手紙
竜が置いていった手紙はやはり竜の谷の長老からでこう書かれていた。
『
先日、マモル殿に報告を受けた溶岩竜ラーヴァだがこちらの使者との交流を拒絶した。何度か竜を変えて送っているのだがどうも誰からも話を聞く気は無いようだ。そこで悪いが間を取り持ってもらえないだろうか?
もちろんできる限りの協力はする。そして謝礼も用意しよう。
手紙を読んだらなるべく早く竜の谷を訪問してくれ。気が荒ぶってしまった彼には一度落ち着いてもらい、魔力の扱い方を覚えてもらいたい。そうしないと近いうちに災害が起きるであろう。そうなれば他の者にも見つかって討伐されてしまうかもしれない。
よろしく頼む。
』
なんか大事になってしまっている。というのが読み終えたときの感想だ。謝礼よりも何よりも拒絶と災害という言葉と討伐されるという不穏な言葉が気になる。しかし外に出たところで立って数分の間、手紙を読んでいるだけで牧場全体から魔物が集まってきた。
後ろにはさっきまで活躍していたシャドウウルフと獣型となったルーとガブもいる。一段落したし残りのログイン時間は頑張った彼らを中心にここで遊ぼうと思っていたのだが、竜の谷へ急いで向かった方がいいのか悩む。ここのところはダンジョン造りで上位の仲間としか話せてなかったし、結果的に人語がしゃべれる奴としか交流がなかったことになる。
遠巻きにこちらを眺めているリーフや、足元に擦り寄ってきている数匹の猫たち、今にも飛びかかってきそうなポチもいる。てかポチはさっき遊んでやっただろ。こうしてみると俺はかなり多くの仲間に恵まれてると思った。こっちに注力しすぎた性で人間の仲間はいないがな。悲しくなってきた、やめよう。
もう一度手紙に目を落とす。さてどうしようか。詳しいことを確認するためにも早く竜の谷へ向かった方がいいだろう。それにさっき探索者に倒されてしまったジャックの復活まで12時間強ある。みんなまとめて相手してやった方がいいのかな。そんな言い訳を考えていると、背中を押された。振り向き背中に触れたものを確認すると光を吸い込むような漆黒の毛皮に緋色の目をした巨狼の鼻だった。それは獣化したルーで彼は今の状況を理解しているのだろう。もう一度背中を押される。
『ワオォォーーン!!』
ルーは一声天に向かって吼え、それに答えたようにみんなが動き俺の前方に空間ができた。それは大きな竜が現れても余裕のあるくらいの広い空間だった。
「行って来いってことだよな。ありがとう」
ルーにお礼を言いながら頬を撫でてやり、シャインに竜化を頼む。
「行ってらっしゃいませ。マモル様。みんなでお帰りをお待ちしてます」
「ロザリーがちゃんとみんなと遊んであげるね。今度マモル様も一緒に遊ぼうね」
リリスとロザリーにもフォローされた。彼女たちには本当に感謝しなくちゃいけないな。いつも留守を預かってもらっているんだから。
さてシャインは確定だけどあとは誰を連れていこう? 火と土属性のダンジョンを攻略すると仮定するとビッグミスリルタートルのクロガネと水属性のだれかかな。いつも同じメンバーだとレベルに差が出ちゃうんだよなぁ。クロガネもこの間連れて歩いたし、どうしよ。
飛竜サイズになったシャインの背に乗り集まったみんなを眺める。すると青白い体長4mくらいの蛇の魔物が目に止まった。彼は蛟のコウだ。あまりレベルが高い訳でもないがこの機会に育ててみよう。呼び寄せると誇らしそうに頭をもたげシャインの背中を這って俺のところにきた。シャインは尻尾をぶんぶんと振っている。ちょっとくすぐったかったらしい。あとは熱いところと炎が大好きなサラマンダーのエンと爬虫類系で揃えたくなったから……。
やっぱりクロガネも連れていこう。戦力は必要だしまた噴石でも飛んで来たら大変だからな。あと一体は全属性に耐性を持つ虹色トカゲのレインにしておけばどんなことがあっても大丈夫かな。
みんなでシャインの背中に張り付き牧場を後にする。牧場のみんなは手がある奴らは手を振って、そうでないやつは鳴き声とか魔法の光で見送ってくれた。
高度を一気に上げて竜の谷がある山間に向かう。とはいってもこの間の失敗を繰り返さないように手綱は引き気味だ。着地のときスピードを殺さず広場に突撃なんてないように注意する。
最後の山を越えて竜の谷の下流部分に相当する谷の部分の上空に出たら更に速度を落とす。次第に谷を形成する山々は高く険しくなり陸路から行くには谷をずっと遡って行かないといけないだろう。そんな地形を真下に見ながらしばらく飛べば竜の谷の広場は見えてくる。広場の上でホバリングをしてゆっくりと地面に着地させればこの間と違って埃を立てずに静かに降りることができた。
シャインの背中から飛び降りればタイミングを合わせたかのようにシャインも人化を行い俺の方に駆け寄ってきた。背中に乗せてくれたお礼と上手に飛べたご褒美で頭を撫でてやると笑って抱き付いてきたのでそのまま腕に抱える。
そして広場を見渡せば待ち構えていたかのように広場には数人の人化した竜がいた。長老もその中にいたのでまずは挨拶することにしよう。
「長老、手紙を読んできました。俺は何をすればいいですか?」
「早かったのう。使いにやったアースドラゴンのアトムも先ほど帰ってきたばかりじゃよ。そやつがあのラーヴァの父親じゃ」
そう言って長老に指さされたのは小麦色の肌に黒に近いこげ茶色の髪をした身長低めの恰幅の良い男性だった。少しおどおどとした感じで地面を見つめている。
「アトム、しっかりマモル殿に説明するんじゃ。お主のしでかしたことをな」
そのアトムという人は思い返すようにゆっくりと昔あったことを語り始めた。




