初戦を終えて、日が明けると昇進と新たな任務がやってきた。
ともかくも、初戦を大戦果で飾って、2日間我々F35-BライトニングⅡ改試作初号機で戦った我々二人も、私たちに付き合って、私たち以上にハードワークをこなしてくれた整備部隊の面々も拠点防衛分隊を除く全員が食事をして、泥のように眠った。
日が明けて4月16日に、幕僚本部からの暗号通信を受けて私たちの掩体壕基地に本来の与那国島駐留部隊指揮官山沢一等陸佐が、急遽書き上げられたと思われる、現地昇進任命書と次の作戦要旨を記した命令書を持参して、私たち全員が一昨日以来の大戦果が評価されて、1階級昇進させて頂ける事の辞令や命令書の伝達が終わると、山沢一佐は砕けた口丁で、
『それと、伊久間一尉は、本日12時50分に追加の辞令が降りて三佐に昇進するから心に留めておいてくれ。』
『それは、名誉の戦死以外では、二階級特進は許されないので幕僚部だか、参謀本部だかのご配慮で、今回のみの特例として辻褄を合わせて下さったという理解でよろしいですか?』
『ああ、俺の理解の及ぶ範囲では、その通りだが、この紛争は初手から日豪合同艦隊が大損害を被るなどの国民の厭戦的空気が淀み始めた所で、君たち2人の大戦果だ、為政者として利用しないことはしないでしょう。』
伊久間は冷静に、俺達を英雄と祭り上げる事で、民衆の厭戦気分を少しでも解消するための裏技であろうこと。
そして、それは自衛隊トップの統合幕僚長の意向を忖度したものですら無く、防衛大臣周りの役人、ブレーン辺りから出た案を上意下達で伝えられたのが忖度された結果このような、変則人事を執行せざるおえなかった経緯の説明でもあった。
『そして、次の君たちの次なるミッションだが、作戦は、使用する戦闘機が伊久間三佐の開発したプロトタイプ機体という特殊性を鑑み作戦立案は前回同様、伊久間三佐にフリーハンドが与えられる事になっているし、作戦案も上の承認を得る必要も無い事を陸上自衛隊幕僚長閣下も明言されている。』
基地司令閣下は、そこまで一息に早口に語り、また反論は許さないという意思が籠もった視線を2人の大勝利の立役者を睥睨している。
『それで、そのように陸自所属の閣下が我々ハグレモノを厚遇してくださる理由を伺っても?』
山沢与那国島基地司令は、後頭部を右手に撫でつけながら、かなわないなあという苦笑の表情を浮かべて、曰く。
『思いの他、鋭いな君。私が受けた人物評は、兵器開発については非凡な才能を有しているが、協調性が乏しく、年齢相応の周囲への配慮に欠けているし、そもそも自身の開発物をそのカテゴリの最高にする事に能力も体力も時間も全振りしている。と、いうものだったから、研究者にありがちな天才肌の性格破綻者な人物を予想していたけれども、どっこい君が会話の隠された意図に聞いただけで気づく良識ある大人だと認識を改めたよ。むしろ素行不良の方が演技なんじゃないかね?』
山沢はいたずら小僧がする決めの表情のような悪そうな顔して笑った。
『過分な評価を賜ったようで、感謝致します』
はなはだ不本意だけれども、感謝ほ言葉を返してその場をしのぎます。
『まあ、単純な話だ、今回の敵艦隊半壊を単機で遂行したのは、歴史的快挙だという事は理解しているね。』
『まあ、過去の戦史では航空母艦が空母艦載機に撃沈されるのが定番で、今まで基地航空隊が正規空母を撃沈した事は無いから歴史的な出来事ではあると思いますが。』
あまり、感情を出さずに淡々と応じます。
『それに、試作初号機はテスト飛行より実戦投入が先なんて本末転倒な事態のせいで性能諸元さえあがっていませんから、いくら英才揃いの作戦参謀本部のお歴々でも、作戦立案するには情報が不足していると判断されたのでしょう。』
と、自分の推理を補足しました。
『まさしくその通りなんだが、君も予想している通り、君たちに作戦立案権まで渡すという破格の条件を提案、調整したのは陸自幕僚長与謝野閣下だ。』
山沢司令の言葉に、おもわず溜息交じりの言葉が出てしまった。
『パワーバランスですね?』
『その通り、話しが早くて助かるよ。』
わたしの導いた結論に、基地司令は少しあっけに取られたように合いの手を入れると心からおかしそうに微笑んだ。
ならば、ここは、そこまで便宜を図ってくれた陸自幕僚長に受けた恩を上回る利益を供与して、僕ら二人の後ろ盾になって貰うのが最善手なのは自明な事に思えます。
そこで、与那国島基地司令官である山沢一等陸佐と違い面識は無いモノの便宜を図って下さった与謝野陸自幕僚総監に対してリップサービスをしておくことを即決しました。
まあ、口約束だから正規の命令形系統を我々に持たない基地司令の上官であるが、だからこそ今後我々が挙げる戦果は、お二人が我々与那国島特務航空隊にフリーハンドを与えたからだという自分の立ち位置を明確にしておくだけで十分という思惑があったのは、言うまでもないでしょう。
