魔具屋〜クロフユ堂〜
誤字脱字等ありましたら、ご連絡ください、対処します。
場合によっては時間がかかりますのでお許し下さい。
早朝、ふるぼけた屋敷の中でボクは、フラスコの中の泡とにらめっこをしていた。
青い液体が揺れるソレは、アルコールランプの炎に熱され泡を放つ・・。
「コレをいれれば・・・・・・。」
恐る恐る声を出しながら、程よい緊張感の中、ボクはゲルゲル草の搾り汁をスポイドで吸い上げる。
「ゴクリ。」
つばを飲む、何度やってもこの瞬間は、緊張する。
そしてボクは意を決して、スポイドの中身を、フラスコへと落とした。
ボフッ!!
そう音を立てて、フラスコから煙が上がり、ブルーの液体がグリーンへと変わる。
「ふぅ・・・・。よし成功だ。」
一息つき、身に纏った、黒ローブの袖で、汗をぬぐいながらボクはそう言った。
「後は、これを中和剤で薄めて、瓶詰めすればグリーンポーションの完成だ。」
グリーンポーション、それは傷ついた冒険者達の傷を癒し生命力を増やす魔法の秘薬。
そして、部屋の中には、青色のブルーポーション(主に毒消し)錠剤型の謎の薬(筋力増強のドーピング剤)等の薬の他に、よく分からない紋章の入った筒や、怪しげなオーラを放つナイフ等、みるからに魔法の品と分かる品々が所せましと並んでいた。
「さて、そろそろ開けるかな・・・。」
一通りの作業を終え、別の部屋へと移る・・。
そこにも、さまざまな魔法の品が所せましと並べられていた。
ショーケースに並ぶ、輝く魔石。
棚にならぶ、マジックポーション。
これら、全て、ボクが作った自慢の品。
ギィィ、カランコローン。
古い屋敷だけあって、ドアが軋む音がし、ソレに続いて安くバザーで買い上げた、割りとお気に入りの喫茶店風味なベルの音がする。
この音がするって、事は・・・・・・・・・。
そう、お客さんだ。
「あ、いらっしゃいませ、魔具屋クロフユ堂にようこそ。」
金髪の綺麗な女の人、鎧姿からして剣士であろう彼女が、店の入り口から入ってきたので、フレンドリーに挨拶をする。
そうここは、魔具屋なのである。
ちなみにクロフユ堂のクロフユってのはボクの名前だよ。
「へぇ、本当だったんだな、子供がやってる魔具屋があるってきいてきたんだが。」
見かけの美しさとは正反対に、男っぽい言葉遣いのお姉さんだ。
あー、こう言う人はプライド高いんだよねぇ、こう騎士みたいなイメージを自分の中にだいててさ、あーだとしたら、いつもの調子で声を掛けちゃう怒らせちゃうよね?
「まぁね、驚いたかな?ま、商品は大人に負けないくらいのを置いてるから期待してよ。それでさ、この辺じゃ見ない顔だよね?旅人かな?あ、綺麗な瞳、髪と同じで金色なんだ、所でさ近くに美味しいチーズケーキ食べさせてくれる店あるんだけど昼一緒にどう?」
ふむ、身長160cmくらいか、バストはっと、鎧で隠れてるけど、Cは硬いな、腰に下げてるのはロングソードかな?へぇ、あの細い腕であれを振り回せるのかぁ、結構使い込まれてるけど魔具ではなさそうだね。
あー、待て、ボクの目と口と思考、特に口、ほぼ条件反射で口が何か言ってる、あーどうしよう。
怒らせちゃったかな?これだからお客がこないんだよね?
ほら、お姉さん、困った顔してる、あれ?困ってるって事は脈あり?いや待て仕事しろボク。
「・・・・・・・さっそくだが、グリーンポーションはあるか?」
うん、スルーされちゃったねぇ、まぁ、これ以上無駄話はまずいかな?
