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神の去った世界で  作者: ジョニー
第4章 混沌のイシュタル
178/214

82話 帝都の戦い 2



 強い衝撃を受けて石畳に転がったミシェイルは喘ぎながら身を起こした。

 アイシャの無事に安堵するのは良いが、真後ろに迫る敵を一瞬でも失念したのは失態だった。敵の刃が背中に触れた瞬間に驚異的な反射神経で前に跳んで避けはしたが完全に無傷とはいかず、背中が焼ける様に痛む。


「ミシェイル、避けて!」

 アイシャの言葉に反応してミシェイルは横に跳ねた。

 直後に追撃とばかりに人型の振り下ろした刃がミシェイルの転がっていた場所の石畳に突き刺さる。

『アズ=ダール・・・!』

 突如、人型が吠えた。それに伴い人型の身体が変わっていく。

 漆黒の泥の様だった身体が硬く艶やかな白い陶器の様な身体に変色し、力感が増していく。

『アズ=ダールの名力に拠りて・・・』

 人型が続けて言葉を吐き出すと異様な力が吹き出した。


 アズ=ダールの真紅の双眸がミシェイルを捕らえた。

「!」

 ミシェイルは本能的な危機を感じ取ってその場から飛び退く。と同時にアズ=ダールの刃と化した腕が振るわれて石畳を切り裂いた。

 

 先程とは違う。

 ミシェイルはアズ=ダールの強さが増したことをひしひしと感じ取っていた。しかし自分もまたアイシャを救う為に放ったデュランダルの一撃から己の神性が今までに無いほど高揚している事に気付いていた。

 少年の黄金の髪が光輝いて見える程にミシェイルの神性が活性化し、内在する力が増幅されていくのを感じる。


 ミシェイルが動いた。

 一跳びでアズ=ダールの懐に飛び込む。


 斬り上げた一撃をアズ=ダールは刀身化させた右腕で受け止めた。そして更に左腕も刃に変えてミシェイルに振り下ろす。ミシェイルは身体の位置をずらす事で其の一撃を避け、そのまま一回転しながら力を乗せたデュランダルを横に薙ぎ払う。

「ギィィン・・・!」

 激しい金属音と供にアズ=ダールの細身の身体が後方に押し出された。


「凄い・・・。」

 アイシャはミシェイルの戦い振りに頬を染めながら呟く。

 あのアズ=ダールという悪魔はアイシャの目から見ても、天の回廊で現れたゼニティウスの幻影達とそう変わらない強さに見える。あの時もミシェイルは剣が使えない少女達の前に立ちゼニティウスの幻影達を相手に真正面から受け止め続けていたが、あの時はカンナとルーシーの援護魔法を一身に受けた上での戦果だった。

 今回は違う。

 彼自身の強さで戦っている。しかも、ミシェイルの戦い振りは彼女の援護を必要とする程の劣勢にも見えない。

 アイシャは愛する少年の強さに高揚した。


 実際、ミシェイルの剣術はアズ=ダールの双剣を相手にしても引けを取ってはいなかった。単純な膂力では未だアズ=ダールに負けているが、明らかにアズ=ダールを上回る剣技と身の熟しが劣勢を撥ね除けている。

 アズ=ダールの右腕を躱してデュランダルを縦に横に撃ち込み、左腕の攻撃を躱す。手数はアズ=ダールの方が多いがミシェイルは其の全てを躱しながら自らも攻撃を加えている。

 両者の位置が徐々に移り始めていた。

 ミシェイルが前に出てアズ=ダールが下がっていく。其れはそのまま現在の優劣を伝えるモノだった。


 行ける・・・!

