1
西暦3000年。
人類はついに、『タイムマシン』を開発した。
この発明により、これまで人類が謎としてきたことが明らかになり歴史は大きく変わったのだ。
だが、いつの時代にも悪用する者はおり、歴史の流れを改変してしまう事態が起きてしまう。
この事件を『パラレル』と名づけられた。
名の由来は、存在する歴史と新たに存在する歴史との間に別の空間が出来てしまったことが理由。これにより、世界はタイムマシンの破棄をしようとしたが、時は既に遅し、悪用した者達は過去に逃げてしまったのだ。
元の世界を取り戻すために動き出した者達がいる。
彼らを、
『タイムレンジャー』
と呼ぶ。
彼らは、時代を遡り、歴史改変をしようとする者達と戦っていく。
それが彼らなのだ。
×××
ここに1人の少女がいる。
名を。
『春野 冬花』
という。
少女の歳はタイムレンジャーの中でも1番若く、16歳だ。
少女は白銀の腰まである髪を人差し指で触りながら、銀色に輝いている球体状の鉄なのかそれとも違う物質なのか分からない機械を眺めていた。
「いよいよ明日、タイムマシンに乗れるんだ」
嬉しそうにさくらんぼ色の頬で微笑んでいると、足音が聞こえる。
振り返ると、冬花よりも3つ年上の男性。
『井上 永瀬』
という名の先輩が来ていた。
冬花は首を傾げながら質問する。
「何かようですか、井上先輩?」
「初めての任務にあたるお前に差し入れでもと思ってな」
「えっ!?差し入れですか、もしかして私が好きな星野屋のメロンパンですか?」
「変な期待を持っているようだけど、違うからな」
冬花は目を輝かせながら言っていたが、井上は申し訳なさそうにその期待を裏切った。
少女は分かりやすぎるくらい肩を落とし落ち込んだ。
少し口を膨らませながら、
「じゃあ、なんだっていうんですか?」
「何で、若干キレ気味なの!?まぁいいや、ほらこれだよ」
井上は封筒を渡した。
中身を確認するために、冬花はハサミで封筒を切り開けると、中には紙切れが10枚とそれぞれ種類が違う丸い金貨、銀貨、銅貨。
これらの物に、少女は心当たりがある。
「私知っていますよ、これ昔の日本のお金ですよね。この紙切れが、1万円札でこの硬貨が500円玉、100円玉、10円玉ですよね。でも、なんでこんなのが差し入れなんですか?」
「もしかしたら、トラブルで過去から戻れなくなるかもしれない、そんな時のためにこの昔のお金で生きてくれというわけでこれが俺からの差し入れだ」
後輩思いの先輩。
一瞬、そう思ったが、疑問が湧いてくる。
「でも、先輩。過去の物とか口にしたら、処罰に当たりますよ?」
「大丈夫、大丈夫。バレなければ、罪にならないから」
「なんかそのセリフ、悪党が使うものですよ。井上先輩」
井上は論破にかかる。
「考えてみろ、過去から戻れなくなって、その期間が1週間なら、その間何も食べてはいけない、風呂にも入ってはいけない、そして何より1人だ」
「確かに耐えられませんね......」
想像してみたのだろう。
冬花は嫌そうな表情で、井上の考えに賛同してしまった。
こんな悪の考えに賛同するなんて全くもって恥ずかしい。
それにだ。
歴史を変えている悪党と別に変わらないではないかと思ってしまう。
そんな冬花の考えを見抜いたのか、井上は「でも」と口にし、
「俺達は誰も悲しまないように歴史を守るんだ。だから、悪党は違う」
「はいはい、急に真面目なこと言わないで下さいよ。ほんと先輩は真面目なのか不真面目なのか分からないですね」
「そんなの決まってるだろ、俺は大真面目だよ」
鼻を鳴らして笑う井上に、少し呆れながら嘆息をした。
×××
ついに、今日冬花はタイムマシンで過去へと向かう。
初の任務だ。
と言っても最初のうちは、過去の調査などの簡単な任務だ。
