この力を侮るなかれ。
思いの強さは力を強くする。
個の力。
“メラ” 推参。
龍騎に跨り2騎の龍騎兵と駆け付ける。
「“ミューラ”坊ちゃん、ご無事で〜」
と飛びつかんばかりの勢いで “鈴之助” の隣に降り立つ。
「八百屋のおばちゃん!大丈夫だったんだね」
「ええ、大丈夫ともさ。おばちゃんが時間稼ぐから逃げるのよ!」
「おばちゃんも一緒に行こうよ!」
「坊ちゃん、おじいちゃんとおばあちゃんも待っているから早く行きなさい」
「おばちゃんも直ぐ後から行くから」
「坊ちゃんが逃げたら私たちも逃げれるから、ね、早く」
他の龍騎兵も促す。
「ダメダメ、逃げちゃ嫌、おねーさん泣いちゃうわ」
「逃げられはしないけどね」
〈キャッキャキャ〜〉
「何を〜この薬局が〜!」
龍騎兵と龍騎1騎に目配せして身構える。
残った龍騎1騎が、龍騎に跨るように促す。
“鈴之助” が龍騎兵の後ろに跨り浮上し始めたのを確認した八百屋のおばちゃんは「行くよ!」と突撃を敢行する。
2騎の龍騎兵はフルスロットルで上空高く急上昇する。
それと同期して地上の龍騎兵が1番右端の“アイアンハーケン”に一斉に電撃を放つ。
“アイアンハーケン” は、あまりの電撃の激しさで一瞬怯む。
立て直して手首のシュマイザー機関砲の掃射をすべく腕を伸ばす。
そこに〈キーーーン〉と急降下しながら2騎の龍騎が腕の関節目掛けて冷凍光線を浴びせる。
そして龍騎諸共で体当り、〈バキン〉と腕が折れた。
凄まじい執念の一撃。
なんと、腕が折れた“アイアンハーケン” はバランスを崩して倒れた。
弱点だ!片腕の重さをバランス取れないんだ!
龍騎がまた急速上昇を始める。
ゲシュタポ司令官が歯ぎしりをする。
上空真上からの急降下で地上の機械化車両を攻撃する戦法は実はナチスの得意芸。
お株を奪われた感じで歯痒さの極み。
2撃目は左端と先に打ち合わせていた通りに地上の龍騎兵も移動する。
その動きを少し離れた場所の墓石に腰掛けて冷静に見つめる “薬剤師風の女” 。
「分かり易い戦略どうも」
「もう少し司令官の困り顔見たいけど、まっいいか〜」
「シャドウお行き!」
と呟くと “薬剤師風の女”の影から影が分離して地上の龍騎兵の方に向かう。
雷撃のためのチャージが済むのを物陰で待つ龍騎兵。
その一人が息を引取る。
また一人、また一人。
総勢17名の龍騎兵が異変すら気付かずに全員息を引取る。
「ククククッ」と風音に紛れて陰湿な笑い声がただ流れたのみ。
「雷撃2撃目、行くよ〜」と “メラ” が上空でもう一人の龍騎兵に喝を入れる。
〈キーーーーン〉急降下を始める。
左側の “アイアンハーケン” が真上に向けてシュマイザー機関砲を撃ってくる。
おいおい、地上の龍騎兵の援護の弾幕無しかい…。
行くしかないね、このまま急降下。
〈バコン〉追従する龍騎兵の龍騎にミサイルがぶつかる。
爆発しない。
白い水蒸気に一瞬覆われる。
途端に龍騎が航行不能となり失速する。
「当たった〜」とミサイルの筒を持ちながら またあの “薬剤師風の女” が妨害する。
単騎となった “メラ” は攻撃を中止せずに突入する。
「あーん、ナチスの鉄の塊また一機お釈迦か〜」と “薬剤師風の女” が呟いた時
“メラ” の龍騎が〈ギューン〉と水平飛行に航行舵を切る。
〈ギューーーン〉と龍騎は真ん中の司令官が乗る“アイアンハーケン” に突っ込む。
龍騎の冷凍光線が “アイアンハーケン” の頭にあるカメラを狙い衝突するまで照射を続ける。
〈ドゴン〉“アイアンハーケン”の頭が捥げる。
そのまま龍騎は弾け飛んで不時着する。
「アハハハ、司令官、目が見えなくなりました〜」と大笑いする。
だが “薬剤師風の女” の顔は笑っていない。
“メラ” が不時着した辺りまでツカツカと歩いて行く。
龍騎の墜落で窪地となった底に、“メラ” は立っていた。
「お出ましのようだね大ボス」
「何のことはない薬局ねーちゃんかい」
「拍子抜けだね」
「あははあはは、それはどうかしら」
と窪地の上から走り下る。
走りながら指先の黒い爪が〈ニョキニョキ〉と伸びて凶悪な刃物となる。
“メラ” も背中に背負っていた細身の二刀を引き抜く。
遠くに逃げつつある “鈴之助” が乗る龍騎を一瞥して、「やあー」と窪地の上目掛けて駆け上がる。
10本の黒い爪の刃物と二刀が斬り合う。
双方互角の技量か、刃物が交差衝突しなかなか隙が生まれない。
ここ迄の技量と思っていなかった “薬剤師風の女” が焦りを感じ始めた時、〈ポン〉と軽い砲口音。
〈ドコン〉と遠くでの爆発音。
キャノン砲だ。
「やった〜堕ちた堕ちた」と笑う。
もしやと “メラ”が視線を “鈴之助” の龍騎の方に流す。
隙が出来た…。
5本の黒い爪が “メラ” 右側の二本の手を突き刺す。
崩れ倒れる “メラ” の視線は “鈴之助” の方角を向いたまま。
その眼には、墜落する龍騎の姿が映る。
「坊ちゃん」と呟きながら倒れる。
「司令官もたまにはいい仕事するじゃないの。あー疲れた」
「トドメね」ともう片方の黒い爪5本で “メラ” を突き刺す寸前。
〈バチーン〉とその黒爪が弾かれる。
いや、爪が切断されている。
シャドウ。




