これまで頑張ってもらっていたので今日は休んでもらうことにした。



 みんなが帰った後の工房には、ユーリルとコペルそれに私が残っている。絨毯のところに座り直し、3人で話すことにした。


「コペルごめんね。寂しくなかった」


「ミサフィ母さんと一緒だったから大丈夫だった」


 あ、ミサフィ母さんって呼ぶようになってる嬉しい。


「そっかー、テムスがユーリルと一緒だって聞いたから、1人で大丈夫だったかと思っていたんだけどよかった」


「心配いらないよ」


「ユーリルもありがとね、テムスのこともそうだけど、糸車をあんなに早くみんなに届けてもらえるとは思わなかったよ」


「ソル、僕はこの村に来られてよかったと思っている。糸車を届けた時に、僕たちのことをあんなに喜んでもらえるとは思って無かったからね。コペルもそう思うよね」


「うん、嬉しかった」


 はにかんで見せる様は可愛らしい。


「ところで、2人はどうしてセムトおじさんたちと一緒に来ようと思ったの?」


 前から聞いてみたかったことを尋ねてみた。


「コルカで僕たち避難民は広場に集められててさ、行き先が決まるまでテントで待たされていたんだ。

 力の強い男や手に職があるもの、それに年頃の女の人や小さな子供はすぐに決まって出て行っていたんだけど、僕たちのようなもう少しで大人になるような子供や夫婦連れは、なかなか決まらなくて町の人も困っていた感じだった。

 そこにセムトさんがやってきて、夫婦連れの人たちを集めていたんだけど、子供が余っているのを聞いて、一緒に連れて行ってくれることになったんだ」


「え、そうだったの。工房の職人の募集か何かをしたのかと思っていた」


「工房で働くというのを聞いたのは、カインに向かう馬の上でだったよ」


「途中でだった」


「おじさんはどうしてそんなことしたんだろ」


「たぶん避難民を確実に連れてくるためだと思う。あの時は人があふれててコルカの人にも職が足りてなかったから、もし募集とかしたら避難民以外の人が来てたと思う」


 この前までいたコルカでは、表面上は落ち着いてたように見えたけど、確かにアラルク達も職探しに苦労しているようだった。ユーリルたちがいた頃はもっとひどかったのかもしれない。


「僕たちが聞いたのは、カイン村に来るかということだけで、何をするかまでは教えてもらえなかった。だから断っていた人たちもいたよ。僕たちは他に行き先がなかったから断ることはできなかったけど、ここに来れて本当によかった」


 もしかしたらユーリルもコペルも、カイン村のことを知らずに、他のところで働いていたかもしれなかったんだ。


「2人が来てくれて私も嬉しい」


 しみじみとそう思う。


「そういえばおじさんが言っていたんだけど、ユーリルは私のお婿さんにどうかって思って連れてきたって」


「ソルはユーリルと結婚するの?」


「しないよ。ユーリルは年上のお姉さんの方がいいらしいよ」


「それじゃあ、ユティさん?」


 ユーリルはユティ姉のことどう思っているんだろう。


「ゆ、ユティさんとジュトさんはお似合いだから」


 焦った様子で答えている。変なことを思っていたら、いくら竹下といえども家から追い出さなければならなくなる。あまりこの件は深堀りしない方がいいだろう。


「コペルには気になる人はいないの?」


 せっかくに機会なのでコペルに聞いてみた。もしいたのなら応援しないといけないからね。


「まだわかんない」


「そうなの。いなくても父さんがいい人捜してくれるとは思うけど、もし気になる人がいたら父さんでも母さんでもいいから相談してね。みんなで応援するから」


「わかった。ソルもだよ」


「うん、私もいい人いたらコペルにも相談するね」


 ユーリルはいいとして、コペルも私もどんな人を好きになるんだろう。


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