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宴の引き合わせ。

 

 屋敷は大座敷のある母屋(おもや)の他に離れが七棟、大浴場に露天風呂のある大きな屋敷だ。

 “御君様” 一行は母屋の大広間で荷物を下ろすべく玄関から入って大きな廊下を歩いて行く。

 “ぬらりひょん爺” の心遣いで母屋の警護は畏れ組で行うので“ハクア” 警護の鴉天狗も一緒に中に入る。

 やっとゆっくり出来る。

 みんなの表情も和やかだ。

 いつの間にか“小豆小僧” も横を歩いている。

 昼間に会った時よりも背丈が伸びて小綺麗になった感がある。

 更にその斜め後ろに笠を被って両手で白い四角な物を大事そうに抱えている小僧が付いてくる。


 廊下の突き当たりに大きな横開きの襖が出迎える。

 見事な黒唐松(くろからまつ)が描かれている。

 襖の前にはほっこりとした表情の白塗り女中さんが二人立っている。

 腰に大きな鈴を下げている。

「おいでやす〜本日は遠方からのお客様がよ〜けお見えですね」

「黒唐松の間も大賑わいどすえ!」

 と襖の左右に立つ女中さんが「せーの」と力一杯で〈ぱーーん〉と襖を分け開く。


 襖の向こうには畳敷き100畳はあるだろう大広間が広がる。

 大広間の端は朧げに霞む程広い。

 真ん中には大きな楠木が見事な枝を四方に伸ばす。

 楠木の幹をの上を見上げると何と何と雲間を突き抜け星空の向こうに永遠と伸びている。

 摩訶不思議な光景。

 屋敷なのに大広間の屋根を突き抜け星空に向かう巨大な楠木。

 クスの薫りが大広間内を癒している。


 女中さんに招き入れられて大広間に入る。


 中は枡状(ますじょう)に仕切られていて彼方此方に団体が座りその間を白塗りの女中さんが走り回っている。

 空いている席は楠木の根元付近。

 案内されて“御君” 御一行も思い思いにに座る。


 女中さんが飲み物のオーダーを聞きにくる。

「先ずは歓迎の美酒、千年の(しずく)をお召し上がれ〜」と一人一人に盃を渡して注いでまわる。

 “ゆうや” 、“みなみ” 、“小豆小僧” にはちゃんと千年ソーダが注がれる。

 ちゃんとお子様は意識されている様だ。


 千年の雫は一献だけでも酔いがまわる様でみんな上機嫌で騒ぎ始めた。

 そんな喧騒な宴会の賑わいの中、楠木の反対側から歌が聞こえてくる。


徐州々々(じょしゅうじょしゅう)人馬(じんば)は進む 徐州居(じょしゅうい)よいか 住みよいか」

 酒落れた文句に 振り返りゃ お国訛りの おけさ節 ひげがほほえむ 麦畠


 友を背にして 道なき 道を 行けば戦野は 夜の雨

「すまぬ すまぬ」を背中に聞けば 「馬鹿を云うな」とまた進む 兵の歩みの 頼もしさ


 “ゆうや” 等、お子様組は興味を惹かれて楠木の反対側を覗きに行く。


大きなクスの大樹は瘴気を祓い、憩いをもたらす。

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