葵美波と荒木勇也 副題:苺ミルクキャンディーの包み紙は宝物なんだ byゆうや
幼馴染のミナミとユウヤのほのぼのとした風景に憧れを感じます。女子よりも幼き思考の男子の純粋な心。幼き日にすぐ隣にあった掛け替えのない日常はもう遠い昔なんですね。
★投稿は毎日(7時)を目標に行う予定です★必ず毎日アップしますね。仲良しになれたらイイですね。どうぞ宜しくお願い致します。
プロローグ 〈朝焼け空に君と僕は。
副題:心から思う。食べさせたい〝メロンパン〟〉
enemies:慈悲無く支配するモノ
◇物語は日本の小学校の冬休みに入る終業式のホームルームから始まる。
〈キンコンカンコーン〉
「は〜い、終業式の日程はこれで終わりです。
冬休み中、怪我無く、
お餅食べすぎてお腹壊さないように無事に元気にまた来年六年二組
のクラスで会いましょう!約束ですよ(^_^)/」
「これで放課となります。
下校は校内に留まらずに真っ直ぐに帰宅。
登下校班で集団下校するように!イイですね」
「では、日直!」
「起立、先生さようなら、皆さんさようなら」
〈ガタ〜ン!〉
と、挨拶が終わるや否や椅子を机に〈ガーン〉と入れて立ち去ろうとする女の子。
「は〜い、葵みなみ、ちょっと来なさ〜い」と担任が呼び止める。
六年二組の恒例、居残り〝みなみ〟劇場の開幕開幕〜。
〈トボトボ〉と〝みなみ〟は、担任の机まで出頭。
クラスの誰とはなしに「ドナドナド〜ナぁド〜ナ〜」と、
テーマソングを奏でながら教室を去って行く。
「じゃあね〜」と、ゆっくりと帰り支度を整えてクラスメートは
口々に〝みなみ〟に笑いながら声かける。
「〝葵〟さん?先生は何と!話したかな〜?」
「そんなにバタバタ忙しく行動すると、不慮の怪我が近寄って来ます!」
「分かりますか、理解していますか?」。。。と、
10分は説教となった。
〝葵 美波:みなみ〟六年二組、剣道倶楽部とお菓子倶楽部の部長を任される極めて活発な女の子。
多感で落ち着きがないが、面倒見と率先・強制力の強いクラス女子のリーダー役。
肩下まで伸ばしたポニーテールが活発さを強調している。
〈ガラガラ〉と、しょんぼりうな垂れて教室を出ると。。。
廊下の端トイレ前の水飲み場の脇に〝荒木勇也〟がポツンと待っている。
〝荒木 勇也:ゆうや〟六年一組、幼き頃より古武術道場の祖父の影響で古武術を嗜む。
学校では読書好きで学年No. 1の読書家。
人形劇クラブの平部員。
いつも和かな笑みを浮かべて“何がそんなに嬉しいのか?”とよく周りの人に言われる。
自分の存在を最小限の露出にしている感があるが、こと“みなみ”ちゃんの事となると周りの環境・状況を度返しした行動力を見せるが、小学生時代の男子に多く見られる女子に比べたら格段に幼い思考。
「みなみちゃぁ〜ん、みんな帰っちゃったよぉ、もう誰も居ないよぉ」
1人待つ男子、もしや彼氏?。。。いいや、同じ学年であり、〝みなみ〟とは、家が隣同士となる幼馴染み。
ま〜、〝みなみ〟と恋仲の男子は相当な覚悟、際立つ草食性が必要だろうから彼氏は居ない。
でもでも、〝ゆうや〟が居る。
そう〝ゆうや〟が唯一いつも居るのであ〜る。
〝みなみ〟は、廊下の端の〝ゆうや〟を遠望してニッと笑みる。
しょんぼりうな垂れ顔が、顔を上げるとニカっと満面の笑みとなる。
「さあ〜、早く帰るわよ。“ゆうや”!」
「でもあんたさ、どうして今日はいつもと反対側の廊下の端に立っているのよ?」
「それはね、水飲み場のね蛇口の締め忘れで〈ポトポト〉雫が滴っていたから締めて回っていたんだよ」
「はあああ、もしかして全部⁈」
「うん」
「それが、“ゆうや”だから、ま、そだね」
「さあさあ出遅れを取り戻すわよ」
〝みなみ〟と〝ゆうや〟の家の方角はこの二人だけ、六年間ずっと二人きりの登下校班。
いつもいつも一緒だからもう恋人とかの生半可な間柄ではなく、ある意味一心同体。
「ねぇ、〝みなみ〟ちゃん、何処行くの? 聞いてないよぉ」
「う〜もぉ、〝ゆうや〟!あなたは考えなくて付いてくればイイの!」
「遅くならないよね?お母さんに言ってないから。。。」
「どうしてあなたは、ジクジク言うかな!」
「ココに来なさい!頭なでなでしてあげるから」
頭なでなでして貰うと、〝ゆうや〟は上機嫌となる。
「〝みなみ〟ちゃん!〝ゆうや〟何処でも付いてくからね!」
「そ!最初から素直で居なさい」
「で、何処行くの?」
「もお〜黙って付いて来なさい!」
裏門出ると“みなみ”は、“ゆうや”の腕を掴み〈グイ、グイ〉引っ張って大股で歩き出す。
帰り道の途中の、小さな公園の入り口の自転車進入禁止のU字管の上にいつもの様に二人座っている。
そしていつもの様に、“みなみ”はランドセルから巾着袋を出して苺みるくキャンディーを二個取り出す。
〈くるくる、くる〉っと包みを開けて
〈ガシッ〉と“ゆうや”の口に押し込む。
〈コロンコロン〉とキャンディーを転がしながら“ゆうや”は、手を“みなみ”ちゃんに〈グイ〉っと突き出す。
「ハア〜」っと、“みなみ”ちゃんは苺みるくキャンディーの包み紙を手の上に置く。
「“ゆうや”〜どうして包み紙を欲しがるのよ!ちゃんとあたしゴミ箱に捨ててるよ!もー」
「違うよ。僕はね、この包み紙を“みなみ”ちゃんとの大事な毎日の記念にとって置くことにしてるんだよ。だから大事なモノなんだよ。」
「お家に帰って、カンカンに入れてたまにね、数えるとね、なんか嬉しいんだ。」
「これ絶対秘密だよ!」
「もー、“ゆうや”そういうのは、1番秘密にしないといけない相手は、
あ・た・しなんだけどな〜。やっぱ男子はお子様よね。」
「どうでもいいから、行くよ!さ、立って!」
テクテクと二人は町の大通りまで来た。
〝みなみ〟は、煉瓦造りの高級そうなパン屋のガラス窓をジーッと凝視する。
ガラス窓には、小さな黒板が掛けられており、そこには
〈明日より先着早朝サービス!ワンコインで焼きたて
メロンパン二個と〝きゅんきゅんチェリー〟をどうぞ!〉
の告知。
ジーッと、ジーッと、ジーッと凝視終えて、
「さっ!帰るわよ!」と、クルッと踵を返し歩き始める。
「ワンコイン、ワンコイン、ワンコイン、ワンコイン。。。」
家に帰り着くまで〝みなみ〟の呪文のような独り言は続いたのだった。
メロンパンときゅんきゅんチェリージュース、手に入るかな〜。
みなみちゃんの願望は、いつもゆうやと一緒が前提。ほのぼのと温かいね。