 ミシェイルの握るデュランダルが一際強烈に輝いた。


 瞬間、アズ=ダールの右脚が蹴り上がった。

「!」

 咄嗟に身を躱したミシェイルの左脇腹から縦に鮮血が吹き出す。

 何が起きたか判断出来ず、激痛を堪えながらミシェイルは後方に跳び退りアズ=ダールを観察した。

 アズ=ダールの右脚が鮮血に濡れている。

 その右脚は両腕同様の刃になっていた。そして左脚も刃となっている。

『ウォォォォ!』

 アズ=ダールが吠えた。


 そしてアズ=ダールの長大な四肢が所狭しと暴れ出した。街道の両端に立つ民家の壁が切り裂かれていく。

 そして荒れ狂ったままアズ=ダールはミシェイルに突進してきた。

「クッ・・・!」

 何とかアズ=ダールの突進を避けるが、攻め手が見当たらない。2本の刃までは何とか捌けていたが、4本の刃を同時に相手にするのは厳しい。

 だが、対処出来ない訳でも無い。

 確かに力も有るし尋常では無い速度の一撃を繰り出してはくるが、フェイントを掛けてくるでも無く単調に刃を振り回す一振り一振りの剣術は恐れるほどでも無い。ミシェイルの目でも追うことが出来る。

 再び突進してくるアズ=ダールをミシェイルは更に躱した。そして躱す間際にデュランダルの一撃を叩き込む。

 一撃はアズ=ダールの刃に止められたが、ミシェイルにも反撃は可能なのだと言う事を解らせる事は出来た筈だ。

 さて、どう出る・・・?

「・・・。」

 アズ=ダールの反応を見守るミシェイルにゆっくりと振り向いた悪魔の視線が、アイシャに向けられた。

「!」

 慌ててラズーラ=ストラを構えるアイシャに向けてアズ=ダールが猛然と突進を開始する。


 ――狡猾な・・・!

 ミシェイルもアイシャとアズ=ダールの間に割って入ろうと走り出す。

 幸いと言うべきか悪魔と少女の間には少し開きが在った為、ミシェイルは間一髪で間に飛び込みアズ=ダールの突進を押さえることに成功した。

 右腕と左脚の刃をその身に受ける形で。


「!!」

 突き刺さった左肩と右脚の刃もそのままにミシェイルは渾身の力を込めてアズ=ダールを蹴り出す。同時に突き刺さっていた2本の刃が引き抜かれ激痛が少年を襲った。

「うぁっ・・・!」

 ミシェイルは自らが作った血溜まりの中に蹲った。

「ミシェイル・・・!」

 アイシャが絶叫してミシェイルに駈け寄る。

「逃・・・げろ・・・!」

 振り絞られた少年の声に少女は眼に涙を浮かべて首を振った。

「嫌。」


 そんな2人にアズ=ダールは近づいていく。

 止めを刺す為に。


 アイシャが殺されてしまう・・・護りたい、護りたい・・・――そう強く願った瞬間、ミシェイルの体内に熱い力の畝りが現れた。耐え難い衝動がミシェイルの体内を駆け巡り、傷の痛みも失せていく。

