新ダンジョンの侵入者
額縁から外を見ると、侵入者のパーティはアイテムの確認をしているのが見えた。
そして隊列を組んで迷わず滝の裏のダンジョンの入り口にやってくる。やっぱりギルドの確認のためのパーティのようだ。
メンバーはメイン盾の騎士に大太刀の侍、弓を背負っているハンターと双剣使い。魔法使いは見たところ2人か。バランスの良いパーティに思える。さてどこまで来れるのか。
まず入ったところでの十字路で面白いことをしてくれた。はじめに実験で書いたただの直線の通路にファイヤボールを撃ちこんで通路の先を確認していたのだ。俺はこんなこと思いつかなかったから新鮮である。
その後もメイン盾で出会い頭で突撃してくるモンスターとの遭遇戦を難なくこなし元ボス部屋の大広間に着いていた。
そして大広間の魔物は魔法で一網打尽にされていたので横で見ていたアルティが
「う~、またMPが減っちゃうよ。ヘタレ、もっと強いモンスター入れたほうがいいんじゃない?」
「まあ最初の階だしいいよ。次の階とかで召喚したモンスターが苦戦するようなら他のも増やすけどね」
「こいつらさっき作った罠にかかってないぜ。もっと見つけにくい罠増やそうぜ」
「ガブ! マスターに話しかけるときは言葉遣いをちゃんとしなさい!」
ガブの言った通り1階層の罠にこのパーティはかからなかった。多分あのハンターの子が罠感知のスキルを持っているんだろう。だけど2階層の罠は一筋縄ではいかないのもあるはず。
そう思って彼らの動向を見ている。2階層では単純な罠は避けられてしまっているが転移罠にかかった。罠感知では見つけられないし、常時魔力を垂れ流しているわけでもないので魔法職の探索者も見つけづらいと思っていたが、ここまで見事にハマるのは面白い。
マッドゴーレムにも少し苦戦し、しかもゆっくり動く回転床の上で戦闘に入ったので更に道に迷うかと思ったのだがハンターが入ってきた道をずっと見ていたので失敗したとわかった。
「ごしゅじんさま、ここに暗闇の状態異常を与える罠かモンスターを置こ…きましょう」
ヴァイスに睨まれているガブが棒読みでご主人様と言っているのについ笑みがこぼれそうになるが、言っていることは面白いので後で考えると伝えると少し嬉しそうだった。
「あ~、モンスターハウスは避けましたね。罠も全部避けています。勘がいいのか、それとも運がいいのか?」
「罠を避けるのはハンターの力量だからな。それなりのレベルなんだろう」
「罠のレベルが低いとちょっとわかりやすいんだよね。レベルが上がればもっと自然に見える罠も作れるはず」
ヴァイスやアルティと罠談義をしているとパーティが階段に辿り着いたようだ。少し疲労が溜まったみたいで幾人かは座り込んで休憩している。
「普段マモル様もこんな感じで探索していらっしゃるんですか?」
「まあ大体そうだな。罠を見つけるのは仲間に任せているけどね。ヴァイスやガブなんかは罠見つけるのうまいんだ。俺がやるのは回復と支援の魔法をかけるだけだ。後は地図作りとか指令だな」
「お~、お兄ちゃんすご~い。いっぱいできるんだね」
「いやいや、俺の持ってる魔法は敵にダメージ与えるものが少ないから俺だけじゃどうしようもないよ」
リリスも普段は見れない探索者のダンジョン攻略の様子を見て俺のやり方も気になったようだ。まあ今回のパーティはバランスが良い正統派だからダンジョン攻略の教科書みたいな進み方だ。もっとぶっ飛んだパーティだと全員近接で敵をフルボッコにする脳筋プレイとかシーカーやアサシンが集まって敵とは正面からぶつからないで一撃必殺を狙うプレイなども聞いたことがある。
俺もできるだけバランスの良いパーティを作るが仲間の選び方によっては俺以外全員アタッカーとかのときもある。
冒険者が3階層に入る前に休憩しているときを使ってボス部屋に行ったヴァルを呼び戻した。なぜならこのパーティのシャドウウルフに対する対処を見て学んでもらおうと思ったからだ。本当ならワーウルフが2人でボスをやる予定だったのにルーが牧場に行ってしまいヴァル1人だけになってしまったので不安だったのだ。
そして侵入者のパーティは3階層に侵入した。しかし階段から降りる際になにやら少し躊躇っていたようであった。地面を火で照らしていたので恐らく突然の泥の感覚に驚いていたのであろう。前に出たメンバーも泥を泥でなくすためになにやら魔法を使っていた。だが一瞬だけ乾いていたが、またただの泥に戻っていた。
そして諦めたのかそのまま泥の中を進むことにしたようだ。良かった。ここで引き返さなくて。
他の額縁を見ると音を聞きつけたシャドウウルフが戦闘態勢に入っていた。しかしすぐには襲わなかった。何かを待っているかのように侵入者より少し離れたところを気付かれないように音を殺して歩く。
一方で侵入者が進んでいる通路のもう少し先にガブリガメが潜む底なし沼があった。またハンターの罠感知で避けられるかもしれないと予想していたが底なし沼のある通路に侵入していた。
そしてメイン盾が底なし沼の脇を抜けようとしたときに泥の中からガブリガメが飛び出して噛み付いた。しかもそのまま底なし沼に引っ張り込む。不意打ちが功を奏したのか態勢が崩れたメイン盾を底なし沼に引き込むのはさほど時間もかからなかった。そして獲物を狙っていたシャドウウルフは狭い通路での挟み撃ちの形で侵入者に襲い掛かった。
侍と双剣士が前後のモンスターからの壁になる。攻撃魔法を得意とする魔法使いはファイヤーボールを主軸にいくつかの光源で影を消し、シャドウウルフが影の中に入って前衛を突破されないようにしていた。
しかしメイン盾があること前提で戦闘していたからか疲労が溜まっていくようだった。そして遂に影を使っての後衛への一撃が決まった。後衛、しかも回復魔法の使い手が殺されたことで、一瞬、動揺した前衛は隙を見せて更に数体のシャドウウルフに突破され後衛はそれに対峙した。
その後も立て直させることもなく侵入者は全員死亡した。
「撃退完了か。しかしボスで撃退したかったな。ここで撃退すると推奨難易度が跳ね上がる気がする。しかもギルドの依頼だからすぐに噂は広がるな。どうしようか」
「倒せたことを喜ぼう……びましょう。もっとモンスター増やせば大丈夫だ…です」
「参考になりました。今度ボス部屋まで誰かが来たら行き止まりの道とかうまく使って追いかけます。ところで3階層にはマッドゴーレムは置けないんですか?」
「強くなりすぎるかと思って自重していたんだがどんな冒険者が来るかわからないから背に腹は代えられないな。いまからダンジョンを工夫しよう」
みんなの案を聞いて更にダンジョンを改造することに決めた。しかしこういう時に率先して出てくるアルティが話には入らずぼーっとしている。
どうしたのかと聞くと
「レベルが上がったみたい」




