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長老への報告

 ラーヴァの島はボス戦以外は短いダンジョンだったのでログインしてから現実時間でも2時間しかたっていない。ということはまだ22時くらいなのであとゲーム時間では6時間ほどは遊べるはず。それ以上は明日がきついからキリの良いところで引き上げなくてはいけないな。そう思いながら流れゆく雲と近づく大陸を眺める。

 シャインの背中でまったりとしながらもラーヴァと話す。


「俺についてくるって言ったけど体の維持は大丈夫?」

「そらでだいちからもとおいし、くうきがうすくてひのちからもよわくてだめだ」

「自分の居心地の良い場所で育ったからあまり慣れてない?」

「そうなのかもしれない。いまはこのちびのからだでせいいっぱい」


 結構やばそうだな。確かに魔力にも属性の分布が多い場所少ない場所があるし、ダンジョンなんかはそれによって出現する魔物が違うとかあるからな。シャインなんかは夜より昼の方が強いし、コウも水辺が強い。今のラーヴァは自分の属性の魔力が薄い場所にいるので人間でいう酸欠の状態なのかもしれない。まあ普通は体内にため込んだ魔力で何とかするものだが、いつも自分の適性が高い溶岩の中にいたからかラーヴァの魔力はだだ漏れでため込むのはほとんどできないようだ。


「とりあえず火は太陽の光の中に魔力があるはずだからそれで補って、それで土はがんばれとしかいいようがない。すこしシャインには低空に行ってもらうがあと10分程度だし我慢してくれ」

「わかった、がんばる」


 シャインには少しずつ降下してもらう。そして今日は減速も忘れない。谷の端が見えたら翼を広げて減速しながらゆっくりと広場を狙って降りた。

 背中から降りるとポンっとシャインは人化した。またちょっと成長したみたいだ。少しだけ顔が近い。


「今日はうまく降りれたね、えらいえらい」

「わーい、またーに褒められた。ずっとあの子としゃべってるからちょっと寂しかった」


 ちょっとラーヴァに嫉妬してしまったらしい。おなかに抱き着いてきたシャインの頭を撫でてやる。一方でラーヴァは足元でふんっとそっぽを向いている。恥ずかしいのか甘えたいのか。だけどシャイン優先です。あー、レインも忘れてないよ。今回はありがとね。だけどくすぐったいから舌で舐めないでくれ。


「よう来たのう。で、どうじゃった?」

「こんにちは、長老。とりあえずラーヴァを連れてきました」

「ああ、こいつがそうか。まだ小さいのう」


 長老は足元にいるラーヴァを見て小さいというが、事情が事情だけにどう説明しようか悩む。しかももう竜の形を維持できてなくまるでオレンジのナメクジかウミウシみたいな形となってしまっている。


「魔力を集めるのと溜めるのが苦手なようです。今も空の上だと地属性が集められなかったみたいで」

「危なっかしいのう。自分の適応地域以外はダメか?」


 微妙な顔をする長老に今までの彼の育った環境と母親の思いを説明した。


「子を思う親の心は大事じゃがそれでも行き過ぎると害になるんじゃがな。それでおあつらえ向きに全ての魔力を親から与えられていたんじゃな」

「一応これがその母竜のコアなんですがどうしましょう?」

「おぬしの身を守るために使うがよい。守るものがあるならばそれは強く共鳴するであろう。じゃが引っ張られるんじゃないぞ」

「ねぇ、まもる。おなかがへったぁ~」

「まずはそいつじゃな。誰か火の魔力と地の魔力を分けてやれ。というかこいつの親父はどこじゃ? あれに面倒をみさせい」


 長老の一声で周りで様子を伺っていた竜の一部が動きラーヴァを連れて行った。違う方向に飛んで行ったのはラーヴァの父親であるアトムを呼びに行ったのであろう。

俺も彼に一度あのフレアドラゴンの核を見せたいものだが今日はやめておこうか。久しぶりの親子再会は邪魔しないでおこう。涙か罵声かはわからないが。


「それでは正式にクエストクリアということでお礼の品じゃな。いま溜まってる古いウロコを好きなだけ持って行っていいのと、これはシャインの好物のサンメルトのケーキ、ニロタイの煮つけ、エーゴのステーキじゃ。あとはこの黄色のワンピースと髪留めも持って行って構わんぞ」


