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Ghost helpers!  作者: 北風
第一章
8/38

7話 沖花 春 3

「ん…………」


目を開けると視界に天井が広がった。

どうやら昨日はあのままソファーで寝てしまったらしい。


「……あ……あああ…………」


無気力に声を発してみる。

晩飯を食べていないせいか無性に腹が減った。

学生たるもの飯はしっかり食べなくては。

俺の成長期はまだまだこれからだ。


「……う……よっ……と」


俺は反動をつけてソファーから起き上がり、冷蔵庫の扉を開けた。

みりんと、ソースと、味噌、あとポン酢が入っていた。

わぁお、調味料オンリー。

……そう言えば昨日の弁当で冷蔵庫の中の物全部使い切ったっけか……。


「……仕方ない、買い出し行くか」


そう呟いてカーテンを開くと窓ガラスが結露していた。

右手で軽く水滴を拭って空を見上げる。

どんよりとした雲に覆われた空からは、しとしとと静かに雨が降っていた。


「……ぅぁ……」


俺は思わず顔を顰めた。

こういう日は、よく「出る」んだよなあ。

なるべくなら外に行きたくないが、背に腹は変えられない。

俺は適当に身支度を整えて傘を片手に家を出た。



コンビニへの道のりを歩いていると、前方にビニール傘をさした雪が立っているのが見えた。

まあ家は近いし、休日に偶然会うことがあっても不自然では無い。

俺は何の気無しに声をかけた。


「おい雪ー」


だが、雪は無反応だ。


「おーい、そーそぎー!」


更に声を張り上げて呼びかけると、雪はやっと気づいた様子でこちらを見た。


「……あ…………宗哉…………」

「何やってんだ?こんなとこで」


俺が尋ねると雪は道の向こうを指差した。


道路の真ん中に緑のレインコートを着た子供が立っている。


住宅街で車の通りが比較的少ないとはいえ、いつ車が来るか分からない様な所で、その子は一人ただ俯いていた。


「あそこで…………あのこ……もう10分も、ああしてるんだ……」

「え?お前、10分間ずっとここで見てたのか?」

「……? うん……」


……せめてさあ、もっとこう、声かけるとか無いの?

俺は一瞬そうツッコもうかと思ったが止めておいた。言うだけ時間の無駄だ。


まあその話は置いておくとして、10分もああしてるって流石にちょっとおかしいな……。


「雪、俺ちょっと話しかけてくる」

「…………あ……僕も行く……」


俺達は子供を警戒させないよう、正面からゆっくりと近づいていった。


だがどんなに距離が詰まろうと、その子は下を向いたまま微動だにしなかった。

とうとう俺達との距離は50cm程になった。それでもまだ反応は無い。

顔ははっきりとは見えないが、髪形からこの子は女の子だという事が分かった。


「…………おい」


話しかけてみると、その子は顔を上げてこちらを見た。



「………………!!」



俺はその顔を見て思わず絶句した。


見覚えのある顔だったからだ。

しかも、つい最近見た顔だ。


「……も……桃菜……!?」


「え……?」


雪が驚いた表情で俺を見て来たが、俺は咄嗟に何も言えなかった。


そして気づいた。


違う。

この子は桃菜ではない。


桃菜の身長は大体140cmくらいだった。

だがこの子は145cm程身長がある。


顔も桃菜より僅かに大人びている。



そして何より、目が、違う。



この子は年相応のあどけないキラキラした目ではなく、感情が全く籠っていない無機物のような目をしていた。


俺が何も言えずに立ち尽くしていると、


「あれ? 小森さんに白樺さん? 何してるんですか?」


背後から声をかけられた。

振り向くとそこには笑顔の沖花が居た。


「あ……お、沖花……」

「………………」

「? 二人ともどうしたんですか?」


俺と雪の様子に沖花は首を傾げた。

そして俺達の前に立つ子供に目線を移す。

子供の顔を見た途端、沖花は目を見開いた。


杏菜(あんな)! ここにいたんだ!」


「!? こいつ、もしかして……?」


俺が驚いて尋ねると、沖花は頷いて答えた。


「この子は沖花杏菜。僕の妹で、桃菜の――双子の妹でもあります」


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