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碧空を翔る  作者: Mr.あぶぶぶぶ
第一章
18/21

第17話

 「魔導機は本来使用者の裁量で自由に入力する魔力量を可変できる。今までの制空騎、例えば陽炎までの機体は安定性を重視して入力する魔力量に限界点を設けていた。今の空戦は飛ぶだけではないから飛びながら周囲の索敵に空戦機動を処理するだけの演算能力が必要不可欠。そこで今日は反重力と索敵と空戦処理力の訓練をするよ。」


 僕は明け方の飛行場で第一分隊を集合させていた。昨日タカ達の陽炎がアマツカミに機種転換されたためさっそく訓練ということだ。


 「リィン。要はこの三点をアナログで制御しなきゃいけないんだろう?でもこれって陽炎より空戦能力が低くなる可能性があるってことだよな。」


 まぁ当然。今までほぼ自動的に三点の力を割り振っていた陽炎とは異なり、すべて手作業で調整しないといけないアマツカミは、下手をすれば飛べないし最悪空戦中に制御不能になる可能性を孕んでいる。だからこそこれまでにないほどの自由な戦術が使える。


 「まぁそうなんだけど、ちゃんと使えば空戦能力格闘全振りの高速マルチロールファイターっていう矛盾のオンパレードのような機体が出来上がるのもまた事実だよ。まず大まかな設定は軍からの設定仕様書を見て設定してくれ。」


 まだ僕自身も仕様書を基本に設定を割り振っている。完全に自身にぴったり合った設定にするにはもう少しかかりそうではあった。ひとまずみんなが設定している間に僕は飛行しながら調整している。急降下して速度を700まで上げる。ここで一気に縦旋回を繰り出す。速度と揚力が増している分旋回半径と旋回時間が短くなる。ふわりと曲がる感じ。自動空戦フラップを安定翼に実装しているおかげで旋回を終えるとフラップが自動で畳まれて上昇が速くなる。無駄なフラップによる速度の減衰がないおかげで効率的な一撃離脱ができている。一撃離脱の時にはこの設定で行こう。


 次はバレルロールで右半降下をしてからの縦旋回をしてみる。演習用のMGを撃つ。結構弾がぶれる。高G環境下ではぶれるのは仕方がない。そうだ、どうせぶれるし今までの7.92mmでは決定力に欠けるしいっそのことMG151/20でも使おうか。重爆隊用の機関砲。20mmであれば機体だけ粉砕できる点が高評価だ。空中ホバリングをやってみる。相手の背後に回り込むにはこれが定番の手。飛行具に痛烈な20mmを叩き込むにはこの戦術が一番。手で20mmを持って、飛行具に30mmをマウント。これなら対空戦を行いつつ目的の親衛戦車隊を駆逐できると思う。


 「試してみよう。何事もやってみないと...ってね。」


 飛行場に降りて資材庫を漁る。...あった。MG151/20、20mm航空機関砲だ。弾薬は...ベルト給弾か。というか本体デカすぎ。いやサイズを完全に失念していた。今現在僕の魔法力で対処できる処理プラスMG151/20の重量軽減は限界か。1.7mの全長では両手持ちにならざるを得ない。


「リィン!ひとまずの調整と飛行チェックは終わったぜ?」


 お、いいタイミング。


 「じゃあまず単騎での自由戦闘訓練でもいこうか。今日はみんなひとまず九九式二〇粍を使ってくれ。」


 「うっへ、まだあのトロくさい機関砲かよ。アマツカミは最低でもMG151じゃなかったのかよ。」


 我が爛帝国初の実用機関砲、九九式二〇粍一号汎用機関砲は、軍が全ての機関砲の型式をMGまたはMKに統一する前に正式採用された。性能は当時としては壊滅的な大火力だったが速射性の悪さが災いし”単発機関砲”という不名誉なあだ名をつけられた曰く付きの兵装である。


