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俺は変態じゃない。ヘタレでもない。

 目を開けると白い天井が目に入った。死に戻りのときいつも見る風景だ。ホームで死に戻りなんてなんかのバグか? 運営に連絡しようかな。とりあえず起き上がってベッドに腰を掛けると部屋の扉が開いた。


「お目覚めですか、変態様」


 リリスが俺の様子を見に来たらしい。そして変態様ってなんだよ。アルティの件はちゃんと説明しただろ。そう俺が詰め寄ると


「女の子の胸をジロジロ見るような男の呼び名なんて変態で十分です」

「いやいや、俺は変態じゃないから」

「そうですか、じゃあマモル様は絶対女の子の胸を見たこともないしこれからもそのようなことは無いのですね」

「う、うん、………それでなんで俺はベッドで寝てるのかな?」


 どもりながらも答え、ついでに話を逸らすために気になっていたことを聞いてみると


「あのときマモル様から邪悪な気配が発せられて気絶してしまいました。お守りできなくてすみません。気絶したマモル様はルーに手伝ってもらってベッドに運んだんです」


 記憶の欠落が起きているのか俺の記憶とは若干違うんだが、てか邪悪な気配ってなんだよ。つっこみどころが多すぎるがこれ以上聞くのは命に関わる気がするのでやめた。


「それでアルティは? 落ち着いたか?」

「ええ、動揺を誘う原因がいなくなったのでいまはシャインちゃんやロザちゃんと遊んでいるはずですよ」


 動揺を誘う原因って俺のことか?

 だけどいまは大事なことを話し合わないといけない。


「リリス、えっとダンジョンのことについてもう一度話し合いたいからみんな集めてきてくれる。あと今度からリリスとロザリーも話し合いに参加して」


 リリスはわかりましたと言い一礼をして部屋を出ていった。

 俺はまたさっきの部屋に入るとヴァイスとルーが椅子に座っていたので声をかけて地図を広げるのを手伝ったりしてもらって会議の準備をする。

 ガブもすぐにやって来た。そしてリリスに連れられてシャインとアルティ、ロザリーもやって来る。

 アルティはリリスの後ろに隠れているし、シャインもいつものように膝の上に乗ってきたりしない。アルティはともかくシャインはどうしたんだろうと聞くと


「えーっと、へんたいさんのうえにはのっちゃだめってりりねえちゃんがいってますた。またーはへんたいですか?」


 リリスを睨み付けるが眼力で負けてすぐに目を逸らした。なんか今日のあの子恐い。


「俺は変態じゃないから座っても大丈夫だよ」


 とりあえずシャインにはそう言って膝の上を叩く。


「僕を裸を見たくせに変態マスター」


 しかしリリスの後ろからとんでもない発言が聞こえた。変態マスターって変態をマスターしちゃった人みたいじゃないか。


「またーはへんたいさんじゃなくてへんたいまたーだからひざのうえにのっていいのです」


 シャインも変な勘違いしてるし、てかその理解だと危ないからね。


「俺は変態マスターじゃない、アルティのは事故だ」


リリス越しにアルティと睨み合っていると


「まあまあ落ち着いて下さい。マスターもアルティに聞きたいことがあるのでしょう。あなたたち2人がそんな風では話が始まりませんよ。アルティ、それにリリス、マスターも若い男性ですので異性には興味が御有りになります。したがって多少なれども気になる女の子をじっと見てしまうかもしれません。しかしマスターはヘタレです。自分から襲おうなんて露にも思わないはずですし、自分から恋愛関係になりたいと思うことはあっても実行することはアルティさんをテイムする確率より小さいでしょう。然るにアルティさんが裸で召喚されたのは事故です。マスターはそのような環境に自分を置くことはまず無いんです。ヘタレですから。なのでアルティさんも先ほどのことはこのヴァイスに免じて水に流してください」

