雨宿りとバラ。
高校生の男が1人で花屋なんて・・・
最初はそう思ったが、入ってみると平気だった。
キレイにレイアウトされた店内。
花の良さを更に生かしてると思った。
「・・・キレイだな」
真っ赤なバラが目についた。
花のことはよく知らないけど、バラぐらいは知ってる。
「バラ、好きなんですか?」
声がした方を見ると店員さんらしき人。
「あ、いやあの・・・キレイだなって」
最近、女の人に話しかけられると焦るな・・・
店員さんは、ニコッと笑った。
なんだか心臓らへんがギュッてなった。
「・・・あ、ちょっと待っててください」
店員さんはスタッフルームに入っていった。
なんだ・・・?
戻ってきた店員さんの手にはタオル。
「外、雨すごいですね、これ使ってください」
「あ・・・ありがとうございます」
俺の制服が濡れてるのに気づいたらしい。
「いえいえ、ついでに花も見ていってくださいね」
え?
「あの、花を見に来たんですけど」
まぁ、ついでだけどさ・・・
なんかただ雨宿りに来たと思われるのが嫌だった。
店員さんは焦った。
それはもう顔面蒼白。
「す、すみません!」
そんなに焦らなくても大丈夫だけどなぁ。
「やっぱ僕みたいなのって珍しいですよね?」
「あ、はい・・・高校生の男の子はあまり」
なんか恥ずかしくなった。
「あ、本当は雨宿りしてただけなんですけど、
母の誕生日が近いので入ってみたんです」
なぜかバラす俺。
「そうなんですか、優しいんですね」
店員さんの安心した様子と笑顔にまた胸が苦しくなった。
それからしばらく花の話を聞いたりした。
雨はすっかりやんでいた。
「あの、タオル洗って返します」
「え、いいです!わざわざそんな!」
「いえ、あの・・・また来る予定なんで」
「いや、でも・・・」
「あ、洗わせてください」
なんだ俺。
「あ、えっと・・・じゃあお願いしますね」
負けたー、という感じの店員さん。
八重歯が可愛い。
ドアのほうに歩きながら彼女は言った。
「いつでも雨宿りしちゃってくださいね」
「いや・・・雨宿りだけは・・・」
普通迷惑じゃないか?
「いいんです。ここを選んでくれただけで嬉しいですよ」
この人、良い人だ。
なんか、わかる。
嫌味のない優しさ。
チリン
「ありがとうございました」
なんか俺、ドキドキしてる。