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ゲイボルグの慟哭が止む。

神器とて無二の親友が逝く悲しみは耐え難き事。人の世も失った現実で亡き者の損失感を始めて身に染みて分かる。

 ゲイボルグの慟哭が止む。


 彼が喋り出す。


「お〜この雰囲気、貴女様は “櫛名田比売(クシナダヒメ)”」

「道理で《仁》の想念がこの場所に満ち溢れている訳か」

「ケルトの勇者らと戦車(一人乗りの戦のための馬車)で駆けていた貴女の勇姿を思い出します」

「ケルトの勇者らは弱き人らの希望の光。神話の世代故の怪物が徘徊する欧州の地を《仁》なるを大義に掲げ彼等と駆け巡った東方の戦神の女神」

「貴女様が何故にこの場所に?」

「我は無二の友柄を失いました。もう存命する意味も無し」

「悠久の流れの中で稀有な出会いでしたがお別れです」


 〈ババチバチ、バチ、チリリ〉

 “博美” の身体が明滅している。

 電影の少女の様にその身体は電子の粒子に包まれる。

 〈クルクル〉と渦巻く電子の渦が消え去るとそこには、白絹の胴着に黄金の肩当てべに紅の袴に長弓を背負いし見目麗しい姫君の姿があった。

 額当ての《素戔嗚(スサノオ)(ミコト)の紋章》、金色の髪留めが荘厳な雰囲気を醸し出す。


(たばか)りし浮世の情に当てられたか!神器ゲイボルグ殿」

「そちを残した “クー・フーリン” 殿の遺し託した心根を無にするか」

「唯一無二の親友の《仁》を無にするか!」

「貴殿が滅する前にワラワが滅する!」


「わはははは、“櫛名田比売”様の《激》久方久方(ひさかた)に浴びました」

「滅するなぞ、お手を煩わせるには及びません」

「我、ゲイボルグ、御姫に付き従います」


 〈チリーン〉澄み渡る鈴の音。

 “勇者“クー・フーリン”の友、神器ゲイボルグ、心を留めて頂けましたね。

 ありがとう!ゲイボルグ。

 “櫛名田比売” ちゃん、お久し振りね。

 長い眠りでしたね。

 また一緒に暴れましょう、うふふ、楽しみですわ。


“博美” は、“櫛名田比売” の人の世での姿だった。燃え上がる義憤は当然の所作であった。“内侍ちるな” とは古き友の間柄のようだ。

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