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碧空を翔る  作者: Mr.あぶぶぶぶ
第一章
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第4話

 私は少佐を捜しに戦車の残骸を捜索していた。がしかし私はこの通り見事なまでに、完膚なく私は帝国兵に捕まったのだ。その帝国兵は今現在味方と交信中…なのでここに至る経緯を説明しようと思う。


 まず私達狙撃中隊と第7装甲親衛師団の重戦車駆逐大隊との混成部隊は、敵のゲリラ戦法で敗北を喫した。カリサたち部下は撤退させ、私は"重駆大"の生き残りを捜しに向かった。それでまぁ生き残りは居らず、むしろ人っ子一人居らずカリサたちと合流するべく戦車より離れた。そして丁度その時私はホールドさせられたのだ。

 一か八かの賭けで近接格闘を挑むも男女の差で負け、あっさり捕虜となった顛末である。

 敵に情けをかけられまいとしてはいたが私はもともと軍人には向いていないのだろう…なんだかんだで世話になってしまった…。



 「とりあえず君の処遇はまだ特に決めてないのだけど、本来は捕虜にすべき…といったところだよ。でも流石に僕一人に重機その他もろもろの回収は無理だし、さっきマガジンストックを見られちゃったから言うけどお察しの通り弾切れで君に逃げ出されたところで僕は撃ち殺せない。僕はとりあえず雨があがったら本隊へ戻るよ。でまぁ君はどうしたいんだい?」


 と彼が私に問う。しかしどうしたものか…行くあてもない…。


「わからない…でも、やっぱり私も部隊に合流する…。だから貴方とはこれで別れる。」


 そもそも何故解放も検討しているのかが分からないが…。


なんにせよカリサたちが気がかりでもある…ドサクサに紛れて第二次攻勢に参加して失敗を帳消しにできればそれはそれでなんとかなる…そう思って答えた。


「わかったよ…捕虜はいない…と。さて、そろそろ雨も上がりそうだしそれぞれ合流するとしよう…。」


そう言ってから彼はおもむろに立ち上がり廃陣地から抜け出す。私も彼に続いて抜け出し彼から装備を回収する。


「これで装備は全部だよね?ではこれにて。」


彼は敬礼をしそして踵をかえして飛行基地へと向かった。わたしはカリサたちとの合流ポイントへ歩き始める。もう会うことはないのだろうか…少し寂しい私であった。






それから私は30分ほど歩いてカリサたちを見つけ合流した。


「ミーシャさん!大丈夫でしたか?」


真っ先にカリサが駆けつける。カリサの後ろには我が軍の部隊が見える。運の良いことに政治将校は見当たらない。今回のことはなんとか誤魔化せそうだ。そう思うと急に肩の力が抜けた。


「ミーシャさん、司令部は今度は1回国境に沿って北上して西進しつつまた南下し、敵飛行場を北部から攻撃するルートを命令して来ました。」


相変わらず懲りない司令部にはいい加減うんざりだが、命令は逆らえない。しかしこの司令部の作戦…成功するとは思えない。補給もなしに護りを固めた飛行場を落とせるわけがない。もしかするとこの作戦を利用してどうにか亡命出来ないだろうか…愛銃を眺めながらそう思うのであった。


 私は兵舎の食堂に入り遅めの昼食をとる。すると


 「ミーシャさん、となりいいですか?」


 と言い、カリサが隣の席に着く。私がカリサのもとに着いたとき泣いて抱きついて来た、やっぱりこの子が一番心配してくれているんだなと思う。


 「そう言えば私の出自ってご存知でしたっけ?」


 「いや、知らないわ。」


 カリサはおもむろに語り出した。


 「実は私の家はですね…1891年に子爵の位を賜った――――――」


 正直この話は不味い、政治将校に聞かれでもしたら事だ。


 「カリサ、その話空でしよう…」


 そう言って私とカリサは食事を済ませると飛行具を担いで兵舎を出た。



 


 飛行具のエンジンを起動し離陸のために整備場を出る。カリサは察したようで口を閉ざしたまま私に続いた。


 「ミーシャ·ポレストレイカ、機動戦闘訓練のため離陸する。」


 「了解、一七〇〇迄に帰投せよ。」

 

 櫓にいる兵士が赤旗を下に振った。それと同時に私達は垂直に上昇する。一分ほど無言で上昇、下を見ると飛行場が切手サイズに見える。それから通信機からマイクを外し軽い機動をかける。そして示し合わせたようにサーベルでつばせりあう。


