バレバレ。
数日経った。
寝る前にあの店員さんが頭に浮かぶ。
いや、暇さえあれば浮かぶ。
そのたびに心臓がギュッとなる。
んー、心臓っていうか・・・
もう少し奥?
わからん。
無理に寝ようとすると余計に寝れない。
苦しい。
痛い。
――――――――
「瑛ちゃーん、はやく起きなさい!」
「瑛ちゃん言うな」
なんて言う元気もない。
寝不足が続いている。
「ほら、はやく食べなさい」
ねみぃー・・・
だらだらとイスに座る。
紅茶が入ったマグカップに手をのばす。
のばされた手のすぐ隣には小さな花瓶があった。
・・・?
視界にすべてを映し出す。
いつもはないはずのものが、そこにはあった。
「花・・・」
向かいの席に座っていた母さんは、俺を見て微笑んだ。
「あら、気づいてくれたのね。たまには花でも飾ろうかと思って。
少し家から遠いんだけど、良い感じの花屋さんがあるのよー」
・・・。
俺は部屋に戻り、ある物を取って母さんに見せた。
「もしかしてこの花屋?!」
あのとき渡されたタオル。
店の名前が刺繍されている。
「え、そうだけど・・・なんでそんな物?」
あ、やべぇ。
「いや、これはその・・・べ、別に・・・」
「別にって何よ、その店に行ったの?」
「まぁ、ぼちぼち・・・あ、いや・・・」
よくわからない、といった表情をされた。
少し笑われたが、深くは追求してこなかった。
――――――――
「・・・なぁ」
「ん?」
レオは雑誌から俺へ目線を移した。
「・・・笑うなよ?」
俺の言葉に何かを感じ取ったのか、雑誌をとじた。
「えっと・・・前に話した人いるじゃん」
「んーと、花屋の?」
「そう、その人・・・」
少し間があった。
「好きかも。」
搾り出すような声で俺は言った。
するとレオは目を見開いた。
そして、待ってましたと言わんばかりに手を握ってきた。
「だろ?!やっぱそう思ったんだよ!」
おい。
声がでかい。
そしてこの図は怪しまれるぞ。
俺は手を払いのけた。
「つか、思ってたのかよ」
「だってお前、あの話してから考え事してたじゃん」
思ってたけど言わなかったのは、自分で気づいてほしかったから、だと。
「でもまだわかんねぇよ?」
「へ?」
「考えると心臓痛くなってドキドキするだけだし」
俺の言葉にレオは爆笑した。
「はっはっはっ、お前っ・・・昭和初期かよ(笑)」
「なっ・・・?!」
古いってことか?!
そんなことより!
「わ、笑うなって言っただろ!」
「うんって言ってないもーん」
くそっ
しばらく睨んでやった。
レオは呼吸を整えて俺を真っ直ぐ見て言った。
「それって好きってことだぜ」
怒りは消えた。