「グリーンポーションだね、さっき仕上がったばかりだよ。久々の会心作だよ?」
商品棚から、さっき作ったグリーンポーションを取り出し置いておく。
「お前が作ったのか?」
お姉さんが不安そうな声で、問いかけてくる。まぁ、基本魔具屋と言うのは、魔具研究の魔術師や鍛冶屋から仕入れたりするのが普通なのでちょっと特殊であり、こんな子供が作った魔具など、アテにならないと思ってるのが手に取るようにわかる、一見さんなんて皆こんなもんだしね。
「そうだよ?お姉さん綺麗だし、初回サービスで銀貨10枚の所を銀貨8枚にしとくよ?」
あ、また言っちゃった。女性限定初回サービスはデフォルトだけど。
「きっ、綺麗・・・・・・・・。おっ、大人をからかうもんじゃない・・。それに、銀貨10枚でも安すぎるのにさらに負けるとは、何か裏があるのか?安くて粗悪な品と言う事はないだろうな?」
おー、中々好感触なのかな?
というかやっぱり子供扱い・・・。ボク130cmしかないチビだからって酷いなぁ。
「元出がかかってないからね、ここらは、ゲルゲル草の産出地だからね、ほとんど瓶代みたいなもんだよ。後、ボクが作ってるから、輸送費や管理費、技術費とかはかからないからね。」
ま、他の店じゃこの値段はまずだせないだろうね。
「わ、分かった・・・。銀貨8枚だな・・。効かなかったら、承知しないからな。」
ボウの口説き文句に疲れたのか、それとも、この値段の安さに引かれたのか、そう言うと銀貨8枚をカウンターに置く彼女。たぶん前者だろう。
「毎度あり、またきてねぇ、綺麗なお姉さん。」
つい、顔が笑顔になる。別にこれは、口説きたい一心で言ってるわけじゃないんだ。
笑顔は商売に大事だし、大体どんなパーティーでも財布の紐は殆ど女性が縛ってるから媚びることに越した事はないし。
「っう・・・・・・・・・・。}
頬を紅く染め店を出て行った。
「ん〜可愛いねぇ。」
うん、ごめん。あーいう態度を見るのも、たまらなく好きなんだ。
その日の午前中は、それから2,3のパーティーが買い物に来た。
「12時だよ」
「お昼だよ」
「ご飯を食べて休憩だよ!!」
壁掛けの魔法時計から、12人の小人型ゴーレムが出てきてそう告げる。
残りの8人は何をしてるかって?それは金貨30枚払ってあの時計を買って確認して欲しい。
「さて、ご飯でも食べようかな?」
ボクは、入り口に休憩中の札をかけに行こうとした・・・・その時、誰かが入ってくる。
「いらっしゃい、あ、今朝の綺麗なお姉さん、忘れ物?」
それは、今朝の鎧姿の女剣士のお姉さんだった。
ダンッ!!
「どうい事だ!!」
カウンターを殴りつけるようにして、怒鳴るお姉さん、ちょっと、怖いよ。美人って怒ると本気で怖いんだよねぇ。
「え?何が?」
「何がじゃない、今朝のグリーンポーション、やはり粗悪品、それより毒だったではないか!!」
「え?そんなはずはないよ、どういう事?」
驚きが隠せない、確かに配合に失敗すれば毒になりうるのがグリーンポーションだけど、アレはきちんと完成していた。
きちんと試飲もしたし、あれが毒なら、ボクの体に何か異常があるはずだし。
「あの後、宿にもって帰ってすぐに、風邪を引いて寝込んでた仲間に飲ませてやったんだ、そしたら、一気に熱が上がり今じゃ死に掛けてる、どう言う事だ!!」
「あちゃー。」
「なんだその態度は!!貴様のせいで、あいつがもしもの事になったら!!!」
グイっと、黒ローブの襟元をつかんでくる。
「わかったから、落ち着いて、とりあえず、その宿につれってくれるかな?様子を見ないと・。」
「だから、お前の品が粗悪品で!!」
「早く・・・早くしないと、手遅れになるよ・・・・。」
相手の言い方に気になる所はあるけど、これでもボクは魔術師の端くれ、今程度で熱くなったりしない。・・・・・なっちゃいけない。
「クッ、分かった、しかし、会ってどうにもならなければ、お前を斬る。」
「ふぅ、お好きにどうぞ・・・。」
やっと、襟元を離してもらい、宿に向かう事にした。
道中は終始無言だった、熱くなってる彼女に何を言っても無駄だし都合はいいんだけど、気まずいし、怖い。
「はぁっ、はぁっひゅー、はっひゅー」
宿屋の部屋につくと、パジャマ姿の女性が、呼吸を荒くし、顔を真っ赤に染めてベットに横たわっている。しかも呼吸音が変だね、素人目に見ても完全に肺炎を起こしてるみたいだ。
素人目に、そうボクは医学はまったくの素人だ、彼女を診た所で、彼女の病気を治す事などできないだろう・・・。
「どうしてくれるんだ!!」
「そう、怒鳴らないで・・・。」
女剣士のお姉さんを制して、ベッドの彼女に向き合う、ベッドに立てかけてある十字を象ったロッドを見る所、僧侶なんだろなぁ。剣士と僧侶、まぁベターな、組み合わせだね。
「大丈夫かな?意識はあるかなぁ?」
「はっひゅー、はっひゅー、はっひゅー」
うっすらと瞳が開く、剣士のお姉さんと同じ金の瞳だ・・・・髪も同じ金髪だし、姉妹なのかな?
