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ラーヴァの事情

「久しぶりの客人だと思って出迎えたが光の始祖竜だったとはね。じじいに俺のことも聞いたことあるんじゃねえか? 生まれたばかりの俺をこんな島に放り出したばかりか住み慣れた頃に限って勝手に捕獲隊なんか出して俺を連れ戻しにきたんだぜ。俺はドラゴンの谷とやらに帰る気はどうしてもっていうなら俺を倒して連れてけ」

「連れ戻す気も戦う気もないよ。ただあなたは条件が揃わないかぎりこの島から出てはだめ。火の始祖竜と土の始祖竜のハーフであるあなたは闇と光が混ざらず分離している状態なの。だから両方の性質を持っている溶岩から離れてはだめなの。おじいが言ってたよ光に属する火、風、雷と闇に属する水、木、土は体内で混ぜ合わせるならば修練が必要だって。あなたはその修練をしてない。だからこの島から出てはいけない」

「ほう詳しいじゃん、それじゃあいま体が維持できなくて溶岩が落ちているのもその影響か」

「そう、だからあなたはゆっくり自分のダンジョンで休んだ方がいい。おじいと君の両親にはあなたに会ったこと伝えてもいい?」

「おいおい俺のことなんて忘れてるんじゃないのか? 連れ戻しに来たのだって数百年は前だぞ」

「私だって時々あなたの噂聞いたもの」

「どうせ良い噂じゃないんだろ」


 口での話し合いは構わないが肉体言語での話し合いはやめてくれよ。俺とアルティが巻き添えで死んでしまう。

 ドラゴン同士が話し合っているのを尻目に状況の整理をしよう。

 それにしてもシャインがさっきのラーヴァの話のときにおとなしかったのはこれを知っていたからか。そしてこいつの親や長老のこともこいつより良く知ってるからこそどうしようか悩んでいてそれがきっかけで成長してしまったんだな。長老には人化の外見年齢は精神年齢に比例すると言われていたがここまで急に成長するとは思わなかった。ちなみに心が若ければ人化時の外見が若く見えると言ってドラゴンの女性たちは心の若作りに余念がない。

 しかしまあドラゴンの谷では生きていけないから生まれてすぐに火山の火口に子供を放り投げるとは子供を千尋の谷に落とす獅子も真っ青の所業だね。いくら母親の土の始祖竜が燃え盛る子供を産んで死にかけて数百年もの間病に臥せってたとしてもやりすぎじゃないだろか。まあ土の始祖竜と火の始祖竜のハーフじゃなきゃ溶岩なんて必要無いんだろうけどね。

 それで成長したら理由も言わずに里へ連れ戻しに来たのか。それじゃあラーヴァが怒るのも無理ないよな。理由はいまシャインが言ってるけど異なる属性を体内で混合させるための修練をさせたかったらしい。後に谷に住むことのできたハーフドラゴンの火と水のミストドラゴンとか光と木の世界樹竜とかのおかげで体内で属性を混合させる技術を教えられるようになったんだってさ。

 だけどシャインが言った光と闇にそれぞれ3属性ずつ属してるというのは初耳だな。もしかして魔法の真理の一部を知ってしまったのか。アルティに聞いてみようか。


「それはね光属性を祖に持つ3つの属性は光を遮らずに大地を光り溢るるものにするもの、そして闇属性を祖に持つ3つの属性は光を遮り大地に闇を作り出すものとして魔力が生成されているんだ。そしてあのラーヴァは光の火と闇の土で構成されているから魔力の扱い方を知らないうちは体内の魔力はいつもごちゃごちゃ。だからこそ2つの属性を持つ溶岩で魔力の補正をしているんだ。人間のピーーもピーーが言えて魔力をピーーでピーーするとピーーの魔力がピーーしてピーーピピーーピピーとなるから ピーーーーーーなんだよ」


 最後は全部聞き取れなくなっていた。


ポーン


 そして運営からのメールが届いた。一応読むが前と殆ど同じで、最後にサーバに負荷がかかるので禁則事項はあまりしゃべらせないようにしてください。とだけ書いてあった。

 とりあえず知りたい事は知れてしかも知っちゃいけない事も片鱗がわかってしまった俺はアルティの頭を撫でてやる。アルティは「ヘタレなのに〜」と言いながらも俺の腕の中でおとなしくしてる。