「んー、わかったよ。ヴァイスさんを信じてさっきのことは珍獣ヘタレに見られたと思って許してあげる。それでヘタレは何を私に聞きたいの?」


 呼び名がヘタレってヴァーイースーお前アルティになに言っちゃってんの? 確かに変態と呼ばれるよりは全然いいけどてか俺ってヘタレだったのか、確かにクラスメイトのかわいい女の子と文化祭で同じ班になったときとかもメアド交換したけど事務連絡ぐらいしかしてないな。まあだけどそれが普通だよな女の子にメールとか電話なんて連絡網ぐらいで十分だぜ。それが普通なんだから俺はヘタレではないよ。それともあれか中学の時に女の子たちに誘われて遊園地行くことになったけど、当日行けなくなった子が多くて結局女の子と二人で遊園地で遊んだことかな。あのときお化け屋敷で腕にしがみついてきてかわいかったな。そのあと観覧車乗って、夜景がきれいだからって帰る前にもう一回観覧車乗ったな。あれはフラグだったのか、だけど告白してフラれたら怖いからな。だけどやっぱり告んなくて良かったと思うよ。だってあの子いま俺の友達の彼女だもんね。中学卒業するときに友達が告ったらしい。だけどヴァイスはリアルでのことは知らないでしょ。じゃあID(Infinity Dungeonの略)のなかでそんなことあるのかな? 女性プレイヤーのフレンドも少ないしIDの中で話す人間の女の子ってリリスとロザリーだけだよ。


「ねえねえ、ヘタレー」


 俺はヘタレじゃないと心の中で確認していたら俺の耳元でアルティが大声を出してきて驚いた。えっとなに聞きたいんだっけ? あーっとあれか、ダンジョンの場所だな。てかヘタレって呼び名はもう固定ですか?


「ダンジョン造るとしてどこがいいのかアルティにも聞こうと思ってたんだよ。さっき変身する前に死者の森付近指していただろあれはなんでだ?」

「あーそれか、体変える前と後じゃ人格が変わってるからはっきりとは言えないんだけど、元々僕の属性は闇だったんだよ。たぶん僕をテイムしたダンジョンも闇属性のモンスターが多かったんじゃないかな? だから闇の力が強い死者の森付近が良かったんだと思うよ。でも今は属性がリセットされているの。僕たちダンジョンっていうのはダンジョンがあるところの周りの地形の影響と創造されたときにランダムで決まる主属性っていうのに影響されて内部構造や出現モンスターが変わるわけね。それと大陸全土でダンジョンの総数は変わらないんだよ。ヘタレは数えたことある? ピーー個しかないんだよ。」

「ちょっと待った。いま数が聞こえなかった。もう一度言ってくれ」

「ピーー?」

「また聞こえない」

「じゃあ耳のそばで言うね。えっとピーー個」


ポーン


【禁則事項は耳にノイズかけて除去しています。無理矢理AIから聞き出そうとしないでください。AIが壊れます。またダンジョンマスターしか知らないこともありますのでリアルでの失言にはご注意ください。】


 ダンジョンの個数は禁則事項ですか。しかもリアルでも気を付けろと、確かにこの状況だと俺と開発者しか知らないようなことも知ってしまうかもな。誰かに話したらどうなるんだろう?


「神様はダンジョンの個数は秘密だとさ。それでアルティの属性はどうなるんだ?」

「僕の属性はリセットされたから1つ自分の属性を決められるよ。あとは造った時のまわりの地形だね。自分の属性と周りの属性が相性が悪いと弱くなるし逆に相性が良ければ強くなるんだよ。だからもし単属性のダンジョンがあったらかなり強いんだよ。ヘタレはボスをテイムモンスターにするんでしょ。一番種類が多い属性は?」

「えーっと、リリス教えてくれ。細かい数はわかんないんだ」

「しょうがないですね。あちらこちらでどんどん捕まえてくるからですよ。一番多いのは狼さんたちでしょうか? ルーくんのファミリー全員連れてきたりするからですね。ルーくん細かい内訳をお願いします」

