神界サイド 神々はログを信じすぎている
神界・第三管理局。
いつものように、
いつも通りの会議が始まっていた。
「はい次、王都養育院の定期ログ〜」
下級神が、だるそうに画面を切り替える。
「えーと……例の赤ん坊、レオンですね」
神々の反応は、薄い。
「あー、いたね、そんなの」
「光るやつだっけ?」
「這うのが速いんだよね?」
(※情報が雑)
ログが拡大される。
個体名:レオン
年齢:0
現在環境:王都養育院
行動記録:
・泣かない
・騒がない
・異常値なし
「……地味だね」
一柱の神が、ぽつりと言った。
「逆に怖くない?」
「赤ん坊で“異常なし”って」
「いやいや」
別の神が笑う。
「異常あったらすぐ分かるって」
「今は完全に“安全枠”だよ」
下級神が、念のため補足する。
「一応、魔力のログはこちらです」
魔力状態:
安定(外部影響下で沈静)
「ほら!」
「普通じゃん!」
その瞬間。
ログの端に、小さな注意書きが浮かぶ。
※安定条件:
世界認識文言の一時編集を確認
沈黙。
「……え?」
一柱の神が、画面を凝視する。
「今、何て言った?」
「えっと……」
下級神が読み直す。
「“世界認識文言の一時編集”です」
別の神が、首を傾げる。
「そんな機能……あったっけ?」
「ないよ?」
「少なくとも、赤ん坊用には」
ざわつき。
「え、待って」
「編集って、どこを?」
ログが、さらに展開される。
編集対象:
・魔力状態の表現
・自己定義文言
「……数値じゃなくて、文章?」
「文章!?」
「それ、設定ファイルじゃん!」
会議室が、一気に騒がしくなる。
「いやいやいや」
「ローカルでしょ?」
「ローカル編集なら、問題ないよ!」
最上位席の管理神が、片手を上げる。
「落ち着いて」
「“世界全体”には影響してない」
「今はね」
別の神が、小声で言う。
「……今は」
管理神は、気にせず続ける。
「それに、ほら」
別のログを表示。
行動評価:
従順
無害
静穏
「完璧じゃない?」
「理想の管理対象だよ」
下級神が、遠慮がちに手を挙げる。
「あの……もう一点……」
「まだあるの?」
「はい……」
ログが切り替わる。
備考:
言語能力 実装時期 → 本人選択
――沈黙(2回目)。
「………………」
「誰だよこれ設定したの」
全員が、そっと視線を逸らす。
「いや、初期設定じゃない?」
「昔のテンプレじゃなかったっけ?」
「テンプレに“本人選択”入れるなよ!」
管理神が、咳払いをした。
「まぁまぁ」
「言語なんて、いずれ喋るでしょ」
「そうそう」
「そのうち勝手にね」
下級神が、小さく呟く。
「……“選ばなかったら”?」
「ん?」
「……いえ、何でもありません」
管理神は、ログを閉じる。
「結論」
「今は問題なし」
「評価:低脅威」
「対応:様子見」
判子が、ポンと押される。
神界評価:
重要度:低
会議は、それで終わった。
神々は知らない。
その“無害で静かな赤ん坊”が――
自分がどう評価されているかを、正確に理解していることを。
そして。
ローカル編集履歴:
評価文言 →「低脅威」保持中
この一行が、
後に神界で「伝説の慢心ログ」と呼ばれることになるのを。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




