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第2部 1話 始まりの影



一ノ瀬家 応接間


静かな空間の テーブルには紅茶のカップが2つ。

陽葵は少し緊張していた。

ちらっと横に立つ蓮の顔を覗き込むと蓮は微笑み頷く。

「えっと…本日はどのような…」

遠慮がちに陽葵が口を開き、向かいに座る女性へ声をかける。

「そんなに緊張なさらないで」

ふっと笑いながらその女性は紅茶を口にする。

「素敵な執事さんがお付きになったと聞きまして、うちの執事がご挨拶に伺っただけですわ」

流れるような所作でカップを置くと女性はゆったりと自分の執事への視線を向ける。


「はじめまして、九条家令嬢、九条麗華様の執事の神楽坂朔と申します」

執事の神楽坂が観察するように陽葵を見た後、値踏みするような視線を蒼真と蓮へむけた。

「一ノ瀬陽葵様の執事、黒瀬蓮と申します。ご挨拶が遅れて申し訳ない」

蓮は冷たい視線を神楽坂へ向けた。

「久遠蒼真でーす」

窓際に立っていた蒼真。

口調は軽い。

だが警戒している、目が鋭い。

「…久遠?…ほんとに良い執事たちですこと」

麗華はつぶやくと立ち上がった。

ひらりと優雅にドレスの裾がなびく。

「また、お会いしましょう」

そう言うと神楽坂を従え、部屋をあとにした。


「なぁ」

少しの静寂の後、蒼真が口を開いた。


「結局、なんなんだよあいつら」

イラついている。

「挨拶って、名乗って終了?俺の苗字にも反応しやがって…」

気に入らないというようにどさっとソファーに腰掛けた。


「まぁ、偵察だろ。九条家と言えば一ノ瀬家と並ぶ名家のお家だ」

ふぅーと蓮が溜息をついた。

「俺たちが気になっただけだろ」

気にするなと言いたげな蓮だが、その瞳には曇りが見える。


「2人ともどうしたの?」

いつもと少し様子の違う蒼真と蓮に戸惑う陽葵。

「いや…うん。蓮は気にするかもな」

「まぁ最近は忘れていたというか…俺の出自は名家でもなんでもないから…それで陽葵に迷惑をかけたらとおもって…」

なるほどと陽葵は感づく。

蓮の出自については天音から最初に聞いていた。

家柄がもし気になるようであれば、変更してもいいと言われていたのだ。

「私はそんな事、なんともおもってないよ?」

「そう言ってもらえると助かるよ…」


通常、執事は家柄の格の低い家の次男が選出されると聞いている。

一ノ瀬家、九条家はトップクラスの家柄になる。

九条家は代々、神楽坂家の人間を執事に迎えていると聞いたことはあった。

一ノ瀬家は特定の家を使うことはなく、連盟所属の執事を雇うのが通例だ。

そのため陽葵は蒼真と蓮の家系について気にしたことはなかった。


「まぁ、めんどくさそーな奴らだな」

ダルそうに蒼真はつぶやいた。







「どうだった?」

九条家へ戻る車の中で麗華は神楽坂へ問いかけた。


運転をしながら神楽坂は答えた。

「脆いですね。まだ若い」

ふっと神楽坂は不敵に笑った。

「朔が笑うなんて珍しいわね。…これから楽しくなりそうね」

麗華も不敵な笑みを浮かべていた。







ーーーさぁぁ。


心地よい風が庭の花々を揺らす。

気持ちのいい午後だ。

またも庭の手入れを蓮に命令された蒼真。

九条家の令嬢と執事が一ノ瀬家に現れた日からなんだかイライラしている。


「ほーんとああいう奴ら、苦手だわ」

蓮の出自を馬鹿にしに来たんだろう。

それが俺をイラつかせているんだ。

まぁ…どうでもいいか、眠いし、こんなに天気もいいし。

寝てしまおう。

庭のベンチに腰掛け、俺は目を閉じた。


ーーー「蒼真、君にはね守る力があるんだよ」


あの日の記憶の夢だ。


「使い方をちゃんと覚えるんだよ」


天音の声。


でも…。

悲しい天音の声も聞こえる。


「…私は守れなかった。君は守るんだよ」

泣いている天音の声。


「じゃあ、俺が守る」

俺の声だ。

誰を守る?

「うんっ」

小さな少女が微笑んだ。

握った手から暖かなヒカリが流れ込んで来る。



ーーーふっと目が覚めた。

俺の中で記憶達が繋がった。


「…あの時の…思い出した…」

はっと屋敷の方へ目を向ける。

テラスでお茶を飲みながら蓮と楽しそうに話している陽葵。

幸せそうな笑顔だ。


「守ってんじゃん、ちゃんと」





新月の夜。

星の光は木々を照らすには儚い。

不気味なほど静かな夜だった。


「いるな」

蓮が鋭い目つきに変わる。

その声と同時にすっと蒼真が立ち上がり、庭へと出ていく。


蒼真が庭の奥へと視線をやる。

暗闇の奥に敵がいる。

数は1人。


「1人でとはよほど自信があるようで」

俺は不敵に笑う。


ビュッ。


瞬間、敵の刃が顔を横切る。

速い。

即座に次の一撃がくる。

相手は二刀流だ。


キィーン。

相手の攻撃を受け、刃が交わる。

おかしい、攻撃が軽い。

殺しに来ている攻撃じゃない。


「お前…神楽坂か」


名前を呼ぶとニヤッと笑い答えた。


「ええ…さすが、結誓連盟の蒼真さんですね」

「何のつもりだ」

「確認ですよ」


神楽坂の刃に込められた力が抜けていく。

その時…

「蒼真!!」

蓮が駆け付けた。

陽葵の方にやはり敵はいないのか。


「あなたたち2人とやり合うのは武が悪い」

そう言い残すと、神楽坂は闇へと消えていった。


---平和な日常は闇に飲まれていく。

   その闇は、まだ誰も知らない。



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