「君は、グリーンポーションを飲んでしまったみたいだよ?分かるかな?あ、返事はいいよ、それで、今からボクがコレを飲ませるから、飲み込めるかな?」
ローブの袖から一本の試験管を取り出し、彼女にみせる。
「おい、また粗悪なポーションを飲ませようというのか!!貴様の薬は信用に!!」
「お願いだから少し黙ってくれないかな?」
ボクは・・・・自分の黒い瞳を紅に染め、剣士のお姉さんを冷たく睨む・・・。
魔眼、ま、その名の通り魔力の篭った視線で、金縛りの術をかけておこう。怖いし。
「クッ、な・・・何を?か・・・体がっ」
この状態で喋れるなんて・・・・長くは効かないだろうなぁ。
ボクはそう思い試験管の蓋を開け・・・・口に運ぶ・・・。そう、自分の口に・・・・。
これくらいの役得は貰っちゃうさ♪
「チュッ・・・・・ちゅるちゅるちゅる」
僧侶のお姉さんの唇に口をつけ、薬を流し込む。
「きっ、きっ、貴様ァアアアアアアアアア!!」
飲まし切った瞬間、剣士のお姉さんが腰の剣を引き抜き切りかかってきた!
って冷静に分析してる場合じゃない、本気であの術解いちゃったよ、ちょっとコレでも自信あったのに!!
「ちょっ、まって、ストップ」
すんでの所でしゃがんで横薙ぎを避けるが、しゃがみ込んだら尻餅をついてしまって、上手く動けない・・・・。
危ない、魔眼は?アレは何度も頻繁に使えるもんじゃない。まずっ、不味い!!
「死・・・・・死ぬぅぅぅ、死んじゃう、死にたくなぃぃぃ」
「シネエエエエエエエ!!」
瞬間・・・・・ボクの体は真っ二つになった
ゲームオーバー
なんて事になるかと、思った瞬間、僧侶のお姉さんの体が光りだした・・・。
剣士のお姉さんが、そちらに気をとられ止る。
ちなみに、ボク頭上2cmくらい上に刃がある・・・・。ちょっとチビッタかも・・・。
「なっ・・・なんとか間にあったよ・・。」
「姉さん、やめてください・・・・。」
「どういう事だ・・・?」
剣士のお姉さんは、驚いた顔で、こちらを見ている。
ま、兎に角、剣をしまってほしい。
「つまりね、風邪をひいてる人にポーションを与えると、体は一応生命力が上がって回復するんだけど、体内のウィルスも元気になって、風邪は悪化しちゃうんだ。」
ボク達は、その後宿屋の一階の酒場で少し遅めの昼食を食べながら、事情を説明する事にした。
ちなみに、二人のデザートはチーズケーキ。やった、ナンパ初成功じゃないかなこれ?
