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黄昏時に  作者: 凡凡帆凡
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十二話 確認

 空が赤みがかる頃に合流した三ツ時一門はそれぞれの家の代表者だけで評定の間へ集まり、其々の成果を報告をしあった。


 総論としては緊急性はほぼ無くなったと言って良いだろう。又、衣食住の内で元からあった住を除く衣食も大太郎太の能力と農民や職人に任せればどうにか目処が立ったと言える。


 今日中に動かねばならない様な事はないと判断して子弟以下の者達を休ませる。彼らと別れ三人は九十九丸に先頭にして廊下を歩く。此処は本丸の表御殿の一角で文書や書類の保管をするための場所であった。


 三人はお互いの成果を確認しておくべきだと考えたのだ。後々、子弟一族郎等にも教えるが図らずも首脳陣扱い故であるである。更にこの三人の意思統一が出来ていなければ三ツ時一門が三分割されてしまうだろうと言う九十九丸の懸念に二人も納得したからだ。恐過ぎとも言えなくもないが現状どう転ぶか分からないなら対策は取るべきだとは同意せざる終えない。


「此の部屋、取り敢えず此処空いてたから住民票用に使っちゃったけど良いよな?」

「お、おぉ」

「う、うん」


 九十九丸の親指の先を見ればバームクーヘンの様な竹簡が棚に収められ、その棚が部屋一杯に並べられている。その部屋に入るでもなくさらに横の部屋へ進む。


「んで、コッチ。此の部屋が農家の人に力を借りて作った米関連の書類が入ってる。

 幸い町の食い物は何とかなりそう。それどころか種籾が多く欲しいんだったら多めに出すのも厭わないって言ってくれた」


 どうやら元NPCであった民に対して三人の思いは同じな様である。協力を申し出てくれた城下町の者たちの話をする九十九丸は熱意に燃えており、付き合いの長い二人としては察するに余りある。

 そもそも三万を超えるの戸籍を短期間に纏め上げるなど普通は出来るものでは無い。


「税率は緩い設定だった。三割ってトコだって。

これからもそれで良さそうだけど無理を言ったんだから今年は二割くらいにしたい。向こう(ゲーム)の頃のままだと大体、田圃一反から六俵(360kg)から六俵半ちょい(約400kg)取れるってさ」

「・・・・」

「・・・・」

「だから上手くいけば一反から一石じゃ無くて一反から二石から三石強も収穫できるって」


 単純に言えば想定の二倍から三倍ほどの収穫が見込めるということだ。


「・・・禍獣衛門」

「なんや?」

「気持ち、解った気がする。やり切った仕事に意味が無くなったワケじゃないけど、切ない」

「・・・せやろ?」

「何の話?」

「いや俺、種籾の為に商いの話纏めたやん。でも大太郎太の能力で食い物ポンポン作れんねん」

「僕は田圃いっぱい作ったんだ。けど、作り過ぎたみたい。でも、出来高が九十九丸の調査と同じならそんなに要らないみたいだし、無駄なわけでは無いけどなんか切ない」

「・・・えぇ。まぁ、おぉ」

「んで、他はどうや?農民だけとはちゃうやろ。城下におんのは」

「あ、おう。工房系の人は材料をどうやって手に入れるかって悩んでた。そういうのも何とかしなきゃいけねぇ。

商人は取り敢えず其々の蔵にあったもん売って凌いでる。やるべき事っつたら今のとこはそんなもんだな」


 三人は天守にある裏御殿の広めの一室に入る。ゲームの頃に広く設定し過ぎ取り敢えず座布団が並べられており寛げる様に作られた部屋である。何故ここにと問われれば素人が政治家の真似事をしているのだ。気を抜きながらでなければやって行けない。


「あ!城の金蔵とか資産は確認してねぇな。商売できそうな相手がいるんなら使えんじゃね?」

「最初っからアテにすんのは危ないんちゃう?」

「あー、確かに。いざという時に取っておいた方がいいと思う。でも確認はしなくちゃ」


 少し考えると大太郎太は算盤を出してパチパチし始めた。


「えーと。一反から六俵として税率は2割だから1.2俵。

そう言えば慌ててたから田んぼ作り過ぎちゃったけど農民の人口は六割だっけ?」

「おう。確か老若男女含めて19800人で農民町が百人前後づつ198町」

「じゃぁ一町あたり百七十反づつ手入れしてもらえればいいね」

「てか、どんだけ作ってんや?メッチャ広かったやん」

「ん?田畑を合わせてキリ良く三万五千反(約35㎢)。水田だけなら三万四千反」

「え?ウソ、四時間前後しか立ってねーのにそんな作ったのか!?」

「大ちゃんナメたあかんで。コイツ追加で丘二つ丸々、果樹園にして川と湖まで作ってもうてんぞ。

て言うかこいつ、この盆地のだいたい三分の一の地形変えてもうとる」

「えぇ・・・」

「そうだ!後で桃食べる?向こうで一万円くらいしたやつ」

「おう、貰う話題そらしやがって」

「いただくわ。ガッツリ逸らしてんな」


 一息入れて桃を剥いて摘む。大太郎太は水を妖力を使って集め浮かし手を洗うと霧散させ、どこから出したか算盤をパチパチと鳴らし始めた。


「さてと198町に170反で33,660反。

33,660反からの収穫量は少なめに二石と見積もって67,320石。

だから少なくとも税は13,464石、米俵にして33,660俵」

「なら俺らの小判で確か米十俵前後買える言うとったから3,366両やな」

「・・・ん?ちょっと待ってくれ。そう言やあ俺らが種籾欲しいつったら城下の米問屋が相場が上がるつってたぞ。確か五俵で一両だったのが二俵で一両」

「あぁ、豊作の場所と種籾の需要がある場所やから、そら相場も変わるわな」

「うわー面倒臭いな。近場に五倍も相場の違う市場があるなんて」


 三人は相談を続ける。せめてもの努力は惜しむつもりはなかった。それだけこの一日そこいらでNPC否、臣民に感化されたのだ。


「桃ウメェ」

「せやな。次、梨むいてや」

「オッケー」


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