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冬花は未来について語り始めた。
まず、自分がタイムレンジャーであること、過去に行く途中に襲われたこと、未来のルールについて必要なことを全て喋る。
でも、扇が信じてくるとは限らない。
もしかしたら、ここでの話を誰かにされてしまう。
そんな心配に襲われるが少年は鼻を鳴らす。
「よし分かった信じる」
「ぇ......信じてくれるの?なんで......?」
「だってその方が格好いいだろ」
冬花は予想外の言葉が来たことに驚きを隠せなかった。
普通なら安心するような声音で、納得できるような理由を言うのではないだろうか。
それなのに、扇はただ格好いいという理由だけで信じるのだ。
全く、呆れて物が言えない。
「扇くん、あなたってほんと馬鹿なのね」
「馬鹿じゃねーよ、天才だよ。それに、実際にこの機体で未来に連れてってくれればもっと信じれるぜ」
「生憎、この機体は壊れて未来や過去に行き来できないの。それに、そもそも過去の人間にタイムトラベルを行ってはならない決まりになっているの、残念だけど」
扇はつまらなそうな表情だった。
さっきまでの扇の警戒が嘘のように晴れたのを実感する。
けど、本気で話す相手を間違えたと考え込んでしまう。
気を取り直して、次にやるべきことをする。
「ねぇ、扇くん今度は近くのホームセンターまで案内して」
「どうしてだ?」
「これを見て」
すると機体のモニターの画面を起動させ、『sos信号』と書かれていた。
「見ての通り、これを未来のタイムレンジャーの本部に送ることで助けが来るって仕組みなんだけど、これ空間で襲われた時に壊れたみたいなの。だから、修理する必要があって、でもそのための道具がないってわけなの」
話は理解した。
修理するために必要な道具をホームセンターで揃えたいという事だ。
でも、扇は疑問がある。いや、できた。
「この時代の道具で、お前の機体は直せるのか?」
「確かにタイムマシン自体を直すことできないけど、『sos信号』ならただ部品のネジとかを変えるだけ直せるってわけ」
「そうなのか......」
口ではそう言うものの頭では恐らく理解していない。
扇はそれでもホームセンターに連れていくことを了解する。
だが、思い出したかのようにまた口を開いた。
「あっ、でも、俺金ないから部品とか買えないぞ」
「それなら、大丈夫。私、この時代お金持ってるら」
「なーんだ、準備いいな」
そのお金は、冬花が過去に旅立つ前に井上という先輩から貰ったものだった。
まさかこんな所で役に立つとは思っても見なかった冬花。
この時ばかりは井上に感謝した。
2人は1度機体から出ると、冬花はまた機体を透明化させた。
未来のテクノロジーには驚かされる扇。
無意識のうちに口を開けてしまった。
だが、冬花には当たり前の出来事なのだろう。
どこか覚めた様子でつまらなそうに口を開いた。
「じゃホームセンターまで案内よろしく」
×××
2人はホームセンターまで歩いていた。
耳元に、扇、冬花はハンズフリーのような物を付けている。
これは、海を出る前に冬花に渡された物。
最初に言っておくハンズフリーではない。
『これ本当に凄いな、心で話せるってやばいな』
『まぁ、半径3メートルまでなんだけどね』
『それでもすげーよ、で名前何って言ったけ?』
『テレパス・ハート・サイエンス。略して「THS」よ』
名称を答えてくれるがどこか冷めている。もしかしたら、未来では携帯のように当たり前のものなのかもしれない。
2人の会話に出てきた『THS』とは、脳から発生する信号を意志に変換させ、その意志を言葉として耳に音声を届けると言ったものだ。
つまり、心で思ったことを相手に伝え会話ができるというものだ。口から声を出す必要は一切ない。
この技術は、西暦2119年にできるものだ。
なぜ、冬花がこれを使っているかと言うと、歩きながら話す内容には聞かれてはいけないことも含まれていると考え、今に至っている。
扇は歩きながらたわいもない話を始めた。