「・・・ミシェイル?」

 少年の身体を支えていた少女の手に伝わる異様な熱に、不安げな言葉が口を突いた。

「・・・」

 ミシェイルは無言で立ち上がるとアズ=ダールに向かい合った。


「!」

 ミシェイルから漂う異様な雰囲気にアズ=ダールの足が一瞬止まった。先程の変化とは明らかに違う。何か異様な力が動き出している。

 アズ=ダールは奇声を上げて黄金の少年に飛び掛かった。

 まるで恐れを振り払うかの様に。


 デュランダルが下から上へ振り上げられた。

 少年の意思と血の力を受け取った宝剣は強烈に光輝きながらアズ=ダールの刃ごと身体を両断し、悪魔は消滅した。


 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


「其処に居る者、出て来い。」

 馬を止めたクリオリングの鋭い視線が刃となって街道の一隅に向けられた。

 其処は何の変哲も無い花壇だったがシオンの神性を素にして復活した蒼金の騎士の双眸には、悍ましい悪意の塊が渦巻いているのが在り在りと見て取れていた。

「・・・」

 クリオリングはベルトに差した短剣を取り出すと神性を込めて無言で投げ放つ。


「カッ」と衝撃音が鳴り花壇の枠を構成するレンガに突き刺さった。と同時に見えない何かが拡散する気配をクリオリングは感じ取っていた。

 気配はクリオリングの背後に再び集結する。

 騎士は馬から降りると腰の長剣を引き抜いた。無名ながらも生を賜っていた時代から自分と供に在り、激闘を重ねてきた愛剣にクリオリングは絶対の信頼を置きながら構える。

 正体など言わずとも知れている。あの女の姿をした悪魔の同類で在ろう。

 ならば恐れるに足りぬ。

 この愛剣で斬り捨てる迄。


 集結する気配はその存在感を強める程に、黒い瘴気の塊へとなって姿を露わにしていく。そして其れは次第に人の姿へと変貌していった。

 白亜の鎧を纏い、僧衣の代わりとなる純白のマントを羽織った姿は聖騎士の名に相応しい。

「おうおう。相も変わらず血気盛んな男だ。あの頃から少しも変わらぬ粗野振りよ。」

 その者は懐かしさと邪悪さを綯い交ぜにした様な声で蒼金の騎士に語りかけてくる。

「馬鹿な!」

 豪胆なクリオリングが驚愕の声を上げた。

 何故、此処にあの男が居るのか。いや居る筈が無い。

「お前は天央12神が攻めてきた折りに命を落とした筈だ・・・ウラバール!」

 騎士は旧知の男の名を叫んだ。



 嘗て12人のグースールの聖女達を護る為に結成されたセイントガード。

 其れは訓練の後に組織だって結成された部隊ではなく、武器を持って戦える者であれば誰もがそのガードのメンバーに加わる事が出来る、寄せ集めの急造部隊だった。

 何しろ誰1人として事態が理解出来ない中、強大な魔物が彷徨く世界に突然放り出されたのだ。とにかく身を護るために体勢を整える事が優先される時代だった。

 従ってその構成員も様々で大国の騎士も居れば小国の兵士、世界を渡る冒険者も居た。


 そんな寄せ集めのガードのメンバーにウラバールも居た。

 刻の袋小路に放り込まれる以前は、新興国の騎士団に在籍していたというこの男は剣と魔法という全く違うカテゴリの力を操る男だった。

 武器全般を操れるが専ら剣に生きるクリオリングと器用に様々な戦法を身に付けたウラバールは考え方に於いて互いに相容れる事が無く、色々な場面で意見を衝突させる事が多かった。

 其れでも互いに剣を抜く処まで行かなかったのは、当時の危機に囲まれた状況の中で最強の2人が争えば、収拾が着かなくなり人間同士の結束が崩壊してしまうのが必至だからに過ぎなかった。

 だから天央12神が攻めてきた最後の戦いに於いても、隊長であるクリオリングの指示を無視してウラバールの部隊は無秩序に突進しゴーレムに叩き潰されて全滅したのだ。



 ウラバールは冷笑を浮かべる。

「確かに私はあの戦いに於いて憎き天央12神供と貴様の無能ぶりに殺された。」

 その声には自分の命令無視を棚に上げてクリオリングを恨む怒りの感情が滲み出ていた。ウラバールはクリオリングに指を向ける。

「貴様とてそうでは無かったか?」


 クリオリングは静かに頷く。

 本当は生きていた。1000と400年もの間、心と身体を闇に墜として地底を這いずり回っていた。しかしあの時間は死んでいたも同義。とても「生きていた」と呼べる時間では無かった。

