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碧空を翔る  作者: Mr.あぶぶぶぶ
第一章
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第13話

サモレンスクでの戦闘より離脱すること四十分。僕ら三騎の飛行騎士は飛行場へと帰還した。当然の如く司令が仁王立ちしながらこちらを睨みつけている。あぁこのままタッチアンドゴーして逃げたい。そんな気分だった。


 「只今帰還しました。戦果、敵常駐機甲師団および航空隊殲滅。損害はありまs―――――――!?」


 僕は司令に打ん殴られていた。


 「この阿呆が!隠密行動と厳命したはずだぞ!」


 まぁそうだ、おかげで精鋭の師団が二つもおまけで出てきている。完全にやらかした。


 「申し開きもありません。ただしかし…。」


 「なんだ。」


 「連邦軍東部方面攻略軍司令ダンゼンハルト陸空軍大将を捕らえました。」


 あたり一帯にどよめきが走る。


 「なん…だと?」


 「こちらの捕虜であります。」


 そういい気絶していた奴を司令の前へと突き出す。司令は暫く黙るとため息をつき奴を引き取った。


 「本国に連絡を入れねばならん。貴様らの処分は後日下す。それまでは別命あるまで待機。」


 「はっ!」


 敬礼をし僕らは格納庫へと向かう。


 「まさか奴を捕らえようと言うとは思わなかったわ。」


 格納庫へ向かう道、司令の恐怖の説教タイムが不発に終わったため、僕ら三人はいつものようにだべり始める。


 「正直気でも狂ったかと。」


 なんだこの二人。好き放題言ってくれて。


 「いやむしろそのおかげで二人とも大してブチギレられて無いの自覚してくれよ。」


 まったくだ、奴を捕らえようだなんていうとっても素敵な案、僕が考えなかったら今頃三人仲良く司令に消し炭にされてるだろう。物理的に。


 「というか何であれが敵司令だって判ったんだよ。」


 「戦ったときにアイツありえないくらい魔力量が安定してたじゃない。しかもあれだけダメージを受けても眷属を出す余裕があった。ていうことは連邦の中でもそこそこ有名な飛行騎士。それで鋼鉄の眷属を出すのは”鋼鉄の魔術師”の異名…聞いたことくらいはあるんじゃない?それがダンゼンハルト、旧帝國爛地方高栁地区を治めた旧男爵位を持つこの国の裏切り者さ。」


 「どこでそんな情報…。」


 「こんなクソほどにも役に立たなさそうな情報が役に立つとはね…全く盲点だ。」


 どこでなんて決まっている。僕は一年前、紛争地帯での特務中に奴とは一度戦っていた。あの時は負けた。完敗だった。完璧なまでの一撃離脱戦法に為す術なく叩き落とされた。そんな奴が何故あんなふざけた戦い様になっていたのだろう。


 「随分と暴れたようだな!司令も’今度は敵師団に一個小隊で挑ませてみようか’とかなり機嫌がよかったぞ。」


 虫唾の走る高飛車な声に台詞。誰かなど考えるよりも前に僕の口は暴言をばら撒いていた。


 「数でしか戦えない無能が随分と手厚いお出迎えとは恐れ入るとでも思ったか雑魚。んなくだらないこと言ってる暇があるなら敵機の十騎や二十騎くらい墜としてみてから言え!」


 ダメ押しに野戦服の袖にマーキングされたおびただしい量の撃墜マークを見せつける。顔面に撃墜マークを押し付ける僕をあきれ顔で眺めるタカの視線は気にしない。


 「まぁまぁ、お前だって編隊戦ヘタクソなして何が帝國一の撃墜王だよ!」


 ほほう、僕は断じて編隊戦が不得手なわけではない。こいつこそ横一列の編隊組んで敵のケツを追っかけまわす程度の三流じゃないか。


 「なら精鋭守備一個師団相手にやって来いよ。ほら、今ならおまけでもう一個精鋭師団付きだぜ?」


 「はん!お前の連れてきたおまけだろうが。お前で処理しろ。」


 「言われなくても次の作戦で叩き潰してやるよ!」


 長靴をガツガツ音立てながら僕らは自室へ歩く。


 「なんでお前らはそう顔を突き合わせるたびに喧嘩してんだ。」


 タカがため息まじりに聞く。


 当然、気に食わない。


 「いいとこの坊やが大した腕もないくせに第三分隊の指揮官で?しかもこの僕を煽ろうって言うんだからそりゃ仲がいいわけないでしょ。ま、所詮第三分隊程度じゃ第一分隊に勝てやしないけどね。」


 「この僕をって・・・。しかもそれは違うと言えないのが余計腹立つわ。」


 「ま、事実だし。どうせ例の二個師団の駆逐、僕らに回ってくるよ。」


 「その時は魔動機不調で参加お断りで。」


 「せっかくのスコア稼ぎだよ?いらないの?」


 「お前少し連邦を侮りすぎ。」


 「大丈夫さ、注意はしてるから。」


 「未だに主力は出てきてない。何か裏がある。」


 「まぁそういうのを考えるのは軍令部の仕事じゃん?僕はただ空を汚す奴らを叩き落とすだけさ。」


 「まぁ言っても聞かないしな!お前。」


 「ったくタカも大概失礼な奴だね!」


 二人そろって大笑いする。侮りすぎねぇ…。この時、僕はまだタカの言った言葉を完全な意味では理解してなかった。



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