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ドラゴンの谷の長老

 ラーヴァの島を発ってから30分位でドラゴンの谷の端っこが見え、シャインに減速する指示を出す暇もなく、それからすぐにドラゴンの谷の中心に着陸する。膨大な砂埃と急減速に押しつぶされる俺たちと共にな。ドラゴンの里の住民も驚いて竜になったりそれに踏まれたりで、竜の声や竜に押しつぶされる人の悲鳴、竜になった時の周りの物を壊す音などが怒濤の音の洪水となって辺り一面を染めた。最終的に誰かが風魔法で砂埃を吹き飛ばしたら阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。


「静まるのじゃー!! 怪我人は水と光のみなに治療してもらうんじゃ。土と木は建物の修理、風と火は空気の入れ替え、闇と雷はー……どうしようかのう? それで誰がこんな騒ぎを起こしたのじゃ?」


 中心の広場にあるでかい家から一人のじいさんが出てきてこの騒ぎを鎮め始めた。怪我人も治癒魔法の使える竜の迅速な手当てによりすぐさま回復し、更にその傍らでは木を使って骨組みを作ったものに土を張り合わせて建物を修復していた。そしてさっき指令を出したじいさんはギロリと広場を見渡し、シャインの上で這いつくばって辺りを見回していた俺と目が合うとにこやかな笑みを浮かべて


「マモル殿、よう来なさった。さて、この騒ぎを起こしたのはお主らかの? もしそうなら然るべき理由が聞きたいものじゃの。つまらん理由なれば、そうじゃな……ここにいる埃まみれた者たちを洗ってもらおうかの。もちろんお主一人でじゃ、どうじゃ? 理由があるならばわしの家で聞こうかの。さて、理由はあるのかの?」


 あのじいさんがこの谷及び連合の総督のオムニス・ニヒルだ。普段は長老と呼ばれている。しかしあの覇気は睨まれたものを竦み上がらせてしまう。背筋に冷たいものを感じた俺はとりあえず今日起こったことを説明することにしたので、シャインに命令し長老の家に乗せてってもらう。身体が急激なGの変動でまだ碌に動かせないのだった。この状態でドラゴンクリーニングの刑なんて死んでしまう。

 ドラゴンクリーニングとは谷中にいる完全体のドラゴンを丁寧に一匹一匹を洗うことであり、恐ろしく手間と時間がかかる刑罰である。洗っていると時折脱皮した竜の鱗が剥げるが刑罰でやっているときはその鱗も没収される。普段ならその鱗が貴重なものなのでその仕事は人気があるが、刑罰は対価が得られずにしかも他の探索者の仕事を奪ってしまうので評判も悪くなるという踏んだり蹴ったりのものだった。

 竜の谷の家は入口がとても広くとってあり、ある意味家よりも倉庫と言った方がいい様な大きさを誇っている。これは完全体の竜でも住めるようにだそうだ。そのおかげでシャインも変化せずにそのまま入ることができた。


「それでなんなのじゃ、この騒ぎは?」

「えっと、今日は立て続けにこんなことがありまして……」


 長老が理由を問うてきたのでかくかくしかじかと今日会ったことを説明した。ダンジョンコアとラーヴァのことは特に詳しく説明した。


「ほう、そんなことがあったのか。しかし急いでいたとはいえあんな乱暴な降り方をしたらいかんじゃろ! シャイン、谷を出てから多少は成長したみたいじゃが、お前は飛べるようになってから日が浅くまだ心が幼いからのお。ちゃんと主人のマモル殿のいうことを聞くのじゃよ。マモル殿も命令は細かく曖昧な表現を慎むのじゃ! 解釈が違えばどんなときにも命に係わるんじゃぞ! 竜に命令するということはそういうことじゃ。」

「オムニス、もう良いではありませんか。それよりもラーヴァが教えを請うてきていることの方が重大ですよ。マモルとシャインの説教は後でやりましょう」


 長老の説教を遮ったのは若き乙女にも見えるが妖艶な美しさを持っていて、その姿を目に入れたら目を離すのが惜しい位の美女だった。マーテリア・エレメントゥム、若く見えるが長老の奥さんでしかも姉さん女房らしい。竜のアンチエイジングの第一人者を名乗っており、若くなりすぎない、老けすぎないといった精神年齢の調整のおかげで一番美しく輝く年齢を維持していると聞いたことがある。この二人が属性竜の始祖であるためにこの谷に住んでいる全ての竜の母親もしくは祖母といった関係であるが、おばあちゃんと呼ぶととても口では言えないようなことになるらしい。