冬花はタイムマシンに乗り込み、エンジンを動かしていく。
エンジンがかかると、タイムマシンは少し振動するが直ぐに収まる。
次に、行き先とその時間を設定していく。
「後は、この青いボタンを押すだけね。ポッチと」
すると、タイムマシンは突然消えてしまう。
どこまでも青い空間が広がっている。
暗い青。
こんな所にずっといたら頭がおかしくなりそうだ。
でも、直ぐに過去に行ける。
そう思っていた時だった。
『後方に機体確認』
いきなり、モニター表示され、後方の映像を映し出した。
モニターに映し出された機体を確認する。
「これはタイムレンジャーの機体じゃない。まさか......」
嫌な汗が流れた。
ゴクリと息を飲み込み吐き出すかのように言う。
「犯罪者!?」
その機体は、黒くどこまでも汚れているかのように錯覚してしまう。
冬花のやる行動はただ一つ。
タイムマシンを回転させ、後方の黒いタイムマシンと対面するようにし、スピーカーのボタンをONにして、
『そこの機体一時停止しなさい。繰り返します、そこの機体一時停止しなさい』
これで停止してくれれば有難いが、そうはいかない。
黒いタイムマシンは停止するどころか、攻撃の体制はいる。
左右から銃を出すと冬花の機体に向けて乱射する。
命中するが、それはバリアにだ。
冬花は、黄緑色の丸い球体のようなバリアを機体に覆い、防ぐ。
『止めなさい、さもないとこちらも攻撃に移ります』
冬花は忠告すると、相手は逆に挑発するかのように冬花の周りを回り始めた。
回りながら、銃を乱射していく。
バリアで防いでいるがいつまでももたない。
冬花は、攻撃体制とタイムレンジャーの本部に応援要請のための赤いボタンを押す。
(バリアが突破されたと同時に攻撃を仕掛ける!!)
冬花は訓練では、戦闘経験があるものの実戦初めてだ。
それに今、攻撃している相手は、慣れているように思える。
いや、慣れているのだ。
でも、やらなければならい。
額から汗がこぼれ落ちた時、バリアは突破された。
冬花の機体からも銃を出し攻撃していく。
狙いを定めて、撃つ。
そして、相手の攻撃もかわす。
その繰り返しだ。
この空間に障害物が無いことから、隠れる場所もない。
だから、勝つしかないのだ。
冬花の戦いはまだぎこちなさもあるが、新人としては上手く、相手の機体と互角な戦いを繰り広げていた。
このままいけば、もしかしたら勝てる。
そう、確信した時だった。
真後ろから黒い機体が現れる。
前の機体と似ていた。
この瞬間、ある考えがよぎる。
(あの機体の仲間......!?)
その機体も銃を出すと、冬花の機体に襲いかかってきた。
2対1。
形成がさらに不利になり、2台の機体にいいように撃たれまくる。
かわそうにも、一台かわせばもう1台に追撃されるという悪循環だ。
冬花は、奥歯を噛みながら、機体を操縦する手に自然と力が入ってしまう。
「このままじゃ、機体が持たない。どうすれば......」
『機体損傷68%』
モニターに警告としてその数字が映る。
冬花は、勝てない。
それに本部からの応援もないのだ。
応援を待っていれば確実に、やられてしまう。
なら、撤退するしかない。
(みすみす、犯罪者達を見逃すなんて......。でも、今は撤退しないと......)
冬花は、自分の機体の銃をしまうと、機体を綺麗な球体にすると、機体についてあるレバーを最大限上げる。
すると、機体全体が強烈な光を出し、空間を照らしていく。
とまこまでも暗い青が嘘みたいに、明るくなる。
相手の機体は光の影響で、動きを止めた。
光が無くなると、そこには冬花の機体も無くなっていた。
2台の機体は辺りを確認するが、やはり冬花の機体は無くなっている。
楽しんでくれると嬉しいです