 「MK108だって弾道がぶれたりするから連射できないあたりはこいつと似てるでしょ。」


 「こいつのはMK103だ!デカい反動で失速以外の欠点の無いな!」


 「薄殻榴弾なら151でも十分なんだよな。」


 「うちの工業力で大量生産できるとは思えないがな。」


 「はいはい、文句言わずにかかってきなって。」


 そう言った瞬間に真っ先に突っ込んで来るタカ。正面からの3連射。


 「よっと、相変わらずだタカ。」


 「いいぜいいぜ!パワーが段違いだ!ほれほれほれ。」


 的確に弾幕を纏めてくる。手先を軸にバレルロールをして回避、回転終着点から一気に下降してタカを引き離しにかかる。


 「下に行こうたって性能比はおんなじだぜ?」


 「そう思うじゃん?普通なら・・・っさ!」


 乗せたスピードを一気に上昇に使って下降して来るタカをすれ違いざまに1斉射。飛行具が真っ赤に染まった。


 「おいおい旋回時間その倍はあるだろ!?」


 「さぁね!かかってきなって。」


 自動空戦フラップの設定を切ってフラップを着陸にまで下したからこそできる芸当だ。たぶんタカなら数分でパクるに違いない。


 「リィンさんつっええ!なんで3騎相手に余裕の立ち回り?」


 「あいつは異常。空間の把握力が常人のそれを逸してる。」


 「タカっ!話してないでお前は上から!俺は下からやる!」


 タカの僚機のアキがとっさに指示を出す。


 「わーってる!黄色の1の実力見せてやんよおおおお!」


 タカテンション上がってるな・・・。まぁさっきタカが言った通り僕の能力は突出した空間把握力にある。それに対してタカは偏差射撃の名手でもあったりする。痛・・・弾が掠った。タカの十八番上空から緩降下高偏差射撃。前は結構回避できてたけども最近掠ることも多い。だが・・・一発一発の弾が視える僕に・・・直撃はない。


 「うっそだろそんなんアリかよ!」


 「うっわ・・・失速して魔力障壁を土台にしてバク宙かよ・・・。」


 把握できるなら魔力を好きに加工する余裕もある。この分野はタカの僚機のアキの十八番でもある。魔力密度を上げて高射砲並みの貫徹力を生み出すなんて狂気じみたこともできるらしい。


 「タカっ!避けて!」


 「おうよ!」


 タカがロールした瞬間高初速の魔力がすっ飛んできた。どう考えてもアキの仕業だ。ほかの分隊員も僕に襲い掛かる。まぁだいたい教練通りの一撃離脱を仕掛けてくれるから避けるのはたやすいが。最近ハマっているのは命中寸前で躱す戦闘スタイルだ。カッコいいからというのはあるにはあるけど軍刀で返り討ちしやすいメリットがデカい。なにしろ射撃下手の僕に精密射撃とか冗談が過ぎる。


 「また躱された!」


 「認識速度速い上に反則的な魔力反射係数だしな。そら避けられるわ。」


 「ならばぁぁ!はぁっ!」


 「いや待て待て!質量持った魔力が熱で赤くなってるってどういう初速だよ!!」


 「やられっぱなしで・・・・いくかぁぁぁぁぁぁ!!!」


 爆光が見えた。とっさに躰を捻りこむが回避がっ・・・腕のスモールシールドが吹き飛んだ。掠っただけでこの威力とかどうかしてる。


 「この次元まで来たらもう回避不能だな・・・。」


 思わず苦笑い。


 「リィンさん覚悟ぉぉぉぉ!」


 「叫ぶと不意打ちじゃ無くなるぜ!」


 後輩のハルが二刀で突っ込んで来る。よく僕に空戦格闘技を教わりに来てただけあって巧い。彼の場合は二刀流が自分のベストらしい。何回か刃を捌いて背負い投げで投げ飛ばす。腰からMP5を取り出して飛行具を真っ赤に染め上げた。


 「リィンさんレベルで射撃下手とか俺はどうなるんですかぁ~!」


 「お前そもそも使わないだろーが。」


 「そりゃないっすよ!」 


 「そんなに使いたいならSMGでも使えばいいだろ。MP40とかおあつらえ向きだぜ。」


 「あれSMGなんですかね。両手持ちしてますよ陸軍の連中。」


 「さぁ好きにしなって!!?」


 飛行具に一発だけ赤色のマーカーが一閃した。次の瞬間僕の飛行具は反動でスピン、失速して墜ちた。


 「痛!!!!!何?対空砲?」


 「気を抜き過ぎよ。結城少尉。」


 氷のような冷たい声。目を開けると冷たく見下ろす”蒼の魔弾”がそこにはいた。


 「や、やぁ・・・あはは。」


 


 

 

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