 クリオリングの時間が再び動き出したのは、あの偉大なる竜王の巫女と御子の深い慈愛に因って再び生を与えられた時からだった。

 だからクリオリングはウラバールの問いを否定で返さなかった。


「私も確かに死んだ。」

「そうだろう。私が斃されたのに、魔法も使えぬ貴様が生き延びられる筈が無い。」

 ウラバールは満足そうに頷く。

 そしてクリオリングを見る目に憎々しさが募っていく。

「そもそも私を差し置いて貴様などがセイントガードの隊長に選ばれた事が納得行かなかったのだ、私は!」

 やはり其れか。とクリオリングは心中で溜息を吐いた。

 ガードの中でもトップクラスに腕の立つウラバールが隊長に選ばれなかった理由が、この「心の狭量さ」に在った事をこの男は未だ理解していなかった。

 いくら実力が在っても、仲間を妬み、影で罵り、他者を見下ろす様な傲慢な者に誰も付いて行く筈は無いのだ。

「聖女だ何だと言われても所詮は小娘。レシスに人を見る目など在りはしなかったのだ。」

「!」

 敬愛する女性を貶されてクリオリングの眉が一瞬跳ね上がった。


 相変わらず愚かな男だ。

 其れにこの男、もはや人間では無い事は明らかである。ならばその正体を訊き、場合に拠っては斬り捨てるまで。


 クリオリングが口を開こうとした時、ウラバールが先に問うてきた。

「それにしても、貴様はどうやって甦ったのだ。」

 答えは決まっている。

「偉大なる神子の慈悲の御心に因って再び立つ事が叶った。」

「ほう・・・。」

 クリオリングの答えにウラバールは口の端を上げた。

「奇遇だな。私も大いなる神の力に因って再び甦った。」

「・・・。」

 自慢げに言い放つウラバールをクリオリングは黙って見遣った。

 確かに尋常では無い力を感じる。深い奈落から這い上がってくる力を。

 蒼金の騎士は言った。

「だが、私とお前が神と呼ぶ者達は互いに相反する存在の様だ。」

「その通りだ。貴様が呼ぶ『神』とやらが何者を指しているかは知らんが、私を復活させた神は真なる神の系譜を継ぐこの世に唯一の存在。何者にも勝る存在よ。」

 何者にも勝る・・・。

 その言葉に当て嵌まる存在はクリオリングの中で一つしか無い。

「・・・最奥のアートス・・・。」

「ほう、良く解ったな。その通りだ。あの真なる神が私の力を欲して『自分の復活の為に力を貸して欲しい』と請うてきたのだ。」

 その満足げな表情にクリオリングは呆れる。

 肥大化した自尊心を充分に擽られて事の本質をあっさりと見失う愚かな男に巨大な力を与えるのは、混沌を良しとする邪神の常套手段だ。

「だから応じたのか。」

「そうだ。私はその願いに応じて神の肉体の一部に降臨した。流石は真なる神よ。本当の実力者を見抜く慧眼には私も敬服するしか無い。」

 自己陶酔に浸りきった眼で在らぬ空間を見上げる嘗ての同僚の浅はかな心底は見え透いた。

 この上はクリオリングも最奥のアートスについて得た記憶を辿る。


 彼の伝導者殿が仰られるには最奥のアートスとやらは負の属性に立つ神々の眷属で在るとの事。しかし力足りずにラグナロクには参加出来ず、混沌を彷徨い身を隠していたとか。

『・・・とは言うものの、正統な真なる神の一柱で在る事に変わりは無い。現世界に於いては図抜けた存在だ。其れこそ悲しみの為に姿を変えたグースールの聖女達やゼニティウスすら問題にしない程度の力量は持っているだろう。』

 と、カンナ殿は話を締め括っていた。

 その最奥のアートスの力を受けて甦ったウラバールもどれ程の力を持っているか、其の底を正確に量る事は出来ない。

「・・・」

 クリオリングは問うた。

「ではお前に訊こう。其の力を以て何を願う?」

 ウラバールは嗤った。

「知れた事。最強の力を手にした以上、私の王国を創る。度し難い野望と通常は思うかも知れんがこの力があれば可能だ。・・・まあ、その前に最奥のアートスの願いに沿って先ずは大国の滅亡に手を貸してやっても良い。」

