友達と成長
シャインに乗ってのんびりと霧を目指す。しかしあそこに群島があるとは知らなかった。昔、掲示板であの霧の海に船で行った人の話があったが、霧や風にまかれて方向もわからなくなった後にいつの間にか霧から抜けて外に出ているらしい。絶対何かあると思われているがどうにも攻略方法がわからなく攻略組の一部が張り付いてるとの噂だ。
とりあえずこのまま突入してみるが鬣を握る手に力が入っているのを感じた。それはシャインにも通じてしまったようで飛行速度が少し遅くなった。
ボフッ
霧の中に入った途端風が吹き荒れる。前から横から時に凪を挟み斜め下から上から。時に雷を伴って襲ってきた。シャインが風に煽られて態勢を崩す。
「いやあぁぁ! ヘタレヘタレちゃんと押さえてて! じゃないとおちちゃうぅぅ~」
「鬣も掴んどけ! あと雷くらっても力抜くな!!」
騎乗している俺とアルティも鬣をしっかりと握りしめ転げ落ちないように竜の背中にへばりついた。どれくらい時が経ったのだろうか何度か雷を浴びながらも必死にしがみつき、上と下もわからなくなったころ風がいきなり止んだ。そして目の前に広がったのは海、遠くでどこかの島から噴煙が上がっている。
よくよく見ればどこかの島じゃなくてラーヴァの島だった。結局霧は突破できなかったようだ。しかしながらどうやってラーヴァはあの霧の中に島があることが分かったのであろう?
鳥の噂話と言っていたがいくら鳥でもあんな風の中を通り抜けることは無理だろう。なにか攻略法があるのではないかと思うが一部の人しか行けない場所にダンジョンを造っても意味がないのでラーヴァには悪いがここはやめよう。てか前人未到の地だといつまでも人が来ないとかありうるからな。それとアルティのLVが上がる前に高LVの探索者にボロ負けとか絶対いやだね。クリアされたらアルティも消えるっていうし、どんな探索者が来るかは考えないとだめだな。まだ数時間を共にしただけだけど情も移ってるし、とりあえず初心者でも来やすいダンジョンを目指さないとな。
「いつまで覆いかぶさってるんだよ! もう大丈夫なんだから離れて!」
そんな考え事をしていたら腹に肘がずぶりと入った。息が止まり、背筋が冷える。フレンドリーファイヤだからダメージも痛みもないけどそれだけに妙な感覚に襲われる。しっかしアルティの性格の活発ってこういう性格になるのか。まぁ出会いも悪かったしな。まだ警戒されてるんだろう。
そうこうしているうちにラーヴァの島の上空まで来ていた。一度休みたかったのでシャインには火口に降りてもらう。そして一鳴きしてもらいやってきたラーヴァに訪問と調査結果を告げる。
「あ~ごめんな、あの霧を抜けるのはコツがあるらしいんだよ。だけどマーメイドや鳥たちがよく噂をしてるから始祖竜に乗っていけば行けると思ってた。
えっ? そのコツを教えろって? 別に詳しくは知らないけど魔法がどうのって言ってたよ」
また聞きになるしもう今は行く気もないが、何らかの魔法で行くことができるらしい。今度余裕があったら鳥について行ってみようかな。
「他の島だとここから大陸の間の島だけだね。来た時に見てるかもしれないけどあまり大きい島は無いよ。大きくてもここよりは小さいしね」
「そっか、ありがとうな。ちょっとこの島で休ませてもらってもいいかな。さっきの悪天候で疲れてるんだ」
「それなら歓迎するよ! うち来る!?」
ラーヴァのテンションが1段階、2段階、いやもっとだ。すごく上がってる。だけどその燃え盛る尻尾を猛烈にフリフリするのをやめてください。あちこちに溶岩が飛んでるから。俺にかかったら火傷じゃ絶対にすまないし。
そんなノリノリのラーヴァは壁に手を当てて魔力を籠めていた。すると隠し扉が開き地下への階段が現れる。降りていくラーヴァについていくと降りるごとに熱くなるので途中で全員に熱気耐性と火耐性を付与し、多少心地よくした。それでもアルティは
「あ~、あっつい、もう洞窟全体から熱気が溢れているよね。僕もダンジョン造ったらこんな階層作ってみようかな。熱さに悶える探検者とかも楽しそう」
熱さにやられての発言だと思いたいです。しばらく降りると広い円形の部屋が見えた。壁の一部からは湧き水のように溶岩が流れ落ちている。そして天井からもまるで水滴のように溶岩だったものが落ちてくる。
「ここが俺の部屋。そしてあっちの通路がボス部屋に行く通路、そして上が火口かな。まあゆっくりして行ってよ」
「ごめんなさい。やっぱり島の上でテント張って休むよ。さすがにこの部屋は暑すぎる」
アルティとシャインの縋り付くような目を見て、すぐさまこの部屋を出ようと、帰ることを告げると
「やっぱりマモルは外の者なんだな。俺はこの島でしか居場所がない、さらに言えばここしか居場所が無いんだ。わっかてるさ。彼女たちも火属性も土属性もない。それじゃここは居づらいよな。そうだよわかってるさ。だけど初めてのお客さんを何もせずに帰してしまうのは悲しいし悔しい。初めて俺と話してくれた人と気軽に話せないのもそうだ。俺はどうしたらいいんだろうな? 出てっていいよ。アルティちゃんだっけ、彼女なんかはもう辛そうだもの。俺は待ち続けるよまた来てくれるのを、じゃあ……またな…」
彼はこちらに背を向け寂しそうにそう言って部屋の1段高くなっているところで丸くなった。
俺はかける言葉が見つからずに
「また遊びに来るよ」
とだけ言って来た道を帰る。山頂まで誰もしゃべらなかった。そして山頂に着いた時シャインが
「やっぱりおじいに話してみるよ。彼が力を制御できるように、彼が外に出られるように、彼が気軽に話せる友達が作れるように。おじいなら何とかしてくれると思う」
「じゃあ今からドラゴンの谷に行こうか。なんか休む気が失せちゃった」
「優しいですね。またーは」
「いいの? またーを言い直さなくて」
「いいんです。これは私だけの呼び名です」
「う~、僕の前でいちゃつくな~、はいはい離れて離れて」
どっかの誰かの性でムードがぶち壊しになった。シャインが笑う、俺もつられて笑い出す。そしてそれを見たアルティが呆れたような顔をして僕らを見てる。
「シャイン、竜化完全体。急いでドラゴンの谷に行こう」
「はい、わかりました。またー」
「ダメだこりゃ」
頬を染めながらシャインが竜になり俺とアルティが背中に乗った。山裾を駆け下りていき風に乗り飛び立ち島を出る。後ろの島から大きな音が聞こえた。振り向くと新たな噴煙が立ち昇っていた。彼なりの別れの挨拶だろう。
そして俺たちは最高速度でドラゴンの谷へと向かった。
「う~、いつになったらダンジョン造るの~」
アルティの声は風の音で誰の耳にも届かなかった
アルティ、作者もそう思います。