「御主人さまにお仕えし始めたときは吾輩の家族だけだったんですがその後ワーウルフだけではなく狼たちも傘下に入ってくれております。吾輩たちワーウルフとシャドウウルフが闇属性で10匹と3匹、バーンウルフが火属性で9匹、アイシクルウルフが水属性で5匹、雷天狼が雷属性で3匹、颯天狼が風属性で3匹。あとはジャイアントフォレストウルフとその取り巻きが木属性で1匹と8匹こいつらはいつも吾輩たちに反抗してきます。まだ本能が抑えきれておりません。このような感じでしょうか」


 狼の類だけで42匹か、光属性と土属性の狼がいないのか。光属性は神狼とレイウルフか、神狼の里は特殊なイベントクエストだったよな。レイウルフはソル山でレアモンスターだっけ。土属性はジャイアントサンドウルフとその取り巻きか、シールデザートの移動ボスだっけな。会うのが大変で更にテイム確率考えるとなあ。

 そんなことを考えていると


「マモル様、足りない属性の狼を連れて来ようなんて思わないで下さいね。せめてちゃんとフォレストウルフは躾けてください。逃げ出さないように工夫するの大変なんですから。あとはヴァイスさんが妖精系をシャインちゃんが爬虫類とか両生類の長です。シャインちゃんの補佐はクロガネさんですね。あとはガブさんが鳥系や不定形のモンスターをまとめています。全部で300匹以上いますのでどの属性が少ない多いとは一概には言えませんよ。まあ光属性と雷属性が少ないでしょうか。だけど今の状況だと食費と土地が足りなくなるので捕まえてこないでくださいね。アルティちゃんこんな感じでいいですか?」

「ヘタレはモンスターと友達なんだね。モンスターの属性を考えないのならば地形属性で取りやすいのは水と土と木なんだよ。あとは火山の近くにダンジョンを造れば火の力を得るし塔型のダンジョンであれば木と土の力を捨てて風と雷の力を得るんだ。地形属性で闇を取るならやはり死者の森やアレックス湖などの何らかの曰くがあるところと洞窟型のダンジョンの深いところかな、逆に光を取るなら日がよく当たる明るいところでやっぱり塔型ダンジョンの方がいいんだよ」

「アルティ、あれは? えっと、ダンジョンの中に入ると森があったり砂漠が広がっているってやつ。珍しいんだけど時々見るんだよ」

「それは異次元転移形だね。DP消費が激しいので今の僕には向いてないよ。初期レベルの高いダンジョンによく見られる形なんだ。モンスターの属性とフロアの属性を合わせるとかなり強くなるしね。ボスの階層だけこの方式で作るのもいいと思うよ。それで僕の属性どうする?」

 あ~っとどうしようかな。最大火力のシャインをラスボスで使うならば光がほしいけどそうすると塔型ダンジョンになるな。探索者から目立つしいいかな。地下室って作れたりするのかな? よし決まった。


「じゃあアルティは光属性でダンジョンは塔型にしよう」

「それじゃあ属性を取っとくよ」


「全ての大地に恵みをもたらす天の使者よその恵みの一部を我と我を守りしものに加護を与える力とし我が身に宿せ」

『カピレルークス』


 呪文を唱え終わるとアルティの体が光に包まれた。光が収まるとアルティの瞳は光を増し鮮やかなスカイブルーと燃え盛る炎のような赤に、髪も光を放つような綺麗な金となっていた。

 皆が何も言えずに綺麗になったアルティを眺めていると


「みんなどうしたの? そんなに僕、変?」

「いやいや、とても綺麗になられたので驚いていたのですよ。今のアルティさんなら私の持っている白いドレスとか似合うかもしれませんね。丁度光属性の加護付きですし」

「ヴァイスさん、この白い綺麗な金髪には対称的なこの黒いメイド服でも良いと思いますよ。だけどあとでそのドレスを着た姿を見てみたいです。私の家にあとで服を持ってきてくださいね」


