プロローグ
なんとなく始めてみた。
文章の指摘お願いいたします。
「なあなあ竜也、お前、告白しなくていいのかよ?」
六年間通ってきた小学校の卒業式、校庭の隅で校庭の真ん中をぼんやりと見ていた俺の横に立って、俺の親友の内の一人の菊人綾地は俺に問いかけてくる。
「告白するっつってもなぁ…」
綾地に目を向けて軽く誤魔化すように笑ってから俺は再び校庭の真ん中に視線を向ける。
それにつられて綾地も俺と同じ方向を向いた。
俺と綾地の視線の先にいるのは一つの大きな人だかり。その真ん中にいるのは、たぶん俺の同級生の中で一番人気があったであろう美少女の秋山美希だ。
自分の周りで別れを惜しむ言葉を言っている同級生に優しく微笑んでいるその顔を見て、俺はほぅとため息を吐く。
「つーかそんなため息を漏らしてるくらいなら、とっとと告白しちまえって!いつもは変なことをやったりしてるくせに、なんで変なところでヘタレてんだよ、お前…」
心底呆れたような綾地の声に反論する。
「いやいや、ラッキーなことに秋山さんも俺も同じ中学に行くことになってるからさ、中学で好感度をさらに上げれば告白が成功できるようになるんじゃないかなー、なんて思ってるわけで…。」
俺の言葉に首をゆっくり振りながら綾地は言う。
「確かにお前も秋山さんも受験しなかったから同じ公立のとこに行くことになってるけどさ、噂だとイケメンな奴らも同じとこに行くことになってるらしいぞ?俺らの学年は結構イケメン多いから、お前のライバルの質がどんどん上がってくことになるんだぞ?」
自分も十分イケメンと言えるようなアマイマスクを持っていて、今までに何人も彼女を作ってきた綾地がそんなことを言ってることが微妙にムカついたので、俺は軽く綾地の腹に腹パンをかます。
「イッター!うわー!暴力反対だー!」
棒読みでリアクションを取る綾地を見てため息を吐きながら俺は話の方向を無理やり変えようとする。
「俺のことより、お前の方はどうなんだよ?最近彼女とはどうなんだ?」
「ああー、それが最近冷たくてよー。やっぱりアレかな、この前後輩に顔を近づけて至近距離でウインクしたのを見られてたのかなぁ…」
「馬に蹴られて死ねよ…」
なんで!?と大袈裟に叫んでいる綾地を見ながら俺は視線を校庭に生えている桜に移し、風に少し目を細めながらぼんやりと考える。
桜、綺麗だなぁ…
…………也…!
……席……………清……!
「出席番号二十五番、水清竜也!この問題の答えを聞いているんだ!」
「うわっ!」
夢から急に醒めて、しかもその上教師が俺のことを起こった声で呼んでいるということについ反応して大きな声を出してしまった俺に、英語教師の月島は周りに無精ひげを生やした口で問題文を読み上げる。
「いいか、もう一度読んでやる。 I hate you because you are violent. この英文の意味は?」
「えーっと…、私はビコウズさんが嫌いだ?」
「水清、後で職員室まで来い。」
「えっ、なんで!?」
しばらく教室の中で続いたクスクス笑いが収まってから月島は授業を再開する。
いつも通りに汚い月島の字が黒板に刻まれていった。
―――――――――――――――――――――
「珍しいな竜也、我が契約者たる貴様が授業中に寝るなんて。」
授業が終わった後の昼食の時間にわざわざ俺の机に自分の弁当を広げて、森周大は問いかけてくる。
大は、俺が羽音中学校に入学して初めてできた友達で、中二病という濃いキャラを持っているがとてもいい奴で、今では綾地と同じくらいに仲良くなっている。
「ところで、綾地はまだなのか?」
「いや、そろそろ奴は来るはずだ…」
大がそう言った瞬間に俺と大がいる2-Bの教室のドアがガラリと開かれる。
「ワリィワリィ。ちょっと遅れたわ。」
「何やってたんだよ?」
教室の窓側に座っている俺たちのところまで歩いてきて、綾地は俺の質問に困ったように頭を掻きながら答える。
「いやー、ちょっと告白されてきてさー。」
「「死ねよ。」」
「ヒデェ!?」
珍しくシンクロした俺と大の声を聞いて綾地は芝居がかかったように地面に崩れ落ちる。最早役者にでもなれそうな動きに教室にいた女子の熱っぽい目線と男子の嫉妬の目線が突き刺さる。
「それで、どうしたんだ?オッケーしたか?」
「そんなわけないだろ…。そんなことしたら今の彼女を裏切ることになるしな。丁重に断らせてもらったって。」
「フッ、どうだかな。お前のことだから、公認で二股でもかけそうな気がするがな。」
「確かに。」
「いや、流石に俺でもそんなことはしないからな!?お前ら、俺のことをなんだと思ってるんだ!?」
俺と大の言葉にショックを受けたような顔をしながらも綾地は俺の机の上に弁当を広げて中の唐揚げを口で頬張りながらも少し興奮したような声で言った。
「なあお前ら、聞いたか?今日の夜、肝試しやるらしいぜ!お前らも行くんだろ?」
「ほぅ…肝試しか…。我の右腕に宿る力を開放するにはちょうどいい場所ではないか!」
「俺は…どうしようかなぁ…」
迷っている俺を見て少し悪い顔をしながら綾地は俺の耳元で囁く。
「秋山さんも来るらしいぞ?もしかしたら、いい雰囲気になれるかも…」
それを聞いた俺の頭の中に、暗い学校の中で秋山さんと二人きりで歩いている俺の図が浮かんでくる。
「よし、そんじゃ俺も行くわ。」
「ほいほーい。じゃあみんなに伝えとくわ。」
そう言ってから綾地は再び弁当を頬張り始める。開いている教室の窓から吹き込んできた風は、わずかに湿っていた。