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Ghost helpers!  作者: 北風
第一章
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6話 沖花 春 2

次の日、俺達は昼休みに屋上で作戦会議をすることにした。


弁当を持って屋上に行くと、無人だった。

まだ4月だ。

冷えるので誰も屋上で飯など食わないのだろう。

俺達にとってはその方がやり易い。

なんせ苛めっこへの逆襲の計画を話し合うのだ。

部外者はいないに越したことは無い。


「確か2人は購買で買ってくるんだったな……」


雪は俺と同じ一人暮らしで、ほぼ毎朝寝坊しているので弁当は持って来ていない。

沖花は両親が共働きで、毎日家事で忙しいらしく、同じく弁当は無い。

弁当派は俺だけだ。


雪達が来るまで、俺は屋上のフェンスにもたれかかって今後の事を考えていた。

――まずは相手の情報が欲しいな……。

顔も名前も知らないし。

クラスは多分沖花と同じだな……。


ん?


ちょっと待てよ?

苛めっこは一人とは限らないんじゃないか?


普通苛めは多対一で行われるものだ。

桃菜が言っていた「苛めっこ」が一人である可能性は低い。

2人組みとかならまだましだが、もし相手が大人数だったらいくら雪がついてるとはいえ少しきつい。


……あれ? 以外と難しいかもしれないぞ?

本当に上手くいくのか? これ。


何だか不安になってきて、俺はその場に座り込み溜息を吐いた。

調度その時、屋上の入口のドアが開けられ、沖花が現れた。

どうやら購買から帰ってきたようだ。


……?

よく見ると沖花は財布を持ってるだけで後は何も持っていない。


「おーい! 沖花ー」


手を振って声をかけてみるが、沖花はドアの前で立ち尽くしたままだ。


「………?」


俺は不思議に思い、沖花の元へ走り寄って訊ねた。


「お前何で食い物持ってないんだ? 購買行って来たんじゃないのか?」

「………………弱肉強食」


会話が成立しない。


「沖花? 何が弱肉強食なんだよ?」

「……あそこはいくさばです…………」


戦場(いくさば)


「……購買のことか?」


沖花は無言で頷いた。


          ※


基本的に高校の購買は昼休みに賑わうものだろう。

だがうちの学校の購買の混み様は「賑わう」という言葉で表現出来ないレベルの混みようだ。

通勤ラッシュ時の新宿駅と同等、又はそれ以上のものがある。

恐らく沖花は購買の人口密度に負けて飯を買い損ねてしまったのだろう。


しょんぼりと肩を落とす沖花に俺はそっと弁当に入っていたおにぎりを差し出した。

沖花は一瞬躊躇したが、おにぎりを受け取り代わりに俺の手の上に100円玉を置く。

ギブ&テイク。

なんて律儀な奴なんだろう。


「…………強く生きろよ、沖花」


沖花を励ましたつもりが、何か今生の別れみたいになってしまった。


「はい…………どっかで聞いたことのあるセリフですが、ありがとうございます……」


そう言って沖花はもぐもぐとおにぎりを食し始める。

と、屋上の扉が開く音がした。

目を向けてみると、雪が入ってきたようだった。


「よう、雪。沖花は購買で買えなかったらしいがお前はどうだっ…………」


俺は言葉の途中で思わず絶句した。


「………………あ……二人とも、来てたんだ……よお……」


雪は呑気に挨拶をしてきたが、俺と沖花は彼の手元を凝視していた。


「雪…………一応聞くが、それは購買で買ったんだよな? 全部」


「……? ……うん…………」


不思議そうに頷く雪。


「あのなぁ…………だったらその量はおかしいだろぉ!!」


雪は両手に抱えきれない程のパンやおにぎりを持っていた。


「…………え? ……おかしいか? ……ど、どこが?」


こいつ、本当に自分がした事を分かっていない。


「……うん。もういいから、とりあえずこっち来い」


俺が雪に手招きすると雪はとことことやって来て、俺の隣に腰を下ろした。

そしてもぐもぐと食べ始める。

…………こいつの何が凄いって精神力だよな。

沖花のような買えなかった奴らが居るというのに、平然とこの量買えるっていう精神力。


「雪」

「?」

「うん…………俺は良いと思う……」

「…………? あ、ありがとう……?」


とりあえずフォローしておいた。

雪は不思議そうな顔をしていたが、数秒で興味は食べ物に移ったらしく、またもぐもぐし始めた。


結局その日は時間が無くなり、作戦会議が進む事は無かった。



              ※


俺は自宅に帰り、鞄を玄関に投げ出してソファーに寝転がった。


――何だか難航しそうだな。

そう考えると、気が抜けて眠くなってきた。

まあ良いか……明日休みだし。

俺はそのまま睡魔に身を委ねる事にした。


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