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第2部6話 隣にいたい、それでも

こちらのお話、前半少し重いです…。

—静かな夜だ。


蒼真は蓮と話した後、2人で陽葵の様子を確認して

各々の部屋へと戻り休む事にした。


蒼真は体が疲れているのに寝付けず、酒を手にしていた。

怪我をしてるから、こんな姿を見られたら蓮にまた怒られるな。と思いながらも、呑まずにはいられなかった。


—あの時。

蓮が駆けつけなければ、死んでいた。

今頃になって、足が震えだす。


「ははっ…だっせぇや、俺」


グラスの氷がカランっと音を立てた。

残りを飲み干し、また酒を注ぐ。


俺の覚悟なんてこんなもんか…。

まだ死ねないなんて天音と話した時は思ったけど、死ねないんじゃない。

死にたくないと思った。

陽葵の隣に居たい。

このままでいい。

蓮も居て、3人で笑って過ごせたら、それだけでいいのに。


自然と涙が流れたのがわかった。

ああ…覚悟してたって、俺は怖いんだ。

でも、後に戻る事も選べない。

自分の出した答えに自分で嘘はつきたくない。


「…守る。そのためだ」

1人でポツリと力強く、呟いた。


少し、酒が回って部屋が暑い。

窓を開けると涼しい風が流れ込み、火照った体を冷ました。


その時だ。

一ノ瀬邸に向けられる殺気に気がついたのは。







—ガシャァァンッ!!という物音で蓮は飛び起きた。

すぐに部屋の窓から身を乗り出し、庭へと目を向ける。


土埃がたちあがり、状況がよく見えない。

土埃が晴れていくと、そこには蒼真の姿。

そして、月明かりで照らされた蒼真の前には、神楽坂朔と九条麗華がいた。


瞬間、蓮は部屋を飛び出した。


今夜の襲撃はないだろうと全員の意見が一致していた。

そのため、見張りの警戒も解いて、負傷した者との入れ替わり調整中だった。



油断だ。



階段にたどり着くとそこには陽葵がいた。


「蓮…今の音、何?」

「陽葵は部屋に戻って!危ないから、絶対に!」


それだけ伝えると、蓮は階段を飛び降りて蒼真の元へと向かう。


1人残された陽葵は立ち尽くした。

本当に、部屋に戻るべきか?と。


「ダメ。守られてるだけじゃ」

そう呟くと、陽葵は階段を降り始めた。






「くそっ…」


強い…昼間に神楽坂には深手を負わせたはずなのに…。

昼間より、神楽坂の動きが早い。

繰り出される攻撃を避けるだけで精一杯で攻撃が出来ない。

ほんの一瞬の隙に吹き飛ばされた。

なにか、おかしい。


「…あー、なるほど…壊す力、か」


腑に落ちた。

神楽坂の異常なほどのスピードと攻撃力。

壊す力の契約を神楽坂と麗華はしている。


「それって2対1じゃん。ずりぃ奴ら…ッ…」

立ち上がろうとすると痛みが走る。

吹き飛ばされた事で昼間の傷口が開いたようだ。

肩から流れる血が腕を伝い、地面へ落ちる。

息が吸いにくい。

肋骨をやられたか…。


守る力が限界を越えさせる事が出来るのであれば、壊す力も同じだろう。

この戦況は完全に不利だ。

蓮が先程の吹き飛ばされた音に気付いて来るはず…。

時間稼ぎだ。

成功するか分かんねぇけど。


「神楽坂、お前はなんでそこまでやる」

神楽坂へ問いかけたた。

夜の空気が張り詰める。

神楽坂は、一歩も動かない。

ただ静かに、蒼真を見ていた。

「……」

一拍。

「命令ですので」

「……は?」

あまりにも、あっさりとした返答だった。

「お嬢様の命令は絶対です」

神楽坂は、淡々と続ける。

「排除対象と判断されれば、排除する」

「それだけです」

「それだけって……」

蒼真の眉が歪む。

「それで納得できるのかよ」

「……?」

神楽坂はわずかに首を傾げた。

「納得、とは」

「自分で考えねぇのかって聞いてんだよ!!」

声を荒げる蒼真。

「なんで戦うのか、とかよ!!」

「理由くらいあんだろ!!!」

沈黙。

風が、静かに吹く。

「……必要ありません」

神楽坂は、迷いなく言い切った。

「私は剣です」

「振るう者の意思が、そのまま私の意思となる」

「考える必要はありません」

「それが、役割です」

「ふざけんなよ……」

蒼真の拳が震える。

「お前、自分の命だぞ……!」

「死ねって言われたらどうすんだよ!!」

一瞬の間もなく――

「死にます」

神楽坂は答えた。


空気が凍りつく。


「命令であれば」

その声に、一切の揺らぎはなかった。

「……ッ」

言葉が、出ない。

「理解できませんか?」

神楽坂は、静かに問う。

「主のために在るのは、当然のことでしょう」

「当然じゃねぇよ!!!」

蒼真が叫ぶ。

「命ってのはなぁ!!!」

「誰かに使われるもんじゃねぇんだよ!!!」

「守りたいもんのために、自分で選んで使うもんだろ!!!」

静寂。

その言葉を、神楽坂は受け止めていた。

だが――

「……理解不能です」

ただ、それだけだった。

「感情に基づく判断は、非効率的です」

「お嬢様の命令に従うことが、最も合理的」

「それ以外に、価値はありません」


完全に、分かり合えない。


価値観が、違いすぎる。


その時――

「本当に、つまらないわね」

麗華が、退屈そうに口を開いた。

「感情だの、守るだの」

「くだらない」

その言葉に、蒼真の視線が鋭くなる。

「あなた達は、ただの駒なのよ」

「壊されるためのね」

空気が、完全に変わった。

「……上等だよ」

蒼真はゆっくりと立ち上がり、剣を強く握った。

「その駒に、ぶっ壊される覚悟しとけよ」


—分かり合えない。

守る者と壊す者。




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