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反政府組織のアジトに潜入する方法

しょっぱなからまた色っぽい展開。そう、ヒロイン嬢の再登場です。

「やあぁぁん、みないでぇ」


あれ、デジャヴ?

冷や汗をだらだら流す私は、開きかけた扉をそっと閉めようとする。


リトの遠慮皆無な鷲掴みから解放された人に、見覚えがあると思った。

だけど、誰か思い出せなかった私はリトと前に話し合った設定通りに振るまう。

つまり『自分の感情に素直でいつも通り暴走気味な兄』から、顔を鷲掴まれたままぷらーんと意識を飛ばしそうになっていた人物を慌てて救い、話を聞いてみる『冷静な弟』という行動を取ったのだ。

本来の性格と行動に限りなく近い設定なので、違和感なく出来たと思う、たぶん。


内心、いつも以上に暴走している『兄』に動揺しながらも普段通り大人しい『弟』の設定を守る私は、ちょっと苛立っている様子のリトの後ろで話を聞く。別に人見知りの設定はないはずだが、彼の背中から出してもらえないので仕方がない。

ベッドサイドから眼鏡を取って来て顔に掛けた私は、長い前髪で目元を更に隠しながら黙っていた。


そして私は黙ったまま、宰相の家から次の職場を紹介されずに解雇された哀れな兄弟として、次の職場を紹介されたのである。見ず知らずの他人に。

…怪し過ぎないだろうか。


先程までリトに顔を鷲掴みにされていた人物は、自信がなさそうに身体を小さくして私たちの返事を待っている。どうやら、今すぐに返事がほしいようだが、これだとリトと話し合えない。

彼は反政府を掲げた組織に属していると言うが…こんなものすごく自信がなさそうだ。正直、騙されて人身売買組織の手先に使われているんじゃないかと心配になるくらい、挙動不審である。

そんな相手に仕事を紹介されている私も、かなり不安になる。


自信なさげな勧誘者と、不安な私の間に挟まれたリトはと言えば、彼は従来通りの態度でしばし黙ってから快い返事を相手に返した。ウソ臭い笑み付きで。

私は驚愕した。怪しい話に簡単に乗ってしまう彼に、警戒心を問い質したくなる。


…まあ、そんな態度を快い返事をもらってよろこぶ相手に見せるわけにも行かず、たった半日で次の職にあり付けた私たちはその足で組織所有のアジトへと足を踏み入れたわけなのだが。


「ひん!やめて、やめてよぉ。おかしくなるぅ~~」


聞き覚えのある嬌声に、私の頭がおかしくなりそうだ。

おかしいな、反政府組織のたぶん使い捨てのアジトの一つに案内されたと思ったんだけど、間違えてしまったのだろうか。そそっかしいなぁ、アハハ!とか、言えない空気が隣から流れて来る。

もちろん、発生源はリトであった。


「おい、お前ふざけてるのか?」


地を這うような低い声でリトは、ここまで案内して来た少年?に鋭い視線で問い質す。私たちは幹部の人のお目通りを受けないといけないからと、アジトの中でも一番豪華な部屋へと向かったのだが、向かった先がこれである。

普通に『お取込み中』であった。

『ほう・れん・そう』は基本だろうに、きちんと今から向かうことを話していなかったのだろうか。しかも、現段階は部外者である私たちを連れているにも関わらず。

もし、ここが本当に反政府組織のアジトだった場合、こんな警備態勢で大丈夫だろうかと心配になってしまった。


「こうして部外者な私たちが自由に移動出来る範囲で、一番無防備になってしまうようなことに及ぶなんて…と呆れるのと、部外者が素通り出来るなってない安易な警備体制に呆れてしまいます。こんなところに、大切な兄さんを置いておくのは私も不安です。本当にふざけんなです」


「…………」

「…………」


二人が沈黙するせいで、開いてる扉の中から聞こえる嬌声が鮮明になってしまう。慌てて閉めたせいで、閉まる音が意外に大きくなってしまったが、それについて二人が注意することはなかった。

ちなみに、中から誰かが出て来る気配はないから、どうやら熱中し過ぎて気付いていない模様。良いのか悪いのか、判断に困る。


「勘違いしてるけど、可愛いから許す」


「?」


よくわからないが、リトの不機嫌な様子は鳴りを潜めた様子。よかったよかった。

それにしても、こうも簡単に推定・反政府組織のアジトに潜入出来て良いのだろうか。本当に、他人事ながら心配になってしまった。

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