梅はうめぇぞ。
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「おいおい!まじかよ!」
目を丸くしたレオが大声を上げた。
「うるせーよ、バカ」
「いやいや!だってすごいじゃん!」
俺が女の話するのはそんなにすごいか。
「良い人だったなって・・・そんだけだよ」
「お前が女を褒めるの初めてじゃん?」
「ったく、大げさなんだよ」
チッ、言わなきゃ良かったぜ・・・
でも言いたくて仕方がなかった。
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「ねぇ、瑛斗くんって何で彼女つくんないの?」
声の主は同じクラスの女子だ。
「何で」って何だよ。
「・・・何でだろうな」
「えー、何それぇ、好きな子いないの?」
好きな子・・・
・・・!
俺は固まった。
頭の中にあの人が浮かんだから。
花の話を楽しそうにするあの店員さんが。
笑った顔が胸を締め付ける。
・・・?
「ねー、どーなの?いるの?」
女の声で我にかえった。
「・・・い、ない」
「あやしー!」
キャハハっと笑って女はどこかへ行った。
心臓が、はやい。
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お昼。
「んー・・・」
俺は考えていた。
片手に梅おにぎりを持って考えていた。
「瑛斗ー?さっきからどうした?」
レオの声も耳に入らない。
「きゃー、見て。王子が梅おにぎり食べてる!」
「どこどこ?あ、ホントだぁー!」
「ちょー可愛いんだけど!」
女子の声はもっと聞こえない。
「おにぎり食ってるだけで騒がれんなよ(笑)」
レオは俺の頬をペシッと叩いた。
「・・・あ、またボーっとしてた」
なんか俺、変だな。
「んー?具合悪いのか?」
「いや・・・それはない、はず」
レオは黙って俺を見た。
すんごい見た。
「・・・何だよ」
我慢出来ずに聞く。
「・・・はははっ、いや、何でも」
なぜ笑う?
「面白ぇなー・・・お前」
「・・・は?」
「あー・・・どうだろ?いや、合ってるはず」
ぶつぶつ言ってるレオはほっといて、おにぎりを食べた。
あー、梅うめぇ。