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ばあちゃんと帰る帰り道。

日常と極めて異質な出来事を終えると、幼稚園児らしい男の子に戻る。

大好きな “おばあちゃん” が、いつも通り待っていてくれる。

夕刻過ぎた町中を帰る道々で優しい人らの笑みに見守られながら “鈴之助” のお喋りも絶好調。

 

 “ハイドラ”がいたこの海域にはびっしりと半透明の見た目が海月(くらげ)の様な浮遊物で覆われていた。

 明日には浜辺に打ち上げられてテレビニュースで話題となるだろう。


「さて帰ろうかね」

 男の子を乗せた光輪は大御神社に向かい滑空し始める。


 大御神社のご神水で満たされた龍の卵が胎動する泉前に円盤が〈ふわり〉と着地する。


 男の子は円盤の半透明の幕が下がると一目散に境内から外に駆け出す。

 境内の入り口にある大鳥居横の街灯の下に 小綺麗に 白髪を結い上げ(かんざし)で髪留めした “祖母ちゃん(おばあちゃん)” が待っていた。

 まだ、20時を過ぎたくらいの時間だ。


「“ばあちゃん”!終わったよ」


「よ〜無事じゃった “鈴之助”、“ばあちゃん”は心配じゃった」と涙ぐむ。


「“ばあちゃん”心配いらんとよ」

「ぼくはちゃんと帰って来るけんね、心配せんで良かとよ、“ばあちゃん”、ねっねっ」


 腰の曲がった おばあちゃんの手を引きながら園児服の男の子が嬉しそうに喋り出す。


「“ばあちゃん”もう直ぐクリスマスだけどね」

「“ばあちゃん”プレゼントとかいらんけんね」

「鈴は “ばあちゃん” と “じいちゃん”が元気で居るとね、嬉しいとよ、そいだけで良かとよ」


「“ばあちゃん”、星が綺麗ね。ピカピカしとるね」


「あ〜ほんと綺麗かね、“鈴之助”」

「“鈴之助” あの赤い星の左斜め上、キラキラと青く瞬く星が見えるね」


「またあの星の事ね、見えるよ、キラキラしとるね」


「そう、あの青い光は何千年も前にあの星雲で起きた大爆発の光じゃ」

「沢山の人や生き物達の命の光」

「“鈴之助” の眼に届く今は命が消える時の最後の輝き」

「それを忘れたらならんぞ」


「うん、忘れんよ」


 “ばあちゃん”があの星の話をする時はいつも悲しい目をする。

 だから僕はいつも歌を歌ってあげる。

 歌いながら歩くと。


 帰り道沿いの八百屋のおばさんが「上手ね〜“ばあちゃん”の自慢ね」と声を掛けてくれる。

 床屋のおじさんが「よっ、今日も“ばあちゃん”と一緒か!」と声を掛けてくれる。

 部活帰りのお姉さんが「お帰り〜」と微笑んでくれる。

 駐在さんの前では飼い犬の“白” が「わんわん」と声を掛けてくれる。


 男の子と“ばあちゃん”の二人のいつもの帰り道の情景。


目を閉じて少し深呼吸して遠い記憶を辿るとそこには “鈴之助” の年頃の自分が見えませんか。


幸せって物心ついて色んな業で染まり始めると目に見えなくなる。でも物心つく前はそれをそれと呼ぶ事を知らないだけで小さな日常の中に幸せは満ち溢れている。

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