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クロスロード・ネーゼリア  作者: ニーベ
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旅立ち編

「家族を捨てて1人だけ逃げるなんてヒドイ」

「その言い様こそヒドイと思うけど」


 旅立つボクにブ~たれてみせる姉に思わず苦笑する。

 イヤ、気持ちは判るんだけどね。その辺りは何度も話し合ったじゃん。

 因みに、厄介事と言うのは当然のように婚姻の事。

 家族全員がBクラス以上になったレイベスト家には縁談が殺到したんだ。それもボクたち兄妹だけじゃなくて家族全員にね。


 うん。父と母、両親にまでそれぞれ縁談がかなりの数が持ち込まれたね。

 もし、全てを受けていたりしたら、2人ともそれぞれ伴侶が20人くらい新たに出来ていたよ。


 当然だけども、流石にそんな事にはならなかったけどね。

 と言うか、家の両親は相思相愛で、子供が3人もいる今でも、イチャイチャのラブラブなんだよね。

 そんな所に縁談の話を持ち込むとかボクからしたらありえないんだけどね。

 まあ、イキナリ家族全員Bランク以上になって、下級貴族の準男爵から中級貴族の子爵にまで爵位が跳ね上がった上に、上級貴族の伯爵か侯爵まで爵位が上がるのも既に確定しているらしいからね。周りが放っておく訳がないのも当然なんだけどね。


 うん。この世界の貴族は強さがすべてだからね。

 強くなればそれだけであっと言う間に爵位も上がるし特権も増すよ。

 当然だけど、その分余計な柵もどんどん増すけどね。


 でっまあ、その余計な柵の第一歩が家族全員に怒涛の様に持ち込まれた縁談な訳だよ。

 当然だけど、全部断るなんて出来るハズもなくてね。まあ、それでも何とか父と母は今回は保留に持ち込んだけども、その分、ボクたち3人の、子供への攻勢が強くなってね。

 結局、兄が6人と婚約。ブ~たれている姉も5人との婚約をする事になったんだよ。

 そして、当然のように僕も何人かと婚約せざるおえない状況だったんだけども、まだ未成年なのとかを盾にのらりくらりと躱しながら、旅の準備を進めて、こうして婚約が決まってしまう前に逃げ出してしまおうとしている訳なんだ。


 うん。12歳になったと思ったらすぐにでも旅に出ようとしている理由がつまりそれなんだよ。

 実はSクラスにもうなっていたりするのがバレて厄介な事になる前に逃げ出す以前に、もう既に厄介な事になっているんだよね。

 しかも、早く逃げ出さないと既に魔物の討伐で50億ジュールもの大金を手に入れている事まで知れらてしまうだろうし。

 お金が絡むと更に面倒な事になるのは判りきっているしね。


「と言うか、このままアリエルがこの国に留まっている方が大変な事になると思うけどね」

「確かに。この七年の苦労を思い起こすとな。これ以上の面倒事はゴメンだな」

「そうですね。アリエルが居ると更に大変な事になりそうなのは確かよね」


 何気に酷い事を言うのは順番に兄に父、更に母。

 うん。本当にヒドイ言われようだと思うけど、残念ながら反論できない。

 この7年間は、家族のみんなにとってこれまでの生活が一変する怒涛の展開の連続だったからね。

 そして、その原因は間違いなくボクだしね。


 下級貴族として慎ましく暮らしていたのが、イキナリ中級貴族になってしかも上級貴族にまでなるのが(と言うか、既に公爵になるのもほぼ確定だったりする)決まったりしたものだから、3000年間代々レイベスト家が暮らしてきた小さな屋敷から、上級貴族用の今までの屋敷の100倍以上の大きさの本モモの御屋敷に引越ししないといけなくなるし、それに伴って、今まで使えていてくれた使用人たちだけじゃあ、どうやっても屋敷の管理が出来ないから、新たに10倍近い人を雇う事になったし、生活面でも信じられないくらいの激変ぶりだしね。

 

 更に言えば、現在内では1000人近くの弟子を取る羽目になっている。

 これはまあ、ある意味当然だよね。

 下級貴族で家族全員Dランクの実力しかなかったのが、幾なりA・Bランクの実力者になったんだから、周りが放っておく訳がない。

 当然、その理由を探ろうとするし、あわよくば自分持ってなるに決まっているよ。

 違法な薬物でのドーピングを声だかに叫んだ人もいたしね・・・・・・。


 その程度の事で強くなれたら苦労はしないって言うの。

 正直、10万年前の転生者たちが残した修行法は、確かに実践すれば誰でも確実に強くなれるものだけども、その反面、過酷さは常軌を逸している。

 普通に毎日、死を覚悟するレベルだよ。

 イヤ、むしろいっそのこと殺してくれって思うレベルとも言う。

 ホント、なんで誰ひとりとして途中で逃げ出さなかったのか、今更ながら不思議で仕方ないよ。

 現に、家に修行に来る人の半数は1週間もしないで逃げ出すしね。

 まあ、それは別に良いんだけどね。はじめに入門料と言うかトレーニング代を払ってもらっているから、逃げ出されてもこっちに損害はないしね。逆に労せずに丸儲けだね。

 