 女性陣がなにやらアルティの服装についてなにやらあるらしい。ただ褒められているのはわかるのかアルティもご機嫌だ。だけどまあ今はダンジョンだ。


「アルティ、綺麗になったな。それで木や水の地形属性が欲しいんだけどどこがいいと思う?」

「う、うん、ありがと」


 顔を赤らめて俺を見上げてくる。シャインやリリスとはまた違ったかわいさがある。


「それで、木や水の塔型のダンジョンだね。木属性の塔型なら世界樹を使えばいいと思うんだ。だけど火属性、雷属性、闇属性とはすごく相性が悪いんだよ。水は塔型なら雲から供給できるからある程度の高さまでいけるなら問題ないはず。あとは上に木が生えているような大きい岩をダンジョンにしてしまうとかね。木と土の力が得られて岩の上に塔のダンジョンも造れるから塔の方は風や雷の力が得られるはず。だけどそんなに良い場所あるのかな?」


 それを聞いて地図に目を落とした。端から端まで目を凝らして該当する場所を探す。現実の世界のオーストラリアのエアーズロックや南アメリカ大陸のギアナ高地のイメージだな。日本でいうと江の島でもいいかもしれない。とりあえず川沿いで三角洲になっている地域を探して川が別れる所を確認したり、海辺でリアス式の海岸や湾の中にある小さい島を探す。すると小さい島がたくさんある湾が連合国と皇国の国境付近の海岸線にあった。

 皇国の西南端、造船の街ユンホが一番近いかな。あそこは南北の通路だから人通りも多いし良いかもしれない。とりあえず行ってみるか。


「気になる場所があったから見に行ってみようと思う。シャインは飛べるか? 大体500km位だと思うけど」

「あいじょうぶだよ。まかせて、またー」


 シャインは楽しそうに走り出ていった。


「アルティは付いてきて。あとは留守番頼む」


 そう言ってアルティをつれて外に出ると今出てきた小屋の数倍の大きさがある白い竜が座っていた。シャインの完全体だ。この姿が一番楽らしいが飛竜サイズで良かったのにとも思わなくはない。確かにスピードも桁違いに速いから便利なんだけどね。だけどさっきダークドラゴンと戦ったときより大きいんだよ。

 この状態だとシャインはしゃべれないし、本能値がものすごい上がっている。なので他のテイムモンスターはほとんど連れて歩くことができなくなる。気に入らないと攻撃してしまうのだ。アルティは大丈夫だろうか?

 尻尾の先に掴まり背中に上げてもらう。そしてアルティを前に座らせて首の後ろの鬣を掴む。


「災厄を退け安寧と平穏をもたらす神よ我の周りに平穏あれ」

『セークールススクートゥム』


 魔法により俺とアルティの周りに球状の膜が現れた。これは移動時に肉体にダメージが入るものを遮断するという効果がある結界魔法だ。消費MPがすごく多いがシャインも魔力を補助してくれるので飛んでる最中は張っている。まあシャインに乗るときの風防だな。

 小屋の前から大きな草原まで歩いていき、大きく翼を羽ばたかせる。周りに突風が走り背の高い草が風に煽られて舞い上がる中、シャインはゆっくりと空中に浮いていく。ある程度浮いたところで滑空を始めて段々とスピードを上げていき、更に羽ばたく度にスピードが上がる。眼下の景色は目まぐるしく変わっていく。


「うわ~、速いし高いしでちょっと怖い」


 アルティはそういいながら俺の腕を掴んできた。思わず腕を引いてしまうとその方向にシャインが曲がってしまう。

 懸命に俺は目的地に行くために目の前に表示している世界地図を見ながら鬣を引き方向修正を行うが、音速を越えているのでカーブの半径も大きいから修正も大変だ。とりあえず進行方向を目的地付近に合わせることができたのであと数分で着く。海が見えた辺りから徐々に鬣を手前に引きスピードを落としていく。湾の上で旋回をして欲しいので高度はあまり下げなかった。


 後に聞いた話ではユンホの街ではドラゴンが攻めてきたと大騒動になったそうだ。





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