 クエストクリア

 『溶岩竜の絆』をクリアしました

 報酬 竜のウロコ

 】


 ドラゴンのウロコは古いものでも盾や鎧、魔法薬の触媒等でなんにでも使える。売ってお金にしてもいいがダンジョンの宝箱の中身としてもちょうどいいかな。そしてサンメルトはマンゴーみたいな甘酸っぱさを持つフルーツだ。雲より上の高山にしか生えていないので普通に手に入れようとするとめちゃくちゃ大変なものである。それのコンポートが乗ったホールケーキがひとつ。ニロタイは大ぶりの魚で脂がのっていて煮ても焼いてもおいしいが名前の通り煮た方がおいしい。そしてエーゴは霜降り肉である。これをドラゴンのブレスで軽く炙ったものは表面は香ばしく、中はジューシーなレア。そしてバフもかなりつく。黄色のワンピースと髪留めもまだ鑑定してないが結構な品だと想像される。いやもうこれ、クエスト報酬ではなく途中から久しぶりに遊びに来た孫に好きなものを与えるおじいちゃんじゃないか。横でシャインは嬉しそうにもらったものを見ているわけです。


「シャイン、おじいちゃんにお礼を言いなさい」

「おじいちゃん、ありがとうございます」

「ワンピースと髪留めは着替えてきなさい。この食べ物持ってお父さんとお母さんとも話をしておいで」

「はーい、またー。行ってきます」


 そう言ってシャインは元気に自宅の洞窟の方に向かった。エーゴのステーキは惜しいがそれ以上にシャインがかわいいのでしょうがないのだ。それを見送りつつ長老の方に向き直る。すると立ち話もなんだからと長老の家に招待された。椅子に腰かけたらこちらから話を切りだす。


「それでラーヴァはどうなのでしょうか? 結構最後の方は竜の形態を保ててなかったように思えるのですが」

「あれは当分だめだ。まったく魔力は溜められておらんよ。一応こちらとしても教えはするが時間がかかるじゃろう。ただ一度コンタクトを取った時の様子からして結構気が強くわがままじゃからな。こちらの教育係にも苦労を掛けるじゃろうな」


 ため息をつきながら長老は外の方を見て言った。


「まだまだ子供っぽいところもありますよね。シャインより年上のはずなんですが」

「何事も経験じゃよ。本来ならばシャインと年も近いしお主に任せようと思っておったのじゃがあれでは無理じゃな。こちらで魔力の運用とかを教育出来たらお願いすると思うのじゃ」

「先ほどのオーブで彼専用の階層を作ってもよいのですが?」

「それではあれの母親がやったことと変わらん。成長が見込めないじゃろう。時々遊びに来て応援してやるくらいの方がよかろう。あれが成長した暁にはお主に預ける。そういうことでよいか?」

「でしたら人化がまともにできるようになってからですかね」

「そうじゃな、それぐらいが妥当なところじゃろ。竜の姿では目立って人の街にも連れてけないしのう」


 長老と話を詰めていき、最終的にはシャインと一緒にこちらで預かることになった。ただし今の状況を見ると随分先は遠そうだが。それでも時々は様子を見に来て発破をかけてほしいということだ。その方が向上心も望めることであろうと。


「じゃあ最後に会ってから帰りますね。どこにいるんでしょうか?」

「おそらく幼竜の遊び場か火竜の家じゃろう。どれ、わしもついていくかの」


 長老と一緒に外に出ると左から右にオレンジ色の何かが飛んで行った。それを他の竜が追っているのかどたどたと音が聞こえるのだ。

 


