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説教

 さて、オムニスから追い払われるように長老の家から出ると周りのドラゴンが呆れたような顔をしてこちらを見ているという実に気まずい空気が広場にあった。まあ迷惑かけたなとは思ってるよ。シャインの速度抑えられなかったのは自分が悪いし、やはり完全体で近距離移動なんかするものじゃないとつくづく思った。

 今日はとっととこの谷を出ようと思いシャインに乗ろうとするとシャインはこちらには気も留めずに俺とは反対側を見ていた。そしてズシン!、ズシン!、と地底を揺らすような大きな足音が聞こえた。

 振動で俺が倒れてしまうのもしょうがないだろ。笑うなアルティ。てかなんでお前は大丈夫なんだよ。そして足音が止むと空気がその足音がした方に急激な速さで流れていく。今度はアルティが風に煽られて転んだ。にまにまと見ているとアルティが怒ったか照れたかあるいは両方か、俺のすねを蹴り飛ばしてきた。突然の一撃に痛みで言葉も上手く継げないでいる俺に今度はアルティが勝ち誇ったような顔を向けてきた。

 そこで俺はとなんやかんややっているうちにそれに夢中になり時間にすればちょっとの間だが他のことに気が回らなくなっていた。あの風が何を意味しているか知っていたのに、そしてこれから起こることもわかっていたはずなのにアルティとじゃれるのに夢中になっていて何も対処をしなかった。もちろんアルティはこれからどうなるのか知らなかったから注意することもできなかったのでこの後アルティに非難を浴びるが甘んじてそれは受けた。


「ばっっっかっも~~~~~ん!!!!」


 その声だけで空気が引き裂かれて体全体を打ち付けてきた。倒れた状態じゃなかったら吹き飛んだかもしれない。おもわず耳を塞いだがあとのまつりで手を耳から離しても隣でアルティが口パクしていて何を言っているのか聞き取ることができない。ステータスを見ると聴覚欠損となっていた。HPは攻撃扱いじゃないからか減ってはいないが感覚が一つ無くなるだけで思わぬ恐怖に襲われる。一応アルティに大丈夫かと言ってはいるが向こうもこちらの言葉は理解していないっぽい。そして続けざまに最初ほど大きくないが空気の振動が襲い掛かってくる。

 とりあえずシャイン越しに覗くとシャインより大きい白いドラゴンにシャインが怒られている図が見えた。多分シャインも「ごめんなさいぱぱ」とか言って謝っているんだろう。前も同じことをやらかした時とか、一人で遊んでいて密猟者に捕まってしまった時にも帰ってきてから大きく鳴いたあとこの感じでお説教をくらっていた。そのとき初めてこの声を聞いたんだが二度目以降は結界なりなんなりで防いでいたので直撃をもらったのは二度目だ。

 本当ならさっきの足音や風でわかるのだがアルティとじゃれていたら不覚を取ってしまった。

 しばらくしてやっと聴覚がもどってきた。音も突然聞こえるわけじゃなくて自然にフェードインしてくる感じだ。しかしフェードインしてくるときに思ったのはこれ以上音量は上げたくないだった。それだけ竜の説教はうるさい。そしてシャインの父親がこちらに気付いたようで


「マモルよ、久しぶりだな。いつもいつもここに来るたびにこんな騒ぎを起こしてるだろう。砂煙が上がったらお前たちの来訪だと皆思っとるよ。この谷の皆なら丈夫だし家も大したものがないからいいが人間の街でやったら死人が出るぞ。このボケ娘にも言っといたが少しはスピードを遅くして上の人間が景色を視認できるようにする位がいいんだ。完全体の最高速なんてよっぽど熟練した竜騎士でもそう易々とものにできるものではないのだ。それを素人から毛が生えたようなお前にできるわけがなかろう。それにシャインお前もだ。さっきも言ったが完全体ならばすぐに大陸の端と端を行き来できるかもしれない。しかしそれでも竜の方も完全体の体を操るのに訓練がいる。人間の身体だって上手く歩けるよう、上手くしゃべれるようとするためにかなりの練習をするではないか。だからこそ竜の完全体はまずは竜の本能に勝つこと、そしてその大きな力を持った体を操るためには段々と力の強い体に化けていって最後に完全体となるのだ。しかしお前はその間をやらないで完全体に成れてしまった。他に変化できるのも飛竜のみ。天才なのかもしれないが本能も完全には抑えられていないお前ではいつか誰かに迷惑をかけるかもしれない。だからこそ力の使い方を学ぶために魔物調教の技術も持っているマモルについていき体に力の使い方を覚えさせる旅に出したのだ。本当ならば谷の外は危険が多いので出したくはないのだ。しかもどこぞの馬の骨かもわからぬ男などと一緒にな。しかしシャインはかわいいからまあ男なら一度は話しかけてみたいと思うのも無理はないからそんな虫どもから守ってくれるマモルはいいやつなのかもしれん。しかしマモルよ、そのいいやつが悪いやつになったときはわかっているな? いくらシャインがかわいいからって………ということなのだ。ではよろしく頼むぞマモル」


 途中から聞いてなくほとんど寝落ちかけていたので何の話をしていたのかわからないが多分娘自慢だろう。しかし年寄りは話が長い。長老の説教と今の説教の性でもうログイン限界時間まであとわずかしかない。もうシャインの実家で寝かせてもらってログアウトするか。どこかでログアウトをちゃんとしないと強制ログアウトくらって次にログインした時にペナルティがあるからな。

 もうダンジョンのことは後に回してすぐに寝かせてもらうよう交渉しよう。

 そして俺はやり残したこと満載でログアウトする羽目になった。



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