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火の海。

 

 大型スクリーンのデジタルカウンタが無慈悲に時間を刻む。

 たった3秒、この世で最後の3秒。

 潜水艦の管制ブリッジの乗組員はその3秒を各々の想いを過ぎらすには余りにも唐突な終わりの宣告で放心状態で立ち尽くす。


 人生の終わりは大抵唐突に訪れる。

 瞬間に終わる場合、残りを宣告される場合。

 人生100年と保険会社に乗せられて遠き時間ばかりに目が行くが実際そんな甘いものじゃない。

 今まさに勝ちを確信していた者らが後3秒の命。


「儚いね〜ほんと儚い儚い」

 と管制ブリッジの上にある上部ハッチの気密室から声が響く。


 管制ブリッジの乗組員が声に反応して上を向く。

 そこには壁にへばり付いた青装束の《忍者》が居た!


 近代設備の塊の中に歪な似つかわしくない《あやしい奴》が居た。


 銃口を向ける保安兵も居たが残り3秒で全てが蒸発してしまう今、それ以上の行動する気力はない。


 制御コンソールの画面に《起爆》のメッセージが表示される。

 終わりだ…。


 〈チーン〉とあの世系のお鈴の音ではない潜水艦のシステム音が鳴動する。

 《ツウジョウ コウコウ チュウ システムオールグリーン》

 《シンド イジ 30ノット デ スイヘイ イドウ チュウ》


 もう起爆から10秒は経過している。

 恐る恐る艦長の横の巡航ミサイルを見る。

 あの紫色の空間は無く、巡航ミサイルは床に狭苦しく横たわっている。


「え!」

「まだそこにある!」

「何故に」


 天井…。

 管制ブリッジの上にある上部ハッチの気密室からまた声が響く。

「よくは分からないけどね、“ドルイドマスター の森羅万象” のおっさんが核物質を塩に変えたそうよ」


「そこの偉そうな帽子のおっさん、頭のデカイたんこぶに塩でも塗っときな」

 〈ハハハハハ〉


 我にかえった保安兵が〈ターン、ターン〉と天井に発砲する。


 〈カーンキーン、カーン、カーン〉と銃弾が食い込む肉体は消えをせており金属の壁に当たり、銃弾はあらぬ方向に跳ね返る。

「発砲するな!跳弾が味方に当たる」


 管制ブリッジの入り口から声が響く。

「そうそう、みんな逃げた方がイイよ!もうすぐ、この艦沈むから」


 〈ドゴーン〉

「どうした!」

「機関室が爆発しました延焼中です!火が消えません〜」


「あ、そうそうみんな救命艇に早く乗りなよ」

「艦はね、真っ二つに割れるようにしてるから救命艇なら助かるかもよ」

「“ちる” ちゃんから犠牲が少ないようにと言われているからね。“ちる” ちゃんに感謝しな!」


「さ!早く、さっき命は今が大事だと学ばなかったのかな」

「総員〜、救命艇に急げ〜 ハハハハハ」


 艦長もおうむ返しに「総員、総員、救命艇に退避!退避〜!」と繰り返す。


 管制ブリッジの船員が全員退出するのを確認して艦長が徐ろに

「“ステンノー” 殿、どうする」と問う。


「逃げるわ」

「ちょっとその前に」

「ところで青忍者、まだ居るのだろう!」

「お前は何者か?」


「キャー見つかった〜」

「生き残ったらまた思い出せるように特別に教えるよ。」

「私は“風魔小太郎” 摩利支天に加護されし一族の長。そして聞いて驚け “尊きお方” 様の直属の旗本八人衆の一人なるぞ」

「驚いたか!」


 …。


「ま、いいわ、また会いましょう」


 〈バタン〉と管制ブリッジのドアを閉める。

 〈キュルキュルキュル〉と気密弁のコックを締め上げる。

「これで良し!ブリッジから出れずにどうやってまた会うのさ〜」

 〈ウキャキャキャ〉

 〈ウキャキャキャ〉


「陰湿ですな」と艦長が呟く。


 〈ドゴン、ドゴン〉

 爆発は誘爆し艦内は火の海となる。


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