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小豆小僧

 

 小川の水際の砂利の所にしゃがんでいる男の子が居た。

 大きなザルを清流に浸して何かを一生懸命洗っている。

 手を動かすたびに〈ジャラジャラジャラ〉と音がする。

 何が入っているのか?もっとよく見ようと背伸びをしたら足が滑って〈バシャーン〉と音を立ててしまった。


 音に反応して男の子が振り返る。

 その顔は僕ら二人と同じ世代の男の子。


 キョトンとこちらを見ている。


 そして「見たな〜小豆は渡さないぞ!」と叫ぶ。


 小豆(あずき)…。

 妖怪あずき洗いだ!

 おおお〜あずき洗いだ!

 僕の方が興奮してきた。


 その筋では有名な妖怪だ。


「“みなみ” ちゃん!覚えているかい、僕がいつか妖怪の話を沢山した時に話したよ」

 “ゆうや” は、学年1番の図書館通いだったからあらゆる本の知識が満載。


 小豆洗いは確か…。

 人を脅かすのみで危害は及ぼさない。

 そうそう思い出してきた、試してみるかな。

 “ゆうや” はズボンのポケットに手を入れながらどんぐりを拾って入れた筈だけどな〜と想う。


 〈コロコロ〉と指先に感触が生まれる。


 やはりね。

 呑喰里(どんぐり)は出現した。

 ここは精神の力が大きく作用する。

 精神が、想う気持ち想像力が強ければそれは現れるかもと考えたんだ。

 どんぐりを1個ポケットから取り出してキョトンとしているあずき洗いのザルに放り投げる。

 〈ポトン〉とどんぐりはザルに入らずにあずき洗いの目の前に落ちる。

 とほほほほ、ほんと下手くそ…。

「“ゆうや”は運動音痴だからね〜」と“みなみ” ちゃんが呟く。


 でも効果はあった。

 “ハクア” が教えてくれたんだ、僕は想いの力が凄く強いから想いを形にする事が出来るって。

 小豆洗いは、落ちたどんぐりを嬉しそうに拾うとザルの中に入れた。

 ニコニコ顔でこちらを見ている。

 思い切って〈ズズッ〉近寄って直接ポケットのどんぐり全てをザルに入れる。


「うわぁうわぁ」と小豆洗いが小躍りして喜ぶ。


「お兄ちゃん、ありがとう!」

「どんぐり貰っていいの」

 意外に子供ぽい反応。

 妖怪だから齢は数百年単位だろうけど、心は子供…。

 いや童なんだろうね。


 兎に角その嬉しそうな童顔は、小六のお兄さんの僕には可愛い弟分に見えてしまう。


 その笑顔は邪心無き、童の満ち足りた気持ちだと分かる。

 見てる方も心が洗われる。

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