「マーテリアよ、竜と人との関係は脆弱なものなんじゃ。それをちゃんと若い者に言っておかなければいかんからの」

「その口調やめたらいかがでしょうか? ここには他に誰もいませんし、それにフリとはいってもオムニスのそんな姿を見ていたくありませんの」

「いや、だけどな、い「見ていたくないんですの」」

「わかった」


 二人の押し問答の末に長老が一つ大きなため息をついた。すると見た目が自然と若返り、白かった髪は黒に、顔にあったしわやシミも消え去っていく。そして最終的には背の高い美青年に化けてしまった。精神年齢の思い込みを利用した変化だそうだがこの人の他にできる人を知らないし、この技術は門外不出で他の竜は知らないらしい。ではなぜ俺とシャインの前で変化したのかというと、シャインを密猟者から助け出す時に長老が本気を出すと言って若返ったのを見せられたから知っているのだ。しかしまあこの夫妻はこの格好で並んでいると絵になるな。


「これでいいんじゃろ?」

「口調」

「これでいいんだろ?」

「やっぱりオムニスはその恰好が一番かっこいいのよ。やっぱりあの老人仮装やめましょうよ」

「あれはあれで必要なんだよ、マーテリア。こんなに若いとなめられちゃうからね。特に皇国の馬鹿とか、帝国のアホにね。だから私は普段から長老でいないとね」

「あんな国逆らったら滅ぼしてしまえばいいじゃない。あなたと私だけで皇都は潰せるわよ」

「難民がこちらに来たら大変なことになるだろ。それにお前を傷つける訳にはいかないさ」

「ゴホン!」


 甘い空気に耐えられなくなって咳で会話を止めた。それに最後は甘い会話じゃなくて危ない会話だったというのもある。皇国を滅ぼす計画とか立てないでください。


「あ~悪い、お前らのこと忘れてた。しかしまあ、あのラーヴァが属性の混合のことを学びたいと言ってたか。あいつが生まれたころはまだハーフなんて禁止していたからな。だけどあいつの親たちがその禁を破ってあいつを生んだはいいが誰も育て方がわからなくてあんなところに放置してしまったんだよね。火と土の魔力を与え続けなければ死にかけるってわかったときは大変だったんだよ。それでそのあと、ミストドラゴンとかアクアレイドラゴンとかハーフが増えてしまってな、そこから混合属性の修練が得られたんだよ。それで教えるのは構わないけど誰をあの溶岩の中に行かせようかね」

「風塵竜のサントムはどうでしょうか? 風と土の属性竜ですわ」

「まあいいかな。相性は悪くないからね。よし決まった、さあマモル君ラーヴァのことはこれでいいだろ。じゃあ俺はマーテリアとちょっとヤることがあるので帰った帰った」

「オムニスさん、ちょっと待ってください。ダンジョンを造るのに何かいい場所はありませんか?」

「なら子供たちの遊び場ってことでそこらへんに作ってよ。そしたらラスボスは私たち夫妻が担当しよう」

「いや、探索者に厳しすぎますってそのダンジョン、しょっぱなから幼竜がいるダンジョンって。それに強すぎる探索者が来たら子供たち殺されちゃいますよ」

「そうか、ではうーむ…、じゃあ谷の中心に川があるだろ、その川沿いに行けば何かあるんじゃないのかい? さあ帰れ帰れ」

「ありがとうございます? じゃあ帰ります」


 投げやりな言い方にお礼の言葉の語尾も上がってしまった。


「じゃあまたな。シャインたち仲間を大事にしろよ」

「わかりました」


 そう言い交してオムニスの家を出た。とりあえずさっき言われたとおりに川沿いを下ってみよう。鍾乳洞でもあったらいいんだけどな。だけどそんな地形だと固定ダンジョンの可能性もあるか。探して見当たらなかったらラーヴァの島の近くの無人島を探してみよう。

 そう思い俺は竜に跨りドラゴンの谷を後にした。

 



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