 イヤ、それはどうでも良いね。

 とりあえず、なんで家族全員がそんな過酷な修行を逃げ出さずにやり遂げたかって言うと、これは間違いなくボクの所為なんだよね。

 ボクはこの7年間、狂ったように強さを求めて修行に打ち込んだからね。

 そんなボクの姿を見ている以上、家族も逃げ出せなかったんだ。

 流石に魔域内部に籠っての魔物討伐をしながらの実践トレーニングは余りにも危険すぎるって3日目で止められたけどね。

 うん。常軌を逸した修行を繰り返して家族みんなに心配をかけ続けて来た覚えがあるよ。


「あのさ、旅立つ息子に激励の言葉とか、案じる言葉とかはないの?」


 それは判っているんだけど、シッカリやれよとか気を付けろくらいの言葉があっても良いと思うんだけど。


「何を言っているんだい。アリエルが頑張ったりとしたらどんな事になるか判ったものじゃないよ。だからくれぐれも、あんまり頑張り過ぎないように気を付ける様に」

「案ずるも何も、アリエルが危険な目に合うなんて考えられないし」


 あっそうですか、キッパリと言われてしまうと何か来るものがあるけど、これも確かな反論できないね。

 と言うか、確かに頑張り過ぎて旅に出たと思ったらイキナリ、実は既にSクラスになっている事がバレたりしない様に気を付けないと。


「気を付けろよ。あんまり目立ち過ぎるとロッシュ様に強制連行させられるぞ」

「ははっ・・・・・・。気を付けるよ」


 ロッシュ様って言うのはこの国のSクラスの人の事。

 ロッシュ・ユラ・レムス・ベルゼリア。4代前のこの国の王であり、御年1200歳。1年前まではSS+ランクであったのだけども、今ではES+ランクにまで登り詰めた人。


 はい。この人も10万年前の転生者たちが残した修行法で強くなりました。

 今から1年前、既に全員Bランクにまで登り詰めていた家の家族に興味を持ってやって来たロッシュ様は興味津々に修行法を試されて、あっと言う間にES+ランクに登り詰めた。

 その後、気か向いたら家に来るようになった彼女に、さり気なく10万年周期の戦いの事を話して、注意喚起をしたんだけども。


「ああ、魔物の進行を食い止める結界を新たに造り直す戦いか。そうか、私が生きている内に訪れる事になるとはな」

「知っているのですか?」

「王家に代々伝わっている。6万年前。我が国を建国した初代様が残した遺言としてね。そうか、どうやらキミは初代様と同じみたいだね」


 もの凄く興味深そうにボクを見るロッシュ様。

 初代様、建国王とボクが同じって、ひょっとして建国王も転生者って事?


「初代様は世界中を旅して周り、数多の叡智と力を手にしたとされる。ならば、キミも世界を旅するべきかも知れないな」


 数多の叡智と力とは、10万年前の転生者たちが残した遺産。兵器と知識の事なんだろう。

 そうするとアレ? この国には既に10万年周期の戦いに備えた力が残されている?


「そして、この国に戻って来ると良い。キミならば初代様の残した全てを受け継げるかもしれない」


 なんて面白そうに言うけど、それって普通、ロッシュ様が受け継ぐべきなんじゃないかな?


 なんてやり取りをしたのを思い出す。

 まあ、確実にロッシュ様は旅先で騒ぎを起こしたボクを連れ戻したりしないで、逆にその騒ぎを笑いながら眺めて楽しむと思うけどね。


 因みにどうでもいい話ではあるけど、3万年前に別の転生者がヒューマンの国を全部征服した時には、この国は敢えて反発せずに降伏して、征服国家の崩壊後の混乱に備えたとの事。

 と言うか、こうしてまだヒューマンが種として全滅しないで存続できているのは、当時、いくつかの国がそうやって従う振りをしながら、いざという時のための戦力の温存に務めていたかららしい。

 他種族、エルフとの決戦にも本国の守りが必要とか言って兵を出さないでいたりしてね。

 まあ、現実が見える人からしたら、ヒューマンの統一国家を造るまでならともかく。他種族に対して侵略戦争を仕掛けるなんて自殺行為でしかない事は一目瞭然だった訳だね。

 だから、エルフに大敗して征服によって成り立ったヒューマンの統一国家が瓦解する事も、その後にヒュマンの住む大陸全土が大混乱に陥る事も、初めから判っていた訳だね。

 だからこそ、その混乱を切り抜け、ヒューマンが生き残るために最善方法を取ったんだね。


 そして、ロッシュ様も10万年周期の戦いが始まろうとしている状況で、ボクが国に仕えるよりも、旅の中で叡智と力を集めた方が良いと判断した訳だよね。

 なんとか期待を破らない様にしたいよ。


「それじゃあ行くね」

「うん。気を付けてな」

「たまには連絡してね」

「美味しいモノを見付けたら絶対に送ってくるように」

「やり過ぎないように気を付けろよ」


 まあ頑張るしかないけどね。

 そして、それぞれの言葉をかけて来る家族に応えてボクは旅を始めた。



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