プロローグ5
さてと、ボクの暮らすベルゼリアの国は人口6億人の大国だと言ったけど、Sクラスの実力者は1人しかいない。
イヤ、国に仕えるSクラスの実力者はごく僅かな事もあって、ヒューマンの国じゃあSクラスが1人もいない国も珍しくないんだけどね。
あっ、因みにヒューマンの国は46カ国あるよ。
で、その内、Sクラスが仕えていたり、王がSクラスだったりするのが半分の23カ国。残りの半分の国は自国の戦力としてSクラスを有していないんだ。
それと、この国のSクラス、実は一家全員Bクラス以上の実力者になった事が判った時にあった事があるんだけど、その人は4代前くらいの王だった人。
その時の事を思い出すと色々と・・・・・・。
いや、話が逸れるからその時の事は後で話すとして、500人いるSクラスの実力者は大半がフリーランスで国に仕えている人は本当に少ない事は判ってもらえたと思う。
そんな状況で、自国の貴族家からSクラスが現れたとなったら、なにがなんでも取り込みに来るのは目に見えているよね。
自国の戦力としてのSクラスが2人に増える事による他国への影響力の増加は、多分、ボクが考えるよりも更に大きいモノだろうしね。
と言うか、バレたら確実に王家の姫君と結婚て話になるどころか、確実にそのまま次期国王の座まで確定してしまうよ。
ホント、心の底からそれだけは勘弁して欲しい。
誰が好き好んで王様になんかならないといけないの?
王様になったら好き勝手し放題じゃないの? なんて考えている人は甘い。それこそザッハトルテにハチミツをかけて食べるよりもさらに甘い。
国のトップに立つて事はそれだけの責任も背負うって事なんだよ。
好き勝手自分の思い通りにできる事なんてハッキリ言ってないよ。
と言うか、この世界だと本気で王族や貴族よりも一般市民の方がはるかに自由で、自分の好き勝手やりたい放題に生きれるからね。
既に下級貴族に生まれてしまった時点で、魔物を相手に戦わないといけない義務を背負わされているのに、この上さらに重責を背負うとか冗談じゃない。
絶対に次期国王なんて厄介な地位はゴメンだよ。
だからこそ、12歳になったボクは旅に出ようと思うんだ。
これから先に待ち受ける世界の存亡を賭けた戦いに備えて、世界中に散らばる遺跡を回って10万年前の転生者たちが残した遺産を回収して周る度にね。
貴族に生まれた以上は、自国を魔物の脅威から護るために戦わなければならない義務があるけれども、それについても大丈夫。ちゃんと抜け道があるからね。
確かに魔物と戦わなければいけないけれども、それは何も騎士団に所属してでなければいけない訳じゃない。
別に騎士として国に仕えなくても、魔物と戦ってさえいれば問題ないんだよ。
そして、この世界にはあらゆる国家に所属しない魔物の討伐を専門とする機関がある。
所謂。ファンタジーでお馴染みの冒険者ギルドだね。
ただし、この世界の冒険者はいわゆる何でも屋じゃなくて、純粋な戦闘職。
前世に読んだファンタジー系の物語じゃあ、冒険者は薬草とかの採取とか、商人の護衛とか色々な仕事をこなす何でも屋に近かったけれども、この世界の冒険者は魔物の討伐に特化した、むしろハンターとかの呼び名の方が近い職業。
だからこそ、ボクにはうってつけでもある訳だよ。
冒険者として魔物を討伐していれば、貴族家に生まれた義務を果たしている事になるからね。
その上、国に所属していない完全なフリーランスだから、余計な厄介事とかを避けられるしね。
ただし、その分、騎士団などよりもはるかに死亡率は高いけどね。
国に仕えてる騎士や竜騎士、軍人と比べて、フリーランスの冒険者の死亡率は倍以上になるって話。
それでも、ボクにとってうってつけの職業なのには変わらない。
それに、実はES+ランクの実力を持つボクだからね、死亡率の高さも大した問題じゃなかったりするし。
なんて油断が死亡フラグに繋がるんだけど、とは言っても、レジェンドクラスの魔物でも出てこない限り問題はないよ。
なんて、それこそフラグだよね・・・・・・。
まあとにかく、12歳になったボクは、実はSクラスに至っている事がバレて厄介な事になる前に、冒険者になって旅に出る事にしたんだ。
因みに、どうして12歳になってからかと言うと、冒険者ギルドへの登録が出来るのが12歳になってからだから。
もっとも、12歳から本登録する人はほとんど居ないんだけどね。
普通は15歳になってら、冒険者学校を卒業してからギルドに登録するからね。
冒険者学校て言うのはその名の通り、冒険者になる前に通う専門学校。
この世界の教育は、まず6歳から12歳になるまでの間に一般的な学問を学んで、その後、12歳から15歳になるまでの間、それぞれの進路に会った専門学校で学ぶようになっている。
冒険者になるなら冒険者学校。騎士になるなら騎士学校。魔法科学をや錬金術を学び技術者となるのなら魔工学学校。医者を目指すなら医学学校とね。それぞれの専門学校があるんだよ。