『そう言えば、俺って未来とかで有名になってねぇーの?』
『いきなりなんなの?』
『いや、たださ、俺将来どんな偉大な人物になってんのかなって』
『偉大な人物になっている確信はどこから来ているの!?』
驚きを隠せないかった。
同時に呆れてもしまう。
何とか気を取り直して、扇の質問に答えていく。
『未来の情報は原則言えないの、言えばそれだけで未来が変わる恐れがあるから』
扇は、残念そうに下を向いた。一応納得はしたみたいだ。
未来のルールなのだから仕方がない。
それにだ。
(烏谷 扇っていう有名人はいないなぁ、でも、確か烏谷っていう女性でとても有名人はいたな。まぁ、関係ないけど)
と。どうでもいいことを思った。
2人は歩いているとホームセンターが見えてくる。
このホームセンターは扇の街で最も大きい所だ。
地域の住民はもちろん扇の家族もよく着ている。
ホームセンターの中に入ると冬花は迷うことなく、『sos信号』を治すための道具を揃えていく。
手短に選び、レジで会計をした。
もっとゆっくりでもいいのでは、扇はついそう思ってしまう。
冬花はできるだけ人目につきたくない。
だから、早く目的を終えようとしたのだ。
冬花はレジ袋を片手にホームセンターを出た。
それをついて行くかのように扇は歩く。
先程の海の場所まで戻る。
『THS』で冬花に話しかけた。
『なぁなぁ、「sos信号」をやればどのくらいで未来から助けがくんだ?』
『だいたい半日くらいなはずね。なんで?』
『うん?いや、お前とももう少しでお別れだって思ってな。ほんと短い時間だけど一緒にいたから、バイバイすんのが悲しいのかな』
扇自身もよく分からない感情。
昨日出会った少女。
冬花とは、友達でもない。恋人でもない。家族でもない。それでも、何か思うところがあるようだ。
けど、仕方がないことなのだ。
もともと、未来人である冬花は、扇と接触してはならい。そう決まっている。
だから、どうしようもないのだ。
未来から助けがくればもう2度と会わないのだろう。
冬花はそう思った。
『扇くんはいつも通りの日常に戻るだけよ。すぐにこの時のことは忘れるわ』
『そんなものなのか......』
『......』
冬花は答えない。
しっかりとした回答を持ち合わせていないからだ。
いや、どう答えらいいのか分からないからだ。
海までの道を歩いていると、前の方に人影があった。
人影に近くなるに連れて入ってくる情報がある。
1つ、その人影は男性だ。
2つ、その人影の瞳はなんとなくだが扇の方を見ている。
3つ、何だか雰囲気がおかしい。
そして、いきなり口を開き始めるのだ、その男性は。
「あなたは、烏谷 扇さんですよね?」
「そうだけど、それがどうした」
いきなり名前を聞かれ、体が固まってしまったがすぐに気を取り直して目を細めながら会話を始める。
「それはよかった」
場の空気が変わってしまう。
男性は、確認し終わると不敵に笑う。
自然と、扇も冬花も身構えた。
「何がよかったんだ!」
「世界を手に入れたと同然だからですよ」
理解できない。
これは扇だけではなく、冬花もだ。
男性は補足するかのように付け足す。
「と、言ってもあなたを、烏谷 扇を殺せばですがね」
男性は笑っている。
そう、不敵に笑っている。
恐怖。
この一言で説明がつく。
嫌な汗が扇の額を流れる。
今の話を聞いてもいまいち納得できない。
「はぁ!?俺を殺して世界が手に入るだって、アンタ狂ってんのか?」
「理解できないのも無理はない、あなたを殺せば、あなたの妹さん、烏谷 杏優が世界を手に入れるためのマシンを作る。そうすれば、我々世界を手に入れることができるのです」
男性の瞳は狂気で満ち溢れている。
この場から離れたい。
逃げたい。
この思いが一段と強くなった。
男性は口を開く。
「もう一度言います、あなたを殺せば世界が手に入る。だから、ここで死んでください!!」
男性は言い終わるとまた笑った。
表情は笑みで溢れている。
どうすればいい。
そう思った時だった。
「タイムレンジャー所属、春野 冬花。あなたを過去改変罪の疑いで拘束します」