それには、次なる与那国島特務航空団の任務を確認しなければ、戦術の構築さえできないので、その辺の事を確認しなければなりません。
『それでは、次なる与那国島特務航空団の任務をお聞かせ願います。』
表情を引き締めて、任務受領の厳かさを醸して尋ねることにした。
山沢基地司令も我々の態度を受けて、厳しい表情で任務の概要を説明してくれる。
『与那国島特務航空団に与えられた次なる任務は、敵空母部隊を君たちが殲滅したのを受けて、台湾に機甲師団2個を揚陸した最新型の強襲揚陸艦に空中機動歩兵のための強襲ヘリに代替してVTOL戦闘機を各艦12機づつ艦載して、4隻の強襲揚陸VTOL空母に改装して、残存艦隊の主力として位置付けているのだが、君たちの任務はその新たな空母戦力を殲滅、もしくは当座運用不能になるくらいのダメージを与える事と命令書にある。』
『その任務の遂行は、作戦開始までに必要物資を現在の掩体壕基地に運搬できるかどうかにかかっていますね。』
私は、その程度の任務なら難なくこなせると皮算用しながら、表情と口調は、見通しの厳しさの余り苦悩している体を装いました。
まあ、ただの腹芸です(-_-;)
『もし、与那国島特務航空団がその任務を達成した場合、第一の功績は、我々になるでしょうが、功績の第二は、勝つための補給物資を供与して下さった与謝野陸自幕僚総長閣下になるでしょう、更に第三の功労者は与那国島を死守して、敵軍が上陸して与那国島特務航空団を陸上部隊で制圧されるのを防いだ。山沢一佐殿ということになるでしょう。そうなるように、戦闘報告書には、お二人の功績をはっきりと記載しますので、その辺はご心配無く。』
私は、今後の展望を自信を漲らせて笑顔で語りました。
『ふむ、それはかなり我々にとっても非常に魅力的な案件だが、必用物資はどのような物で、納期はいつまでに必要かね?』
山沢司令は先の私の提案を聞き入れて、かなり前のめりになってくれたようで、会議室の円卓から身を乗り出すようにして、私たちに続きを促した。
『まず、私が開発したトマホーク改を最低30発、可能なら50発、今回試作したトマホーク改は、全弾前回の艦隊攻撃作戦で消費してしまいましたので、まず米軍から通常弾頭のトマホークミサイルの程度の良いものを30発以上調達するのが第一段階、続いて四つ菱化学工業が米軍がステルス機に使用している電波吸収塗料をライセンス生産しているので、調達できたトマホークミサイルの数量に応じた電波吸収材塗料を必用量購入、更に下町の優秀な溶接作業者に機能性電波吸収塗料をトマホークの誘導部の窓を除いた全体に焼成塗装してもらい、それらを秘密裡に与那国島まで運んで頂く事が肝要です。」
『納期については、可能な限り早くとしか言いようがありませんが、日にちが経つほど与那国島基地に対する疑惑が強まり、前回の攻撃拠点を特定できなくとも、九州を含む近場の自衛隊駐屯地が根こそぎ飽和攻撃を受けかねないので、敵さんがしびれを切らす前に運搬完了が、絶対条件です。』
私は、今回の任務達成に必用な所々のものと、今後必要になるであろうモノをやや割り増しで用意して欲しい物資などの輸送を御願いしておきました。
『(とりあえず、保険は掛けた。最悪全補給物資が揃えば前回同様、敵残存艦隊の5割は沈められるだろうと、頭の中で計算し思わず、頬が緩んでしまいます)。』
実は、ここで公表していないミサイル在庫はやはり私が改良を加えた80式空対艦ミサイル改の在庫を60発ほど、新型機テストの為と称して与那国島に持ってきており、既に掩体壕に運び混んでいたのです。
なぜ、前回の艦隊攻撃に使用しなかったかと言えば、80式空対艦ミサイル改は、長距離攻撃能力があるものの、巡航ミサイルのトマホークと比べ物にならないくらい射程が短いので、その分目標艦に近づく必要があるので敵に発見され、迎撃される可能性は飛躍的に跳ね上がるので、既にトマホーク改の全弾使用で誰からも文句の付けようの無い戦果を挙げている以上、無用なリスクを背負ってまで戦果拡大に拘らなかったという理由もあるのです。
今回は、頼みの綱のトマホーク改の調達に時間がかかる事が予想されるので、80式空対艦ミサイル改を試験的に実戦投入して、性能試験と上手く行けば任務達成を同時にクリアするつもりです。
その場合、依頼したトマホーク改はしれっと受け取り次回以降の押し付けられる任務の達成に利用させてもらうつもりです。(-_-;)
強かじゃないと戦争に生き残れそうもないので、このくらいの打算は許して欲しいと思うのです。
そもそも、私は兵器開発者であって、最前線でドンパチやるのは想定外任務なのだから、もう勘弁して下さいが本音ですから。
次回も読んでくださいね~♪
ではでは、読者のみなさんの幸福を願って、言霊の祝詞でっす。
『あなたが、明日すばらしい一日を過ごせますように~♪』




