7
烏谷 杏優はロープで縛られ、布で口を塞がれていた。
今の状況は、見知らぬ部屋に拉致されている。
なんでそうなったかという記憶がない。
ただ目の前には、大型のモニターがある。
そこには、兄である扇と見知らぬ少女が映っていた。
部屋には、黒づくめの男達がいる。
そして、その中でトップそうな赤いサングラスをかけた40歳ぐらいの男性に1人の団員のようなものが話しかけていた。
「ナシャルターザ様」
「なんだ?」
「はい、やはり烏谷 扇はここで殺しておきますか?」
「無論だ」
「はっ!」
すると、指示を受けた団員は実行に移る。
無線機のようなもので機体全体にナシャルターザに確認した通り、烏谷 扇を殺す命令を出す。
すぐ様、沢山の機体が出ていく。
少年を殺すために。
杏優は、必死に暴れた。
しかし、ロープは取れない。
必死に兄が殺されないように訴えかける。が。
誰も気に止めない。
機体は沢山の容赦なく扇達に銃を向ける。
だが、扇を乗せた機体が動いた。
それでもこの沢山の機体から逃げるのは無理だ。
なんの根拠もないのにそう思ってしまう。
そして、
「やれ」
その瞬間、無数の銃弾が一斉に扇達に向かう。
数十分音は鳴り止まい。
モニターからは煙のせいで何も見えない。
杏優は必死に声にならない声で訴える。
「うぅぅうぅぁッ!!」
杏優は、瞳に涙を溜めていた。
こんなにもあっさり大事な人は終わってしまうのか。
世界はこんなにも酷い。
自分の1番を取るなんて。
こんなの許していいはずがない。
瞳から涙が頬を流れた。
溢れてくる。
どうしようもなくだ。
自分が捕まったから、兄──扇は殺されてしまったのか。
そう考えると、悔して悔して、許せなかった。
──その時だった。
「タイムレンジャーの機体の反応が完全に消えました。別空間に移動したようです。」
「違う時代に逃げたか?」
「いや、あの機体の壊れ具合からせいぜいワープがいいところでしょう」
「で、ワープ場所は?」
杏優分からない会話だが、1つ分かることがある。
それは、扇は生きているだ。
まだ、終わってない。
扇が生きているのなら、自分も頑張らないといけない。
自然と杏優は、今やるべきことを考える。
杏優は顔を上げた。
×××
冬花と扇は、機体──タイムマシンに乗った。
すると冬花は機体を動かした。
敵は、多数。
それにこの機体は壊れている。
タイムトラベルは行うことができない。
でも、機体は空に浮くことができる。
「これからどうする?」
「今から、適当にワープする」
「適当って......。場所はしっかり決めた方がいいんじゃないのか?」
「その通りね、でも座標とか入力していたからそれこそ蜂の巣よ」
敵は、多数の銃を向けた。
猶予はない。
早くどうにかしなければ......。
ワープをしなくてはいけない。
「くそ、撃たれるぞ」
「分かっている!扇くん、しっかり捕まってて!!」
この瞬間、敵は迷うことなく弾丸を発射させた。
でもこれより早く、冬花が。
「ワープ!!」
ボタンを押した瞬間、冬花の機体はその場から消えた。
×××
ナシャルターザはただ座っているだけ。
部下なのか、団員のような輩が勝手に進める。
「タイムレンジャーが使ったワープは、ちゃんとした演算なしに行った可能性が高いです」
「つまり、どういうことだ?」
「はい、ちゃんとした演算をしなかった場合のワープ場所を演算すればいいかと」
「分かった、やれ」
「はっ!」
30秒かからないくらいで演算は終わった。
演算の結果、今扇達がいる場所が分かったようだ。
するとワープ準備にかかる。
何やら、キーボードのようなものでモニターに打ち込んでいく。
直感で、杏優はこのままではいけないと思う。
ロープで拘束されているが、立ち上がれる。
壁に寄りかかりながら立つこと出来るのだ。
キーボードに打ち込んでいる団員目掛けて、体当たり。
団員はバランスを崩し、床に尻もちをついてしまう。
それが逆鱗にふれた。
団員は立ち上がり、杏優の胸ぐらを掴み殴った。
頬の辺りだ。
出血さえないが、赤くなっている。
「ふざけんじゃねぇーぞ!!」
団員は吠え、まだ殴りそうな雰囲気だ。
だが、他の団員が止めに入る。
ナシャルターザも、「止めろ......」と制止した。
団員もそれで我に帰ったのか何とか制止する。
団員は謝罪の言葉をナシャルターザにすると今度こそワープの準備に入る。
「ナシャルターザ様、ワープ準備が整いましたが、この機体はワープにエネルギーを使いすぎますので小型を向かわせた方がいいかと」
「それで良い」
「はい、ではナエート隊を向わせます」
「あぁ」
会話が終わると何処かに指示を出しワープに入った。
杏優は泣いていた。
痛かったからじゃない。
扇は結局守ることができなかったからだ。
自分に力がないことが悔しい。
涙が止まらない。
×××
「何とか、逃げることに成功ね」
「あんなに銃弾撃たれて死んだと思ったわ」
「ワープが間にあって良かった」
2人は何とか逃げることができたことに安堵していた。
すぐに体制を建て直し杏優を助け出さなければならない。
その時だ。
多数の黒の機体が現れた。
そうワープだ。
相手も使った。
「こんなに早く場所が突き止められるなんて、相手の演算機は性能がよすぎる」
「つまりなんだ?」
「どんなにワープしても無駄ってこと」
「じゃどうする?」
「......」
思いつかない。
壊れている機体じゃ普通に逃げても無駄だ。
普通なら違う時代に逃げるのだが、壊れたこの機体じゃできない。
(どうすれば......)
