マリージア編
「うん。大漁大漁」
目的の魔物を大量に討伐出来てボクはホクホクだ。
昨日、冒険者ギルドで得た魔物の情報を確認したら、ヤッパリと言うか他にも気になる魔物がたくさんいた。
シーサーペントやクラーケンをはじめ、クラッシュルと言う名の十メートルを超えるカジキマグロの魔物に、ヘルベルクルと言う名のフグの魔物、それにキル・シェルと言う名のアワビの魔物。
うん。どれもBランク以上の魔物でどれもとっても美味しいんだよ。
とは言え今日の獲物はカニとエビ。ルビー・クラブとアイシクル・ロブスターって言うどちらもAランクの魔物。
どっちも10メートルを超える大きさでしかも、それぞれ30匹以上も確保できたから、どれだけ食べてもしばらくはなくならないね。
幸先良く大量ケット出来てラッキーだよ。
今日はこのカニとエビをいろんな料理にして楽しんで、多分明日以降さらに追加で狩に来ると思うよ。
後、他にもこのあたり一帯に居た魔物は全部キレイに狩り尽して、全て回収してあるから、そっちの方も楽しみなんだよね。
「おっ、カジキの群もいるね」
今日はもう十分過ぎるくらい魔物を倒したし、そろそろ戻ろうかなって思いながら探知魔法で探索すると、200キロほど離れた場所にクラッシュルが群をなしている。
数はうん。50匹いるね。
クラッシュルもA-ランクの魔物なんだけど、それが50匹か。
ルビー・クラブとアイシクル・ロブスターの時にも思ったけど、少し数が多すぎるかな?
Aランクの魔物がこれだけの数群れているんだから、騎士団が討伐に乗り出していないのはむしろおかしいんだけどね。
魔物の侵攻を食い止めるために防衛都市を中心に魔域にまでシッカリとレーダーで魔物の探査をしているハズだし、A・Bランクの魔物の動向となるとかなり優先的に調べられて、即座に軍お騎士団が動いて討伐できる体制が整っているハズなのに、数十匹単位の群がこうして連続で討伐されずに残っているのはちょっとおかしい。
考えられるのは・・・・・・。
「魔物の出現が活発になっているのかな?」
多分そうなんだろう。つまり、今日は何時もよりも魔物の出現数が極端に多くて、軍や騎士団による魔物の殲滅が追い付いていないと。
だけど、どうして今日に限ってそんなに魔物の現れる数が多いのかね?
と言うか、ボクがこの国に来たと思ったらイキナリなのも気になるんだけど・・・・・・。
なにか面倒な事になっていたりしないよね?
なんて思いながらもシッカリとカジキを狩りに行く。
イヤ、カジキは美味しいんだよ。脂ものっているしね。新鮮なのは実は刺身でも行けたりするし。
倒し方は凝縮圧縮した氷の針で脳天を撃ち抜く。すると一瞬で脳が瞬間凍結。はい。即死ですね。
あっ、言っておくけどコレって結構難しいんだよ。
威力が足りないと弾かれちゃうし、逆に威力が高すぎるとせっかくの獲物を粉砕してしまいかねないしね。
と言うか、このカジキの皮、普通に厚さ5センチのチタン装甲よりも固いし、貫くだけでも大変なんだよ。
ルビー・クラブの甲羅になるとその比較じゃない硬度だけどね。だって普通に戦車の装甲とかに素材として使われたりするしね。あと、建材にも使われるよ。
その名の通りにルビーの様に輝く殻は建材にするとそれは美しくて、また強度も高いから長持ちするんだよね。
まあそれはどうでも良いかな。
それよりも、今は魔物の動向だよ。
探知魔法の範囲を広げて、半径1000キロ圏内の魔物の動向を調べてみる。
うん。居るわ居るわ。A・Bランクの魔物が5000匹以上いるね。その上、Sクラスの魔物まで居るよ。
んー。これはさっさと退散した方が賢明かな?