「これは、回復魔法にも言える事だよね?僧侶のお姉さん?」
「そうですね。生命力を吹き込む系統の回復魔法もその事が言えます、まさかアレがグリーンポーションだったなんて・・。あ、ちなみに私の名前は、リーナです。」
「あ、ボクはクロフユだよ。えっとじゃ、リーナさんは知らずに剣士のお姉さんが買って来た、グリーンポーションを飲んじゃったわけ?」
「いや、一気に治してやって驚かせてやろうと思ってな・・・・。すまない・・・・。あ、私も自己紹介がまだだったな私はライナだ。」
「ライナさんは、知らなかったんだ・・・・。こう言ってはなんだけど、病気の人には、ポーション飲ませちゃいけないのは、冒険者の中じゃ結構有名だよ?」
「すみません、私達先月町を旅立ったばかりの新米なんです。冒険者学校もでてませんし・・。私は教会に通っていたのでこの事はしってましたが・・。」
「すまない、良く知りもしない癖に、粗悪品だと疑い、毒だなんて言ってしまって・・・。本当に申し訳ない!!」
きっちり頭を下げるライナさんにあわせて、私も謝りますと言って頭をさげるリーナさん。
「ははっ、初心者さんかぁ、そりゃ仕方ないね、二人ともいいから、ね?・・・・・それにしても、誰か先輩冒険者についてもらったほうがいいよ?この町は近くに遺跡や迷宮などそろってるから冒険者の町とまで言われてるからね、何人か声を掛ければ、すぐに助けてくれるよ?二人とも美人だし。」
「それも、考えてみたんですが、私達女二人ですから、良からぬ事を考える人も少なくなくて・・。」
「まぁ、そう言う奴は大抵私が追い払うが・・・。信用の置ける奴がいなくてなぁ」
「そっかー、じゃボクなんかどう?もちろん店があるから、この町の周りだけになるけど」
笑いながら言って見るが、二人の反応は半笑いだ・・。ちなみにこの町の周りだけと言っても先程言ったように、迷宮や遺跡そして小さなダンジョンがいくつもある、ここを根城にしても一生かけても冒険しきれないくらいの規模があるので、後半の条件が問題じゃないのである。
「いや、気持ちは嬉しいし、クロフユなら信用できるが、冒険とは厳しいものだ、私達が地元の町からここに来るまでにも、何度命を失いかけたかも分からない。」
「そうです。それに、クロフユさんはまだ子供じゃないですか?親御さんがお許しにならないでしょうし危険です。」
「あのねぇ・・・。親はいないし、ボクこれでも16歳なんだけど・・・。それに10歳からここら冒険してるから、6年分は先輩なんだけどなぁ?」
「「え”」」
ふたりあわせて、凍りつく。まぁ、二人とも年上と言っても18位だろうから、そんなに年が近いとは思ってないんだろうねぇ。ま、年齢を言うと皆似た感じ。
「えっとエルフじゃないですよね?」
凍りつきから解除された、リーナが問いかけてくる。
「ホビットでもないよ。ちなみに二人は幾つ?」
「私達は二人とも18だ、双子なんだ。」
遅れて、解凍されたライナさんが答えてくれた。
「へぇ、で?どう?ボクが、仲間じゃ不安かな?それともこの町から離れなくちゃいけない理由とかあるの?」
「いえ、元々この町に腰を下ろして、冒険者家業で生きていこうと思っていましたので、クロフユさんさえ、よければ・・・・。ねぇ、姉さん」
「そうだな、よければ、私達の仲間になって欲しい。クロフユ程の魔術師なら歓迎だ。」
「うん、いいよ、あとソレと、ボク魔術師じゃないよ?」
「嗚呼、魔具師だったな。」
「魔具師でしたら、どうやって戦うんでしょうか?」
「ま、それでもいいんだけど、厳密には、ボクは魔学士って名乗ってるんだ、魔を学ぶ者、魔学者の卵ってとこかな?戦闘方法は、又今度見せてあげるよ」
「それでは、改めてよろしく、魔学士クロフユ・・・。」
「そうですね、よろしくお願いします、クロフユさん。」
「よろしくね、リーナさん、ライナさん。」
ボク達は、こうして出会い、そして始まる。
「あ、クロフユさん結局、私の病気を治した薬ってなんですか?医学的な薬じゃなさそうでしたけど・・・。」
「そうだ、クロフユ、リーナのあの輝きはなんだったんだ?」
「ああ、アレはね・・・・・・・。」
ボクは、笑いながら返す、この答えを聞いた二人の驚く顔を想像して。
「エリクサーだよ・・・・。ま、劣化版だけどね?こう見えても、世界に3人しか居ないエリクサー精製者の一人なんだよ?」
「「えーーー!!!」」
今日の教訓!!『ポーションは、病気の時に飲むな!』
どうもはじめまして走る地軸です。
この度は私の作品を呼んで頂きありがとうございます。
まぁ、しばらく書いてなかったの肩ならし気分で書いてみましたがどうでしょうか?
基本私は、人に注意されたい、人間なんで、沢山注意がくると嬉しいな。
ここをこーしたらいーとか、ね?
反響があれば、続きを書こうかなぁとか思ってます。
なければ、別作品を作ろうかなとか。
とりあえずなんでもいいんで感想ください
それでは、地軸でした。 (地_軸)ノ
Σ= ノ L