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碧空を翔る  作者: Mr.あぶぶぶぶ
第一章
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第1話

 ―――連邦軍―――

 腹部に響くような重苦しいエンジン音、私たちはこちらの主力重戦車を取り囲むように森の中を飛んでいる。この先には爛帝国最大規模の航空基地があると、偵察部隊の報告より上がっているが、彼我の戦力差はおよそ3:7。こちらの勝利は見えている。

 

 「ミーシャ君、ありがとう。君たちはここで狙撃に徹してくれたまえ。」

 

 重戦車小隊の隊長にそう言われ、私は所定の位置に降り立った。

 

 「了解、少佐殿もご健闘を。」

 

 そういい手早く狙撃銃を取り出す。愛銃ドラグノフ、狙撃銃としては珍しいガス式セミオートマチックであり命中率が比較的低いと言われてはいるが、実際私が仕留め損ねた敵はいない。程よい枝を探し狙撃態勢をとる。

 

 「ミーシャさん…、あんな不愛想だといくら美人でももらってくれないですよ?」

 

 急に通信に割り込んできたのは年下の狙撃猟兵カリサだった。

 

 「今は作戦行動中だ、私語を慎め。」

 

 時々カリサはよくわからないことで注意をしてくる。しかもいわゆるお喋りなのか、私が言っても軽口は止まらない。

 

 「まじめにやってて弾が当たらないならみんなまじめにやりますよ!」

 

 しばらく黙っている、決してカリサに返す言葉がないわけでは無い。

 

 「カリサ、ソナー!」

 

 ある可能性が考えられた。

 

 「ソナー!」

 

 高く澄んだ音の後、軽く風が吹く。これによって敵がいればカリサの持つ光魔法の端末に赤く丸が表示される。

 

 「反応有!―――、これは!?」

 

 カリサの表情がこわばる。 

 とその時大規模な爆風が私たちを襲う。

 

 「くっ!」

 

 今の爆風は側面のほうが伸びていた、おそらく敵は…側面

 

 「アンブッシュ?!」


 「ミーシャさん!魔装重砲です!」


 「判ってる!」


 これは恐らく魔力を弾丸表面にコーティングした対戦車砲…魔力防御装置を搭載しているこちらの重戦車でも何発も耐えられない、ましてや人間が当たれば即死な代物


 「各員散開!重砲部隊を潰す!」


 私は号令をして枝からふわりと地面へ降りた。私の号令に従い、14人の狙撃兵は散開、私は側面の崖を背にして草むらへ匍匐した。

 重砲は今なおこちらに猛射を続けている。


 「ちぃっ!爆風で狙撃できない!」


 カリサの声がヘッドフォンを響かせる。カリサのイライラが伝わるようだ。


 「カリサ、魔力補正で撃てない?!」


 とっさの思いつきでカリサに魔力補正をさせるが――――――。


 「ダメですミーシャさん!魔力ジャミングで魔力場偏差が判りません!」


 敵は魔力ジャミングをこの森林エリア全体にかけている…このままでは恐らく各個撃破、そうだ重戦車は…


 「カリサ!少佐の部隊に連絡!」


 「やってます!え?少佐!即時退却を!」


 「どうした!」


 「少佐の部隊は魔装重砲に仕留められ、走行不能、砲撃と白兵戦に持ち込まれてます!」


 「完全に分断されたな…。」


 「敵の部隊…練度はともかくかなり作戦の内容が効率的…恐らく戦車はもう無理か、ならば残っている歩兵と我々狙撃部隊が基地へ突っ込む?」


 「ミーシャさん!側面から敵の航空隊!」


 「背後だと!?」


 カリサの言う側面…それは私の位置としては真後ろだった。


 「総員後退!」


 私がそう叫んだ直後、複数の銃弾が私の背中を掠めた。


 「このっ!」


 敵は複数の航空騎兵、超常的な機動力で接近してくる。私はドラグノフの引き金を引いた。


 ダンっ!


 独特の金属音の響く銃声が鳴り響き、7.62x54mmR弾が敵の飛行具に穴を穿つ。


「次っ!」


 私はさらに次の目標をスコープに捉える。愚かな直線軌道、躊躇わず引き金を引く。敵を弾が撃ち抜いた、いや、その予定であった。その敵は失速したかのような急制動をかけて降下する。


 「っ!?」


 しかしスコープのなかでは信じられないことが起きていた。敵は降下したと思いきや急に上昇してこちらへ向かってきた。しかも直線軌道でだ。その軌道が目立ったのと他の騎兵が戦車を攻撃し始めたのもあり、その一人に我々は多数で相手をし始めた。


 「ミーシャさん!あいつ!!」


 カリサはかなり慌てていた。むしろ慌てて当然かもしれない。連携の取れた全方位からの狙撃を、敵は妖精の如く避けては接近してこちらの戦力を削っている。


 「そろそろ魔力も限界か。カリサ!ここは撤退だ、少佐達を救出したのち即時撤退する!」


 「了解です、各員撤退用意!」


 「カリサ、私は少佐達を救出しに残る。お前たちは座標α・4にて待機するように。」


 まずは主力の戦車部隊、戦車はもう使えないが、乗員はきっと無事だろう。私はカリサたちと別れ、敵を振り切る速さで少佐のもとへと森を突っ切った。


 「少佐、少佐!聞こえますか?」


 私は通信機へ叫ぶ。




 


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