多分、既に王とから追加の増援部隊が到着して、魔物の殲滅作戦が竜騎士団込みで展開されるだろうし。
そうなると、迂闊に残っていると巻き込まれる危険性もあるし。
だけどいくつか気になる魔物が居るんだよね。メイン・ターゲットのマグロの魔物とか。
しかも、100匹近い群をつくっているんだよね。アレを殲滅したらそのままガッツリ手に入るよ。
1匹あたり20メートル近い巨体だから、100匹分もあれば・・・・・・。
うん。欲望には勝てないね。そんな訳で撤収する前にマグロだけは狩っておこう。
マグロが居る場所に座標を合わせて転移魔法を発動。
はい。一瞬でマグロの魔物が居る海域の上空に到着だよ。
それと同時に攻撃準備。周りに他に誰もいないのも探知魔法で確認して、時間が惜しいので広域殲滅魔法で一網打尽成する。
ホントはES+ランクの実力を持っているからね。魔力の総量は桁外れって言って良いんだ。A・Bランクの魔物100匹を逸着せ殲滅する威力の魔法の発動も軽い。
「アストラル・レイ」
発動した魔法で半径50キロの範囲内の魔物が綺麗に全滅。
後は急いで回収に回るだけ。まずはお目当てのマグロの魔物。それが終わったら気になるのを優先して急いで片っ端から回収して行く。
何気に魔物を倒すのより倒した後に回収する方が手間だし、時間がかかったりするんだけども、アイテムボックスに収納するだけだから簡単といえば簡単。
あっクジラの魔物が居た。と言うかヤバイ。コレSクラスの魔物だよ。全長200メートルに及ぶ巨大なクジラの魔物アビス・ノーチラス。
確かSSランクの魔物だったと思う。
ヤバイな。Sクラスの魔物となると絶対マリージアの方でも動向を確認していたハズだよ。
その反応がイキナリ消えたとなれば騒ぎにならないハズがないよ。
それにボクがこの海域にいきなり現れたのも察知しているだろうしし、マズイな。イキナリ目を付けられちゃうかも知れないよ。
まあ良いや、向こうから接触してこない限りは知らぬ存ぜぬで。アビス・ノーチラスもアイテムボックスに死蔵しておこう。
そうすれば僕が討伐したって証拠もなくなるしね。
イヤ、衛星からの監視カメラとかで、ボクが魔法を使うところをバッチリ取られている可能性もあるんだけどね。気にしない方向で・・・・・・。
あらかた回収が終わったところで撤収する事にする。
マリーンドルフ近くの海岸に座標を合わせて転移。どうしてマリーンドルフに直接転移しないのかって言うと目立つから。
実は転移魔法の使い手はかなり珍しい。
コレがSクラス以上になると、何故か100%使えるようになるんだけども、それ以下のランクでの転移系魔法の使い手は1%以下になる。
それでも、ヒューマンの総人口は100億人だから、1億人近くは居る事になるんだけどね。
でも、その人たちの多くは魔力量と総量の関係と魔法式の複雑さもあって、精々100キロ程度の距離しか転移できないんだよね。
それでも十分過ぎるくらい便利なんだけどね。
僕みたいにそれこそ国と国との間自由にを行き来できる転移魔法の使い手は基本Sクラスにしか居ないとされているからね、下手にバレると危険なんだよ。
それと、この海岸からならマリージア側の動きも確認しやすいって言うのも理由のひとつ。
実際。ココからはマリーンドルフから出動して行く部隊の姿が良く見えるし。
アレは竜騎士団だね。装機竜人を4機導入するのか。
それに装機人も10機。ほかの国の装機人は陸戦用の機体だけど、この国のは水中戦用に特化した機体なんだよね。
それに騎士団も続く。海戦用のパワードスーツを身に纏った騎士たちが、ウォーターバイクの様なモノに乗って海上を駆けて行く。
更に戦艦も続々と出向して行く。主力となるのは500メートル級広域殲滅戦闘艦ウインディーネ。それにイージス級艦が続いて行く。
他の防衛都市でも、同じ様に部隊が出動しているんだろう。
当然だけども相当な戦力を投入している。
だけど、問題はコレで突如として侵攻を強めた魔物を食い止めきれるかどうか。
ボクが探索した範囲内で、A・Bランクの魔物が5000匹いたから、マリージア全体ではその数十倍、数十万匹は最低でもA・Bランクの魔物が現れていると思って良いハズで、多分Sクラスの魔物も100匹以上、場合によっては数百、1000近く現れているかも知れない。それも今の段階で既にだよ。うん。これからも、と言うか今も魔物は魔域からドンドン溢れ出して着てその数を増やしているからね。
イヤ、出撃した部隊は、確かにそれだけの数の魔物を殲滅するに十分な戦力なのだけども、明らかに突然の事態に対応が後手に回ってしまっている。
このままだと、防衛都市にまで魔物の接近を許してしまうかも知れない。
そうなれば、犠牲者が出てしまう可能性も・・・・・・。
そんな事を考えていてハッと気付いた。まだ魔物の侵攻が突然激しくなった事に気付いていない冒険者たちもいるんじゃないかって。
でも居たとしても、ボクにできる事もないし、冒険者の仕事は自己責任だからって思ったんだけども、地上の海岸付近で、次から次へと途切れる事なく襲い掛かって来る魔物を必死で食い止めている冒険者の姿に気が付いたんだ。
むしろ、どうして今まで気が付かなかったんだろう。必死になって防衛都市に迫ろうとしている魔物を打ち倒している彼らのことに。
なんとか戦線を維持しながら、防衛都市に向かって後退しているけど、このままじゃあ次から次へと際限なく海から溢れ出してくる魔物の脅威に耐え切れずに、戦線が崩壊してしまうのも時間の問題だよ。
しかたがないね。助けに入るか。
そう思って動き出そうとした瞬間。ついに戦線が崩壊した。
イヤ、故意に崩されたと言う方が正しいね・・・・・・。