因みに、12歳までの一般学問を学ぶ学校で、大体地球の高校教育くらいまでを全てマスターする事になる。
その後、医学学校に入って卒業するころには、大学の医学部を卒業したのと同じ状態にまでなっているね。
うん。この世界の教育はある意味本気でスパルタなんだよ。
正直、前世の記憶がなかったらヤバかったかも知れないと思ったしねボク。
あっ、それとこの世界での成人は15歳だから。
成人と共に社会に出て即戦力になれるように、教育を叩き込むって事なのかも知れないね。
ボクも本来なら、冒険者学校に入って冒険者としての基本から学ぶ事になるんだけども、現状すでにES+ランクに、偽造した表向きのランクでもA+ランクになっているからね。
いまさら冒険者学校で基礎を学ぶ必要もないんだよ。
実は、魔物の討伐はこの7年、修行をしながらこなしてきたりしているしね。
うん。すでに何千を超える魔物と戦っていたりするんだよね。
更に言えば、実は既にSクラスの魔物とすら戦っていたりする。
バジリクスとかケルベロスとかね。
そんなこれまでに倒した魔物を冒険者ギルドに登録する際に換金してもらったら、一気に50億ジュール以上の大金になちゃったんだ。
あっ、ジュールはこの世界のお金の単位ね。1ジュールが10円くらいかな。
で、50億ジュールだから500億円。
とんでもない金額だよね。しかも、バジリクスやケルベロスとかのSクラスの魔物は出していないのにだよ。
まあ、それだけA・Bランクの魔物でも価値があるって事なんだけどね。
何の価値があるかと言えばそれは勿論、素材としての。
ぶっちゃけ、魔物は脅威でもあると同時に資源の山でもあるんだよ。
魔物が必ず持つ魔石と呼ばれる部位、まあ言ってしまえば魔物を魔物足らしめる心臓部とも言えるそれは、地球で言うところの格や石油と同じ役割をこちらでは果たしているんだ。
要するに文明の根幹をなす動力源だよね。
魔石以外にも、サンダー・バッファローとかの牛の魔物の肉は超高級̪食材だし。皮もバックやコート、靴にされたり或いは防具にと色々な用途がある。
それに、例えばオーガなんて人型の上位種の魔物だと(因みにオーガはBランクの魔物)完全武装した居るから討伐するとその武器とか防蟻とかも手に入るしね。異界の金属でできたそれらは当然だけども相応の勝ちがある。
更に言えば、装機人や装機竜人などの兵器にはドラグニルやワイパーンと言った竜種の魔物の素材が使われているし。
魔物の素材はこの世界になくてはならないモノとも言えるんだ。
そして、その素材を確保して供給するのが実は冒険者の一番重要な仕事。
うん。冒険者の仕事は魔物を狩る事と言うよりも魔物の素材を手に入れる事なんだ。
と言うか、魔物の討伐、魔域から侵攻して来る魔物の迎撃ならば、それぞれの国の竜騎士団や騎士団、或いは軍が行う。
彼らは国を護る使命があるのだから、最前線で魔物と戦い続けている。
だけど、彼らの仕事はあくまで魔物を殲滅する事。当然、強力な銃火器による一斉射で仕留められた魔物はボロボロの状態で、下手をすれば後かともなく消し飛んでいて魔石を含む資源が全て使い物なならなくなっていたりする。
まあ、彼らの仕事はあくまで魔物の脅威から国を護る事なんだからこれは仕方がない。
場合によっては万を超えるどころか、億の単位の魔物の軍勢を食い止めないといけないんだから、倒し方なんて気にしていられないしね。
でも、それじゃあ魔物の素材が手に入らない。
だから、そちらの方を担当するのが冒険者って訳。
冒険者の仕事は魔物を倒してその素材を供給する事。
だから、冒険者には出来る限り魔物を傷付けないで倒す技術が求められる。
この辺が、騎士や軍人に比べて冒険者の死亡率が高い原因のひとつでもあるね。
でも、例えばさっき話してBランクのオーガなんかだと、素材となるのは魔石と角、後は装備品となるのだけども、それらを完全な状態で手に入れられれば、素材の売却金額は場合によっては100万リーゼを超える。
うん。1匹倒すだけで1000万円になったりするんだよ。
だからこそ、ボクもイキナリ50億ジュールも手にする事になった訳なんだけどね。
えっ? 7年間で仕留めた魔物って、数千て魔物を倒していたとして、その大半がもう腐っているだろって?
それ以前にそんな大量の魔物の死体をどうやって持っていたんだって?
それは勿論、ファンタジーじゃあ定番のアイテムボックスにマジックバックだよ。
ボクはアイテムボックスを使えるからその中に倒した魔物を全部放り込んでいたんだ。
因みにアイテムボックスは中に入れたものの時間経過が泊まるっていうお約束の機能付きで、入れられる総量は使用者の魔力の総量によって変化するよ。
今のボクはES+ランクだからね。魔力の総量も半端じゃないから、それこそ、月くらいの星なら入れられるくらいの大容量だよ。
なにはともあれ、無事に冒険者として登録できて、バッチリと旅の費用も十分過ぎる程に手に入れられたボクは、早速、厄介事が来ない内に旅に出る事にしたんだ。