 ドラゴンたちも落ち着いたみたいだ。てかラーヴァがもうシャインの幼竜形態のサイズしかない。そしてぐったりしている。思わずシャインに聞いてみると


「長時間魔力の元の溶岩から離れたから魔力切れで死んじゃうよ。私とアルティは光属性でまたー、……ますたーも闇属性使えないでしょ。だったら彼の魔力をすぐにここで回復させる事はできないよ。やっぱり火口まで行って溶岩から魔力を吸い上げないと」


ポーン


【ユニーククエスト ボルケーノドラゴンを癒せ 

          火と土の魔力を失ったボルケーノドラゴンを癒して上げよう

          報酬 宝玉 ボルケーノドラゴン友好度UP

          Yes/No】


 そりゃあ大変だ。と思ったらクエストが発生した。すぐにYesを選び、シャインを飛竜形態にしてラーヴァを足で掴んでもらう。もちろんシャインに付与魔法で状態異常耐性と火属性、土属性の耐性を与える。そして背中に乗り山頂へ出発した。

 クエストを受けたときにラーヴァが強制的にPTに入ったので彼のHPの残量が確認できるがもう半分を切っていた。刻一刻と彼のHPは削られていくが俺にはどうすることもできない。そう思っていたら


「ますたー、ラーヴァの周りに結界を張ってあげて。強い風で体が冷めちゃうと火の属性が弱まっちゃう」


 それを聞いてまだ全快ではないがありったけの魔力を使いラーヴァの周りを結界で覆う。するとHPの減少がかなり少なくなった。俺でもできることがあってよかった。

 しかしさっきの噴火によって上空に巻き上げられた火山灰が濃くなってくると目や口、鼻などが刺激されていく。特に目は痛くて開けてられないくらいだ。鼻や口もくすぐられてくしゃみでシャインから落ちそうになって危険だったりもする。結界魔法を全体に張っておけば良かったと後悔するが、MPも無いし、もうどうしようもない。

 火山灰を抜けて火口に辿り着いた。すぐさま火口の中に向かってラーヴァを投げる。そして溶岩が溜まっていない地帯にシャインが降り立ち俺たちも地面に降りた。火口に溜まっている溶岩を見てると少しずつ水位(溶岩位)が下がっていくのが分かった。そして大きな巨体が作られていくのが見える。


ポーン


【クエスト ボルケーノドラゴンを癒せをクリアしました】


 クリアメッセージが流れたってことはラーヴァも回復したんだな。良かった。まあ火口に放り込むなんて無茶苦茶な荒療治だったけど。


「シャイン、アルティ、もうラーヴァは大丈夫そうだ。シャインがいなかったらどうなってたことか」

「ますたーのふよまほうがあったから運べたんです。あつくってふつうはあんなに長時間もてませんよ」

「そういえばシャインは結局ラーヴァのことどうするの? さっきまでずっと話してたじゃん」

「かれは谷のみんなとかかわり合いになりたくないんだって、だからここでこの先もくらすって」

 

