引継がれる希望。
異星人の超ハイテクノロジーを使う異形の集団を統括する“マリア” という存在。
酸素テントの中に二人の防護服が入って来た。
ヴリルチームは部屋の両端に瞬時に避けて二人を通す。
二人は防護マスクのシールドを上げる。
一人は “アドルフ・ヒトラー” 、もう一人は、燃える様なブロンドの女指揮官 “マリア・オルシック”。
“マリア” は、“ロンメル”の額に指を置き目を瞑る。
“マリア” が、ヴリルチームに「念話増幅器稼働」と指示をする。
そして「総統閣下、会話が出来ます」と告げる。
〈エヘン〉会話前の咳払いは総統の癖だ。
唐突にスピーカから声が発せられる。
「総統ですな!その咳払いは!」
「ハハハハハそうだ、元気そうで何よりだ」
「いえ総統閣下、元気な状態ではないはずですが…。お戯れを」
「フハハハハ、“エルヴィン” 君、君だけだ、私に反論するのは」
「いつの頃よりか、私の周りには生きているのに死んでいるだろうと言えば、はいそうですと死ぬ奴等ばかりと成り果ててしまった」
「故に私は誰も信じられなくなったのだよ」
「“エルヴィン” 君、君には生きて欲しい。そして私がいや、人類が未来を生き抜く為の我が叡智を守り育てて欲しい」
「君には分かると信じるが、極めて大きな大事を成す為には冷徹なままに事を進めねばならん事を…」
「だがその為の細事が余りにも多く、我が闘争を湾曲利己的に利用し暗躍する者らが増殖してしまった」
「今の私は私が作り上げたこのハーケンクロイツの組織に担がれる最終責任だけを下知させられる傀儡と成り果て命まで狙われる」
「全ては私の不徳。私は“エルヴィン” 君の人物に憧れた。しかしそれには成れなかった」
「君にしかラストバタリアンは託せない。我が友よ、我儘であるが聞き遂げて欲しい!」
“ロンメル” の目から涙が一筋流れる。
「閣下、引き受けさせて頂きます。その代わり閣下も生きてください」
「分かった!“エルヴィン” 君、頼むぞ」
〈ブブッブブッ〉とアラーム音。
「脳波が減衰して来ました!施術を開始します」
“アドルフ・ヒトラー” は、シールドを下げて踵を返してテントを出て行く。
「“マリア” 全知全能を尽くし彼を蘇生してくれたまえ!」と声を残して。
森の裏手にはかって “ヒトラー” が国内闘争を始めた当初からの仲間であるプロイセンレジスタンスが待っていた。
「“アドルフ” 用事は済んだか?」とレジスタンスの爺さんが聞く。
「私の約束は守れそうもないですが、人類の希望は繋げたと思います」と答え、レジスタンスに先導されて去って行った。
それから一時間後この森はゲシュタポの爆撃機で荒野に変えられた。
ゲシュタポの調査によると何の痕跡も発見できなかったと、“ヒトラー” に報告が上がった。
その報告の際、この爆撃は誰の指示かと “ヒトラー” が問うと、秘密警察の “ヒムラー” との事だった。
“ヒトラー” の思いを忖度している形を取りながら取り巻き連中は身勝手な利己的な動きを行う。
“ヒトラー” は静かに窓の外を見つめた…。
もう絶対者のコントロール出来る組織ではない…。




