地獄絵図
本物の暴力がやって来る。
平和ボケして人を僻みこ蹴落とす今の日本人には未知の嵐がやって来る。
〈プシュージュワー〉と亜熱帯ジャングルのような噎せ返る湿り気を帯びた空気が一気に押し出されて来る。
暗闇の中に複数の赤い点がひしめき合っている。
「出て来い “ゴブリン” ども」とゲシュタポの指揮官が命令を発する。
〈ゾロリゾロリ〉と“ゴブリン” が外に出てくる。
上半身裸で腰に布を巻いている出で立ちでヌメヌメした深緑色の皮膚が露出している。
眼はチロチロと敵意に満ちた赤い眼光。
ただ、金属製の首輪だけが近未来的な感じを醸し出す。
闇夜の箱と呼ばれたコンテナは全部で7つ。
全ての扉が開け放たれて総勢350名程の “ゴブリン” が凸凹に整列する。
鉄兜の兵士が武器庫用のキャビネットを “ゴブリン” の前に置く。
指揮官が武器を取れとリモコンのスイッチを押すと武器庫キャビネットの上部が観音扉の様に左右に開く。
キャビネットの側面が段々に〈パコンパコン〉とスライドして中身が全て表に出て来る。
ずらりと金属製の棍棒が並ぶ。
〈ゾロリゾロリ〉と “ゴブリン” は歩み寄り棍棒を手に取る。
少し大き目の “ゴブリン” が棍棒を手にした途端、指揮官に襲い掛かる。
指揮官はゆっくりとした動きで腰のホルスタからルガーP08を抜き、 “ゴブリン” の方向に腕を指すように突き出す。
その一連の動作に尋常でない熟練度と冷徹な意思を感じる。
腕を突き出したと同時に躊躇なく引き金が引かれる。
〈パーン〉と乾いた音と、トグルアクションのP08ならではの音〈カチャ〉がしたのみ。
“ゴブリン” は、眉間を射抜かれて崩れ落ちる。
数秒後に 〈ピキーンキュロロロロー〉と首輪が明滅して〈ボウム〉と爆発する。
“ゴブリン” の首がコロコロと指揮官の足元に転がる。
“薬剤師風の女” が「キャッキャ」と笑う。
「総統に楯突く愚か者が!」と、指揮官は無表情のままP08を “ゴブリン” の列に数発連射する。
“ゴブリン” が二体崩れ落ちる。
〈ピキーンキュロロロロー〉、〈ボウム〉と爆発が二つ起きる。
指揮官は何事もなかった様に胸ポケットのハーケンクロイツの刻印の蓋がある懐中時計を出して〈カチン〉と片手で蓋を開けて時刻を確認する。
〈パチン〉と蓋を閉めて、
「さあ、時刻です。
“ゴブリン” ども!町と人間を蹂躙せよ」と命令する。
“ゴブリン” は、最寄りのテント村に雪崩れ込む。
既に殺し合いをしていた外国の愛護団体の連中は誰かれ構わずに殴り殺される。
偽善者が初めて触れる本物の暴力だった。
テント村が駆逐されるまで数秒と掛からなかった。
そこには確か人が居た筈だが、ビチョビチョした肉片しか落ちていない。
外人の愛護団体が乗ってきた大きなトレーラに積まれた灯油缶にテントのランタンの火が引火して大きな爆発が起きる。
少し後に“薬剤師風の女” が、
「“ゴブリン” 最高!半端ないね〜こりゃこりゃ」と、
〈ウキャキャ〉笑う。
圧倒的暴力は何も残さない。
それを無表情に指揮するナチスの亡霊。
その横で 〈ウキャキャ〉と喜び笑う人ではない何者か。
悪魔が降臨した瞬間だった。