 「私の家は旧王国守護騎士一六家門のうちの一つで、1891年に子爵の位を賜ったんです。お父様も守護騎士の家の当主として与えられた領民をしっかりと導いてきました。でもそのあと…ミーシャさんの家と同じ運命を辿ったんです…。」


 なるほど…この娘の家も革命によって消されたのか…


 「お父様も母様も…虫けらのように庭に引きずられ撃ち殺されました。妹も同じ収容所で兵士にされた挙句パルチザン掃討に駆り出されて二度と帰ってきませんでした。だから私…革命政府を倒したいんです。」

 

 カリサの瞳からは大粒の涙が溢れていた。一回距離をとりまたつばせりあう。私もあの革命から10年間、沢山の同じ境遇の人と関わりを繋げてきた。確かに一部の労働者は解放されたかもしれないが、大半は政府中枢が財を抱え込み、浮浪者の増加、それに対する高官粛清の嵐。そのせいで家を失い、愛する人を失った事実は消せない。消そうとする連邦も許すわけにはいかない。また誇りと尊厳に満ちた国を取り戻すため、いや、万人がもう泣かずに済む国を再建するため、そして御父様の仇をとるため、私は戦わなければいけない…



 そうだ…やらなきゃいけない、私は手のひらに爪が食い込むほどに強く拳を固めていた。


 「カリサ…戻ろう。」


 ハンカチを渡し涙を拭かせ、私達は基地へと降りていく。私達はそこで信じられない作戦命令を言い渡された。


  狙撃飛行騎兵、一般飛行騎兵両部隊は直ちに爆装し敵飛行場を強襲

                       防衛力を徹底的に減少させよ


 であった。やはり失敗はバレていたようだ…効果的に処刑しようというわけである。さすが政治将校の粛清センスには脱帽した。しかし命令を違反するわけにもいかない、せめてこの場だけでもだ。作戦に出てしまえばあとはなんとでもなる。ところが他の者はそうはいかなかったようだが…

 先ほどの戦闘で上級指揮官がことごとく戦死と捕虜になったため、在籍期間の最も長い私に作戦指示書が届いたわけだ。たださっき戦死した上級指揮官も名ばかりのもので実質私の指揮下にある事実は揺ぎ無かった。さっきの作戦指示だって私が行うのが自然の流れになってながら今更そういう説明を一々してくるとはなんという白々しさだろうか。反吐が出る。

 私はそれを承諾し、作戦準備を始めた。作戦室に全員を集合させ作戦内容を説明する。そんな私に一般飛行騎兵の新兵が沢山質問してくる。大体は私達はどうしたらいいのかだったが…

 とにかくも私は100キロ爆弾を抱え部隊の仲間と共に格納庫を出た。飛行騎兵には体力補正や重量補正をかけた装備をしているため、私にも爆撃が可能なのだが。とはいっても重いものは重い、機動力の欠片もない。

 

 「重い…。」


 カリサがぼやきながら準備を進めているのを遠目に見つめ、私は技術班のある小さめの施設へ向かう。予てより用意を頼んでおいた物を受け取るのだ。


 「あぁ!ミーシャさん!アレですね?ちょっと待っててください!」


 白衣を着た小さな少女の研究員、ポーラ・ケルチェンコフ13歳、10歳で博士号を取った天才だ。何故かこの大隊にいる…。大きな(ポーラを基準としてだが…)箱を引きずって来た。


 「全員分の閃光弾と簡易パラシュートです。…ミーシャさん…本当に行っちゃうんですね?」


 小さな研究員は私を見上げ懇願するかのような視線を向ける。確かに我々が脱走するときにこの子は置いていかねばならない。


 「そうね…あなたは連れていきたかったけど…。あなたはしっかり生き延びて。きっと私は戻ってくるわ?」


 精一杯の作り笑いで誤魔化し私は踵を返す。

 受け取った簡易パラシュートと閃光弾を各員に回す。


 振り返ることもできず飛行具を履き爆弾を持ち上げ格納庫のゲートを出る。ゲートをくぐると湿気に満ちた空気が肺を満たし、左手からは西陽が差し眩しさを感じた。私に続いて約1000は居るだろう飛行騎兵が巨大な正方形の飛行場に現れた。1000もの飛行騎兵の飛行具からは凄まじい魔動音が私の鼓膜を震わす。


 「全機我に続け。上空5000mまで上昇、作戦指示は上空でする。」


 私はそう言い一気に上昇する。私はただ無心に上昇した。高度計が5000mを示した。


 

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