神界サイド 順調という名の安心
神界・第三管理局。
今日の会議は、短い予定だった。
「次、教育段階ログの確認です」
下級神が、淡々と水晶板を操作する。
「対象――レオン」
「人界評価、経過観察」
神々の反応は、薄い。
「あー、あの静かなやつか」
「まだいたね」
(※存在感がない)
ログが表示される。
対象名:レオン
段階:初等教育
人界評価:
・成績:上位
・突出:なし
・問題行動:なし
「……優等生寄り?」
「いや、“普通よりちょっと上”だな」
管理神が、頷く。
「想定通りだ」
「過剰成長の兆候は見られない」
別の神が、ログをめくる。
対比対象:
アーヴィン・ルクレール
評価:高
推薦ルート進行中
「ああ、こっちはいいね」
「分かりやすい」
「こういうのがいると安心する」
(比較対象が優秀だと、なお安心)
下級神が、遠慮がちに補足する。
「一応、レオンには――」
「独特な思考傾向が見られますが」
「“独特”?」
管理神が、鼻で笑う。
「誤差だろう」
「その程度で逸脱扱いしていたら、管理が回らん」
「人界でも、保留評価だ」
「問題になっていない」
別の神が、画面を拡大する。
神界評価:
重要度:低
脅威度:低
「ほら」
「完璧じゃないか」
「むしろ理想的だ」
「伸びすぎない」
誰かが言った。
「……伸びすぎない、って」
「評価としてどうなんだ?」
管理神は、即答した。
「最高だろう」
「管理しやすい」
全員が、頷く。
その瞬間、
ログの端に、小さな注意表示が点灯する。
補足:
自己認識更新頻度:上昇
だが。
「ん?」
「気のせいだな」
「教育段階では、よくある」
誰も、深掘りしない。
管理神が、まとめに入る。
「結論」
「対象レオンは、安定」
「今後も、特別対応は不要」
判子が押される。
神界判断:
監視レベル:低
会議は、それで終わった。
神々は、満足して散っていく。
――誰一人、疑問を持たない。
なぜなら。
問題は、何も起きていないからだ。
その頃、人界。
小さな部屋で、
レオンは一冊の本を閉じた。
内容は、簡単な魔物図鑑。
(……外の世界、か)
パネルが、静かに反応する。
内部状態:
選択肢の検討開始
神界は、安心している。
管理は、成功したと信じている。
だが。
選択は、すでに始まっていた。
それが、
神々の見落とした、
ただ一つの変化だった。
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