 少し寂しそうにシャインが言った。竜の表情なんてわかりづらいけど声を聴けばわかる、……って竜形態でもシャインがしゃべってる。


「あっ、本当だしゃべれるようになった。わーい少し大人になったよ、また、…ますたー」


 俺もつい声に出してしまったらしい。それで気づいたのか首を振って喜んでいる。


「しゃべり方も変わったな舌足らずな感じじゃなくなったな。そんなに無理に直さなくてもまたーでもいいぞ」

「う~、はずかしいからまたー、……ますたーでいいの!」


 耳がキーンとなった。竜形態の声は低くて力があるから叫ばないでほしいな。


「大声出すなら人になって下さい。鼓膜が破れるかと思った」

「わかった。せいちょうしたわたしを見て」


 シャインはさっきと同じくロザリーくらいの年齢に化けた。

 見た目は少し背が高くなっただけだが雰囲気に少し甘えん坊さんな感じが無くなった。しかしかわいいものはかわいい。ついつい


「やっぱりシャインはかわいいよ」


 すると少し恥ずかしそうにこちらを見る。頭を撫でてやるとちょっと俯く。いまは溶岩の光でわからないけど顔が赤くなっているのではないかな。

 この間まで恥ずかしいなんて思っていない幼さがあったのにもうそれが無いとは女の子の成長は早いな。まだ十代なのに娘の成長を見守るお父さんの心境になってしまった。


「やっぱりヘタレは変態? 大きくなったとはいえまだその年代は幼女の範囲だよ。手を出したら犯罪? 神様~こいつに天罰を」

「アルティ、俺は変態じゃない。シャインを撫でたのだって家族の愛だ。娘みたいなもん。それと俺をヘタレって呼ぶな~」


ポーン


【倫理コードに引っかかるような行動はご自重ください】


 おい運営、こんなやり取り見ている暇があったら俺にダンジョンの物件を紹介してくれ。間取りは50m以上の絶壁に囲まれた直径1km以上の島だ。


「シャインとその仲間たち。危ないところを助けてくれてありがとな。これは礼の《溶岩の宝珠》だ。中には溶岩の力が詰まっているんだ。食べるとうまいぞ」


 いつの間にやらラーヴァが復活していた。そして渡されたのは《溶岩の宝珠》土と火の魔力が籠められた宝石だ。普通は杖とか装飾品に付けるもので食べ物じゃないと思うんだが。


「これってラーヴァが外でどうしようもなくなったとき使えるんじゃ?」

「そうですね。土と火のまりょくがかなりためられているのできんきゅうのときいいと思います」

「ほう、そんな使い方があったのか。ならばおやつ用を減らして少し携帯しておこう」

「だけどラーヴァは魔力の混合の修練はやらないのか? またこんなことがあってしかも誰もいなかったら死んでしまうぞ」

「確かに怖いけどこの島からも出たくないしやっぱり俺はドラゴンの谷に帰りたくないな。もう帰るなんて言葉も正しくないしね。俺はここがふるさとだから」

「でも、……やっぱりおじいに君のこと話しちゃダメ? おじいは同じドラゴンのことは里にいつもいないようなドラゴンでも気にしてるしね。それにそしたらだれか修練をおしえにきてくれるかもしれないし」

「う~ん、でも」

「ねえ、お願い」

「じゃあシャインが教えに来てよ。おれ、新しいドラゴンと知り合ったりするのいや」


 なんか若干幼児退行気味じゃないかな。てか引きこもりって拗らすとこうなるんだ。AIなのによくできてるなぁ。


「私は光のしそりゅうだから混合は上手くできないの。火と風と雷のまりょくを合成して光のまりょくにはできるけどかってに出来ることだからおしえるのもむりだし。ごめんね」


 それでも引こうとしないラーヴァを見かねて


「また遊びに来てやるからさ、この島は無理みたいだけどこの近くの島にダンジョンを造る予定だからいつでも来れるよ。あともしドラゴンの谷の誰かがここに来ることになったときは一緒に来てやるからな」

「そっか……、わかった。じゃあまた今度色々と話に来て。そういえば島を教えて欲しいんだっけ? それならちょっと山頂で話そう」


 そう促されて火口から出て山の一番高いところまで登った。そしてある方向を指さす。


「こっちが北なんだけどあそこに海の上に霧がかかっている場所があるだろ。あそこは群島があるらしいんだ。それで一番大きな島には昔の神殿跡があるから多分ダンジョンは造れないけど、周りの島なら良い場所があるかもしれないよ」

「ありがとう、じゃあこのまま行ってみるよ。また遊びに来るな」

「じゃあ一応おじいにはつたえておくね。たぶん一度ようすを見に来るとおもう」

「うん、マモルたちのダンジョンに遊びに行くために頑張ろうと思う」


 そう挨拶を交わしてから俺とアルティは飛竜サイズのシャインに乗ってこの島を発った。

 後ろからはラーヴァの寂しくも高らかな遠吠えに見送られながら。



次の島では彼らに良い物件が見つかるのか?



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