相手は、敵は待ってくれない。
攻撃を開始する。
全機は銃の準備。
一斉に銃弾を乱射する。
ワープして1度逃げようとするができない。
何とワープ機能も壊れたのだ。
容赦なく撃たれた。
できるだけ、被害が拡大しないようし、機体のダメージを少しでも無くす。
だが、機体はもう浮くこともできない。
機体は下に落ちていく。
「扇くん、近くの山に落ちるから衝撃に備えて」
「マジか!?」
「大マジよ!」
冬花達の機体は無残に落ちていく。
×××
機体はもう動かせない。
完全に壊れたのだ。
モニターにも『機体の損傷100%』と表示された。
冬花は左手に銃を持ち、そっと機体から出る。
その後を扇はついて行く。
辺りに敵がいるかもしれない。
「なぁ、これからどうする?」
「味方が来るまでやり過ごすしかないと思う」
「それしか......ないか」
機体を捨て、ここからは隠れることに専念する。
冬花は、烏谷 扇を守るこれが今やるべき事だ。
「いたぞ!!」
この一声が窮地に送り込む。
敵だ。
1人の団員に見つかったのだ。
すると、何か分からないような機器で何処かに連絡を取る。
冬花はその団員を迷わず手持ちの銃で撃った。
「グァ!」と言うよな悲鳴を上げ倒れた。
急いでその場から離れるが、次から次から敵が現れる。
敵は陣形を組んで完全に殺しに来ている。
5人1組だ。
全員、銃を所持している。
数分後、完全に囲まれてしまった。
冬花は、左肩も撃たれて銃さえ、いや何も掴めなくなってしまった。
扇は、降参する。
手を上げて懇願するかのように敵を見た。
「頼むこいつ(冬花)だけは助けてくれ......」
「ダメだ、俺達の計画を知った以上死んでもらう」
冬花は、最後まで諦めない。
「あなた達は終わりよ、これからタイムレンジャーが来るから」
「それは、何か信号のようなものでも送ってんのか?」
「えぇ、そうね。だからどうしたって言うの?」
「あのな、バカか。俺達はそんな自体になんねぇように妨害信号を送ってんだよ。ここまでいえば分かるよな」
団員は笑っている。
それも不敵に。
冬花は、両目を大きく開き嫌な汗をかいた。
「まさか、未来に届いてない......」
「せーかーい!」
いつまで経っても冬花の仲間は来ないという事だ。
団員は、他の団員に指示を出す。
「ナシャルターザ様に任務完了と伝えてくれ」
「はっ!」
銃を向けてくる。
外れないのように、しっかりと額に付ける。
これで狙いを定めなくてもいい。
扇は叫んだ。
「こんなの認めてたまるかよ!!くそー、くそが!」
「うぜーよ!」
顔面を蹴られた。
それでも止まらない。
必死で叫ぶ。
冬花は両肩が使えないのに関わらず、抵抗を続ける。
団員はうっとしいと言わんばかりに目を細めた。
そして、
「早く、くたばれよ!」
その瞬間、その場を銃声が支配する。
2つの銃声。
静寂な山の中で響き渡った。
次の投稿は、5時です。
よろしくお願いします。