「解った。」

 クリオリングの心は決まった。

 長剣を引き抜きウラバールに向ける。

「ならば私は貴様と最奥のアートスの邪念を払おう。」

「やってみろ。」

 ウラバールも冷笑を浮かべながら剣を抜く。


 クリオリングが一歩踏み出す。と、同時にウラバールの右手が突き出され黒い塊がクリオリングに向けて放たれる。

「!」

 一瞬、其方に気を取られたクリオリングにウラバールは驚異的な跳躍力で間を詰めてきた。振り下ろされた剛剣の威力は受け止めたクリオリングの予想を上回っており僅かにクリオリングを押し出した。ウラバールは口の端を上げると、そのまま手を止める事無く苛烈な連撃を叩き込む。

 振り下ろした剣を即座に退き素早く突きを繰り出す。クリオリングが上に弾けばそのまま腕を回転させて下から斬り上げる。斬り下ろし、突き、薙ぎ、斬り上げる。

 新たな肉体から吹き出す圧倒的膂力を惜しげも無く振る舞ってウラバールの苛烈な攻撃が続いた。先手を取られて防戦一方に回ったクリオリングだったが冷静にウラバールの動きを観察していた。

 互いに人間だった頃からのウラバールの癖。クリオリングは其れを狙っていた。ウラバールは斬り下ろしに絶対の自信を持っていたのか、此れを行う際に一瞬だけ力を溜めるのだ。

 其れを思い出したクリオリングは斬り下ろしを待ち、遂に訪れた瞬きするほどの僅かな間隙を突いて素早く突きを繰り出した。

「!」

 振り上げた剣での防御は間に合わないと瞬時に判断しウラバールは首を曲げてクリオリングの突きを避けた。其れに対してクリオリングは水平に突き出した剣をそのまま横に薙ぎ払う。

「クッ!」

 ウラバールは其れをも辛うじて躱し、一端後ろに退いた。

 頬に一筋の切り傷が入り、黒い体液が流れ出る。

「・・・おのれ・・・!」

「黒い血か。今の貴様には相応しい色合いだな。」

 ウラバールの煮え滾る憎悪の視線をクリオリングは軽く受け流した。


「カァッ!!」

 気合いの籠もった声と供にウラバールは漆黒の球を幾つも放つ。

 クリオリングは跳んで避け、幾つかを長剣で斬り払う。普通なら斬り払うなど不可能だろうが、シオンの神性に因ってクリオリングと供に甦ったこの長剣ならば造作も無い。

 しかしウラバールの狙いは攻撃魔法でクリオリングを攻撃する事では無く、生前も得意としていた自身への強化魔法を掛ける事だった。攻撃魔法は敢くまでも其の為の時間稼ぎに過ぎなかった。

『暗闇の雲を纏いし奈落の裁定者よ。我が意思を識り鋼の枝を授け給え・・・アビス=カレント』

 ウラバールの詠唱が終わり、彼の周囲の地面から濃密な瘴気が吹き出す。瘴気はウラバールの身体に取り込まれていき、肉体が何重にもブレていく。まるで分身したウラバールが重なって見えているかのようだ。

 閉じられていたウラバールの双眸が開き、凶悪なまでに赤く輝く両の眼がクリオリングを捕らえた。勝利を確信したウラバールの口の端が上がる。

 白亜の騎士は途轍もない数の残像を残しながら突進してきた。

「!!」

 余りにも多数の残像に視覚が翻弄されて本体を見失ったクリオリングは流石に攻撃を捌けず、まともにウラバールの一撃を受けてしまった。蒼金の騎士は後方に吹き飛び激しく民家に激突する。


 ウラバールは愉悦の表情を浮かべると三度右手を差し向けて一際大きな黒球を生みだした。

「死ね。」

 ウラバールの手から離れた黒球はクリオリングが突っ込んだ民家に激突すると轟音を立てて周囲を爆散させた。






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