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碧空を翔る  作者: Mr.あぶぶぶぶ
第一章
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第3話

 じめっとした空気が大雨時を告げる。雲は不気味にぎらつきすぐにでも雨が降りそうだ。彼女を拘束し、増援が来るまで廃陣地で雨をやり過ごすことにして森を歩いていた。


 「君名前は?」


 「…」


 見た感じは僕と同じくらいの歳か…名前も判らないと報告書も書けないな…と暫し考えを巡らせていると


 「ミーシャ…」


 「え?」


 「ミーシャ・ポレストレイカ」


 突如彼女は名乗った。すると空からはポツポツと雨が降り始める。廃陣地まではまだ200mはある。


 「雨…」


 「少し急ごう。」


 この時期は雨に降られるとすごく濡れる。豪雨と呼ばれるがこれがまた酷い。ぴちゃぴちゃと長靴が音を立てる中僕たちは黙々と廃陣地を目指した。







 「へくしゅっ!」

 ミーシャと名乗った少女はくしゃみをする。ここは廃陣地の防空壕、広さや設備も程ほどに整っている。ただ


 「降られたぁ…これ着る?」


 実際廃陣地に着いた僕らはびしょびしょだった。


 「いい、敵の助けは借りないっくしょん!」


 華奢な肩が小刻みに寒さを訴えている。流石に焚き火だけでは寒い。


 「じゃあこうすれば敵じゃないや。」


 といい僕は階級章を外す。


 「それは答えになってないっくしょん!」


 「風邪になったら戦場じゃ命取りだよ?これ暖かいからたぶんその格好よりはマシ。」


 そう言って僕は戦闘服を渡す。するとまた割と素直に着る。


 「君は軍人?」


 「そうよ、ただの一介の狙撃兵…。」


 階級章を見ると赤いラインが3本ある。伍長か。とりあえず軍人であることは確認できた。陸戦条約に則れば良さそうだ。そのあと幾つか質問をしているととてつもない勢いで雨が強くなっていた。


 「そういえば君の飛行具…それは連邦軍のSU65とは違くない?」


 ふと僕は彼女の装備している飛行具が連邦軍の制式採用飛行具とは違うことに気が付いた。しかしその質問には沈黙を続ける。


 「オリジナルの飛行具なのかい?」


 その問いには黙って首を縦に振る。連邦軍のSU65は暗緑色一色で装甲は単純で帝國のようなスライド方式の魔力スラスターがない。全体的に魔動機を含めて胴体部が非常に細身でシンプルな構造、且つ翼部性能は加速性の高いものと聞く。しかし先程の戦闘といい…この飛行具は群青のカラーリングにスカート型の大口径スラスターの構造で、性能面は早さより空中静止能力を追求している。そんなことを考えているとまた口を開く。


 「御父様の…形見…最初で…最後の試作機。」


 ポレストレイカの名前でピンとは来ていたがそうか、ポレストレイカ伯爵…連邦革命時代に粛正された技術者か…ん?娘?居たのか?


 「私は愛人の娘、ただ御父様は私をとても大切にしてくれた…。」


 「それでその試作機を君に?」


 「そうよそれと帝政時代に御父様が皇帝陛下より賜ったこの銃。」


 そう言いドラグノフをしまった真っ黒の革張りのケースを開く。そこには丁重に手入れをされたドラグノフが収納されていた。


 「けれど私は連邦の国民。御父様の仇であるこの国の国民であるかぎり私も戦わねばならない。」


 「君は本国に帰ったらどうなるの?」


 「捕虜あるいは戦闘中行方不明者は国籍を失い死者として扱われるわ。つまり帰れない。」


 「なるほど、でも君の仲間も探しているんじゃないの?」


 かなり連携してたようだからそうも簡単に仲間を見捨てるとは思えない。


 「例え見つかっても作戦失敗の責任をとって銃殺が関の山よ。ただなぜ今回の作戦指示者が私みたいな低階級なのかは甚だ疑問なんだけど。」


 こうなると帝国に引き取るのが良いのだろうか…。雨は弱まることなく降っていた。とりあえず基地に連絡をとろうと通信機を取り出す。


 「今から君の保護を基地に要請するから。」


 ミーシャは無言で頷く。しかし唐突にまた口を開く。


 「私の母は…帝国人よ…だけど混血だから…。」


 なるほど、身の上は同じなのか…。つまり帝国でもあまり良いことにはならない…と。僕は考えをまとめ、一度連絡をとるのは諦めた。


 「ごめん…なさい。でもやっぱり連絡をしたほうが…。」


 両軍動きは見られないことからまだ連絡はあとでもいい、しかし第二次攻勢が始まる前には何とかしなければ…。


 「君のことは置いておいて、いろいろ確認だけするよ。」


 そう言いながら僕は通信機を取り出す。無線電信装置、これは周波数を合わせ、キーを特定のリズムで叩くことにより通信先に通信開始を伝えられる。それでもって相手方からも信号を受信したら音声による通信に切り替わるというもの、帝国では周波数133.42Hzが用いられており、周波数を合わせ僕は通信開始の意味を叩く。するとしばらくして聞き慣れた声が聞こえた。



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