「騒々しいの、誰か! 誰か! 状況を説明せい!!」


 追っていた一人が立ち止まりこちらに来る。騒ぎが気になったのかシャインも自宅から出てきていた。俺を見て彼女もこっちに来る。


「いや、あのラーヴァという小僧が回復したとたん逃げました。それで皆で追っているのですが体が小さい分早くて捕まらないのです」

「私捕まえようか?」

「できるのかシャイン?」

「うん、あのくらいの速度ならよゆー」


 ポンと幼竜サイズになり先ほどのオレンジの塊が飛んで行った方向に飛んでいく。光と風の属性の竜は竜の中でも特に素早さが高いのでまだ魔力が不安定なラーヴァじゃ話にならないだろう。シャインがラーヴァを細くしたようで上空でオレンジとホワイトの軌跡が絡み合いぶつかった。そして数瞬後には口でラーヴァの首根っこを咥えたシャインが目の前に浮いていた。ボトリと落とされたラーヴァは地面でうずくまっている。


「偉い偉い、だけどもうちょっと優しくしてやれな」


 褒めつつもぞんざいな扱いは注意するのも忘れない。


「だって熱いんだもん。口の中やけどしちゃうよ」


 まあ溶岩だからなぁ。それでも足元のこいつはどうしたものか?


「ラーヴァどうして逃げたんだ?」


 聞くと顔をうつむけて


「目が覚めたら父さんがいてとっさに逃げた。何を話せばいいのか、何を言えばいいのかわからなかったんだ。それで飛び立ったらうまく速度を制御できなくて。それで……。止めてくれて…ありがとう」


 最後はちょっと小さくてあまり聞き取れなかったけど、それでも何を言っているのかは分かった。耐火のエンチャントをしても熱いが頭を撫でてやる。


「無理に仲よくしろとは言わないけど少しずつ話せるようになるといいね。俺も時々来るからさ」

「マモル、俺を置いてどっか行っちゃうのか?」

「まだラーヴァを連れてけないんだよ。力の使い方を覚えて人化が安定して使えるようになるまでは修行だね」


 修行と聞くとシャインもうんうんとうなずいている。ちょっとずついろいろな仕草が増えて成長してるなぁと思う限りだ。親バカはこれくらいにして


「修行ならマモルが教えてくれ。マモルと一緒にいたい」

「属性の制御なんて難しいのは教えられないし、人化なんてなおさらだよ。ちゃんとここで学び終わったら迎えに来てやるから一緒に世界を見よう」


 痛い痛い、シャイン、こっそり足を蹴るな。お前も一緒だから。


「じゃあがんばる。早く大人になれるようにする。マモルを乗せてどこまでも連れて行ってやるぜ」

「うん、その意気だ」

「だめ、またーは私の背中に乗るの! 他の竜に乗っちゃダメ‼」


 シャインが腕を抱きかかえるように引っ張った。支援特化の魔術師のちからなんて竜に勝てるわけもなく倒れこむようにシャインに身を預ける形となった。


「いや、俺の方が速いし強くなるから俺だ」

「だめ、またーはあげない。私の方が強いし速いし乗り心地もいい」


 いまのところすべての面においてシャインが圧勝するだろうなと苦笑いしながら


「じゃあラーヴァ。うちのシャインに負けないようにしっかりと修行してくれ」

「ちゃんと遊びに来いよ。絶対だぞ」


 寂しそうなラーヴァをなだめながら竜化したシャインに乗る。てか完全体じゃなくてもいいのに完全体なのは見栄か?


「ありがとうな。マモル殿。ルビンは亡くなってしまったがまた新しい仲間が我が里に増えた。こっちが報酬のウロコじゃな。とりあえず属性をばらして100枚じゃ。足りなかったらいつでも取りに来ていいぞ。そしてこれもおまけじゃ。何かに使うがよい」


【 セイント古龍エンシェントドラゴンの角

  約百年毎に生え変わる龍の角

  その中でもいにしえから生きる老龍の力が凝縮された一品】


「ありがとうございます。じゃあラーヴァのことをよろしくお願いします」


 そう言ってシャインに合図し飛び立った。後ろでは空に昇った煙で『よたれ』と上がっていた。慣れないまま難しいことするから間違えるんじゃないかなと思いながらも一度大きく旋回してから竜の里を後にした。

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